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第102話 ぶちかまそうぜ!!!!!

やはりすごい。

私たちの順番は26団体中13番目のど真ん中なので、午後の高校の部が始まってから控室に行くまでの時間に数団体の演奏を客席から聴いているんだけど、東海越大会に出場してくるような高校生の演奏はやっぱりどれもすごい。

昨日までに福浦高校や橋本深川高校の演奏は聴いているから衝撃は少ないけど、やはりどの団体も当たり前のように上手だ。

大人っぽい演奏や高校生らしい勢いのある演奏等いろいろあるけれど、どの団体も基礎がしっかりしているので演奏にブレや迷いがない。

しっかりした基礎の土台の上で自分たちなりの演奏を表現しているから、いろんなバリエーションがあるのにどれも演奏自体のまとまり方がすごい。

金管じゃない団体の演奏聴いてもやっぱそう感じる。

細かいことは専門じゃないからわからないけど、木管も打楽器もどこも演奏がしっかり一本芯が通っていることはわかる。

高校に残ってるみんなにも聴かせてあげたかったなぁ。

刺激どころじゃなくて、衝撃受けるだろうなぁ。

せめて聴いたことを持ち帰って伝えよう。

そして音源聴いて、感じてもらおう。

このことはきっと福浦西高校吹奏楽部全体にとって、いい財産になるはずだ。



あっという間に控室に行く時間が近づいてきたので、ロビーで楽器を準備する。

この楽器でこのあとあのステージに立って、他の団体みたいにブレがなくしっかりした演奏ができるのだろうか。

ちょっと不安だけど、アオイちゃんのさっきの言葉を思い出したら落ち着く。

やっぱあの子は大物になるかもしれん、なんて思いながら誘導係に案内されて控室に入る。

誘導係の子の制服かわいい、私たちの「いかにもセーラー服です!」って感じじゃなくてすっごく今風、絶対地元の子だな。

私も1年生の時に県大会で誘導係やったなぁ。

次々順番来るからそれぞれの団体の演奏を全ては聴けなかったけど、やっぱ自分が担当した団体がいい賞もらってると嬉しかったもんだ。

つーかやっぱ大会出てる人への憧れってあったから、キラキラして見えてたなぁ。

この子たちから見て、私たちはキラキラできてるんだろうか?

この子たちのために恥ずかしくない演奏をしないと!なんて勝手に思ってる。

各々音出しして基礎練やって、全体で演奏の頭を軽く合わせる。

みんな緊張はしているけどガッチガチにはなっていないし、演奏もいい感じ。

みんないつも通りできてるみたい。


「残り5分です」


誘導係の子にそう言われ、いよいよ本番が近づいてきたことを実感する。

先生から最後のアドバイスをもらって練習終了。

ついに時間が迫ってきた。


「カナなんか最後締めなよ~」


「なんか最近私その役目多くない?先生がさっき締めてくれたじゃん」


「いいじゃん、カナがこの金管八重奏を引っ張ってくれたようなもんだし」


「えーっと…さっきの演奏の出だし、ほんといつも通りでいい演奏だった!多分みんなそれぞれ緊張はしてるんだろうけど、いつも通りに演奏はできそうだなって感じて安心してます。この後舞台袖に行って、ステージに立ったらきっと今より緊張します。多分する。東海越大会の舞台に立ったことないけど、絶対する。でもさっきの出だしの演奏できれば、きっとあとはいつもの勢いでいけるから!緊張したらさっきのアオイちゃんの言葉思い出して!緊張していつもの音出せなかったらもったいない!それにアオイちゃんの言葉以外にも、私たちのそばには先生とサポートの4人もいるし、きっと今頃福浦西高校でみんな練習しながら私たちのことちょっとくらい考えてくれている!はず!みんなの思いは勝手に背負うって決めたから、緊張したら胸ポケットのお守り思い出そう。みんなで、福浦西高校の名前を東海越大会全体に知らしめよう!ぶちかまそう!」


「はい!!!」


「ていうか今更だけど「ぶちかまそう」っていつの間に私たちの合言葉みたいになってんの?全然可愛くなくない?」


「いいの!ぶちかますよ!」


「はい!!!」


「あ、あのみなさん…」


「どうしたユリ?」


「今さっき部長からメッセージと写真が送られてきて…」


みんなでユリのスマホの画面をのぞき込むと、そこには高校にいるみんなの写真と「ぶちかましてこいよ!!!」ってメッセージ。

みんな笑顔ですごくいい写真だ。

のぞき込んでるみんなも笑顔だ。

ちゃんと応援してくれているんだなぁ、って思ったらなんか安心して元気出てきた。

部長もみんなも、思いは勝手にお守りに詰め込んでおくから好きな分だけ持っていって、ていうスタンスだったんだけど、やっぱこういう写真は嬉しいな。

みんな気使いすぎだって、もっと「私たちの分まで頑張って!」とか重めの言葉言えばいいのにね!

言われなかったからプレッシャー感じずにできたってのもあるけど、みんながいてくれたからここまで来れたんだしね。

全然私達だけの力じゃない。

全然背負っていく気だし、背負えるし!

ありがとう、元気出た。

みんなの分まで頑張ってくるわ!!!


「「ぶちかます」っていったい何なんだよ!」


「いいじゃんいいじゃん。ユリ、「ぶちかましてくるぜ!!!」って返しといて!」


「それじゃあ私が言ってるみたいじゃないですか…」


「確かにwじゃあ「ぶちかましてくるぜ!!!(by福浦西高校金管八重奏)」って返しといて!」


「はい!ついでにさっき撮った練習風景の写真も送っときます」


「よろ!!!…よし、じゃあ行くぞ!」



舞台袖、案内係の子が小声で「頑張ってください」と言ってくれた。

撫でくりまわしたいくらいめっちゃかわいかった。

今舞台で演奏している団体の演奏は中盤。

次は私達だ。

舞台袖なのでもう大きな声は出せない。

アイコンタクトでみんなの感じを見てみるけど、やっぱ緊張はしてるけどガチガチにはなってない。

でもみんな深呼吸したり、胸ポケットのお守りに手を当てたりして、各々自分をコントロールしてるのだ。

こんなとき、今までなら「ウィーアートランぺッターズ!」ってやってたけど、今日はトランぺッターズじゃないしなぁ。

「ウィーアーブラスオクテット!」は1年生に使っちゃダメ!って言われてるしなぁ…じゃあやっぱり…


「みんなちょっと集まって手ぇ出して重ねて(以下小声)」


「お、なになに?」


「まさかあのトランペット恒例のアレか?」


「まぁそんなもん、ちょっと違うけど」


「いいねいいねやろう」


「あぁ藤原はナツキの手の上な!」


「う…」


「ほらほら早く重ねてって!」


「そんじゃいくよ?」


「おう」


「ぶちかまそうぜ!!!!!」


「ぶちかまそうぜ!!!!!」


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