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第100話 牛に引かれてぶちかませ

翌日、というか東海越大会前日。

今日も小坂県代表3校で初芝芸術文化ホールを貸し切って、

9~11時:福浦高校打楽器五重奏

11~13時:福浦高校金管八重奏

13~15時:福浦西高校金管八重奏

15~17時:橋本深川高校サキソフォン四重奏

17~19時:橋本深川高校クラリネット四重奏

の日程で2時間ずつ練習ができる。

これが本番前最後のまとまった練習時間、やりすぎてバテバテになったら元も子もないけど気合い入れてやらなきゃいかんね!とカナさん達の気合も良い感じに入っている。

昨日の私はなんかすごくごちゃごちゃしてたけど、あとでコヨミ達他の1年生と話したらみんなも私とおんなじこと少なからず思ってたみたい。

こんな風に思っているの私だけじゃなかったんだな、とホッとした。

で、みんなで想いを共有してから「じゃあ明日からはまず目の前の東海越大会だけを見て一生懸命サポートしよう」と気持ちを一つにしてから寝た。

明日からまたちゃんと頑張るぞ!




ホテルでちょっと早めの昼食を食べてからみんなで初芝芸術文化ホールに向かう。

12時40分、準備をして舞台袖に入ると福浦高校金管八重奏が練習していた。

県大会の時も思ったけど、やっぱすごく大人っぽくてまとまった演奏だなぁ。

むしろ県大会の時よりもさらに洗練されている気がする。

圧倒されるけど、昨日みたいに気落ちはしない!

客席に目を向けるとナギサちゃんを発見した。

ナギサちゃんもサポートメンバーとして同行するって言ってたっけ。

私と話す時と違って凄く真剣な表情で、ナギサちゃんまで大人っぽく見える。

「福浦高校」ってだけで大人っぽく見えてくる…っていかんいかん、気持ちでは負けない!

ナギサちゃんも今いろんなこと感じてるんだろうな、どこかで話して共有したい気持ちはあるけどそれは本番終わってからかな。

そうこうしているうちに福浦高校金管八重奏の練習が終了し撤収作業、逆に私たちは練習順を開始した。

2時間しかないのでこの時間を短くしないと練習時間が短くなってしまうのでテキパキと!

ナギサちゃんと目が合って手を振ると向こうもにっこり笑って手を振り返してくれた。

よかった。

今日はそれだけだったけど、やっぱ終わったらちょっと話せるといいなぁ。



2時間の練習はあっという間に終わった。

本番前日ということでガッツリ練習、というよりは注意しなきゃいけないことを再確認しながら全体を流していく感じだった。

演奏聴いている感じだとあまり焦りや緊張は感じなかったし、ウチだって本間高校に負けていない!はず!

練習自体は至って真剣、でもみんなどこか楽しそうにしてて全体の雰囲気もいい感じだし、なんかすごく…行けるような気がする!!!???

そんなちょっとした高揚感を感じながらホテルに戻る。

もう今日は楽器を使った練習はできないけど、夜はみんなで楽譜を見ながら今日の練習のおさらい。

あー、なんかすごくいい雰囲気で羨ましい。

私たちも来年こんな感じで同じ舞台に立ちたいな。

できるだろうか、っていう不安ではなくてすごくポジティブな憧れ。

私たちも来年こうしたい、だから今は先輩たちのサポートとして全力出して、先輩たちの姿見届けるぞ。


「じゃあこれで今日はおしまいかな。明日は本番、今日のようないつも通りの雰囲気で演奏できればきっと明日もいい演奏できると思います。今まで頑張ってきたことはみんなわかっていると思うので、力入りすぎないようにいい感じで緊張しながらやりましょう」


「はい!」


井口先生の言葉で今日の予定は全て終了。

明日はいよいよ本番なんだなぁ。


「締めのあいさつ、なんか益田さん言いますか?」


「え!私?えー…今ので締まったじゃないですか?」


「まぁまぁカナ、ここは最後金管八重奏の実質リーダーのカナが最後締めてよ!」


「そうそう!実質リーダー、なんかいい感じに締めてよ!」


「うーん、無茶ブリ…。まぁしゃーない!実質リーダーが締めますか!!!今日までお疲れさまでした!今日の練習も正直すごくいい感じの雰囲気でできていたと思います。演奏自体も悪くなかったと思う。ただ明日の本番。何回も言っていますが東海越大会はうちらにとっては未知の領域なんで何が起こるかわかんない。会場に入っても、他の学校の演奏聴いても、楽屋に入っても、舞台に立っても、きっと圧倒されることがあると思う。ていうかきっとそうなると思う。その時に、私含めて平常心じゃいられなくなるかもしれないけど、その際は今までの練習思い出してください。目の前の、いろいろ書きなぐった楽譜見て思い出してください。そうしたらきっとちょっと安心するから。安心できるくらいの練習はしてきてるはずなんで。明日は、いつも通り頑張りましょう!」


「はい!!!」


「あのぉカナさん、というかみなさん」


「なぁにユリ、ユリも締めたくなった?」


「そうじゃなくてwその、このタイミングが合ってるのかはわかんないですが…実はみなさんに吹奏楽部全員からプレゼントがあるんです。みんなでちょっとずつお金出して買いました。ホントは出発前に渡そうかとも言ってたんですが、部長から「あまり早いとプレッシャーになるかもだから、前日の練習終わった時にでも渡してあげて」って。高校に残ってるみんなも応援してます!」


そう言って私は2年生みんなにそれぞれ紙袋を渡す。


「おお一体なんだ?どれどれ…お、お守り!!!」


実はカナさんたちが学校で練習してる時に、部長に頼まれて善行寺(福浦西高校の近所にある、全国的に有名なお寺、国宝)に行って8人分買ってきてたのだ。

一応お守り持ってお参りもした。


「プレッシャーになるかもですが、このお守りに私達部員みんなの想い勝手に乗っけてます。昨日と今日の練習も聴かせてます。みんなの想いが乗ったこのお守りも舞台に持っていけ!なんて重たいこと言わないです。みんな邪魔やプレッシャーになることはしたくないんですが、ただ、やっぱりみんなで何かはしたくて…」


「…ありがとー!!!そんなの舞台に持ってくに決まってんじゃん!うちらだけでここまできたわけじゃないんだし。勝手に乗っけてくれたんなら、勝手に背負ってくよ!」


「そうそう、わー、なんか嬉しいなぁ!どう持ってく?胸ポケットに入れる?絶対忘れないようにしないと!」


「おぉそうしよう!今のうちに入れとこう!」


「よし!平常心じゃいられなくなったら楽譜だけじゃなくて胸ポケットのこのお守りのこと思い出すこと!そしたらきっと落ち着くよ!ホント、ありがとー!!!」


「ありがとー!!!」


なんか喜んでもらえたみたいでよかった。

私達だけじゃなくて、高校に残っているみんなの想いもちゃんと伝えられてよかった。

そして伝わって、受け入れてくれてよかった。

やっぱこの部活最高だ。

みんな一つだ。


「じゃあ今日は終了!お疲れさまでした!明日は頑張ろう!!!」


「お疲れさまでした!!!」



福浦西高校。

カナさん達トランペットパート3人が初芝県に行っているので、ここ2日間は俺一人で練習している。

というか俺以外の金管1年生居残り組はみんな個人練習ばっか。

仕方ないけどちょっと寂しい。

蚊帳の外とまでは思ってないけど、やっぱ一緒に行きたかった。

あまりに寂しいので友杉さんが中心となって金管1年生居残り組4人で練習したりしている。

やっぱ他の3人がいての福浦西高校のトランペットパートなんだなぁ。

福浦西高校のグループにたまに様子や写真が送られてくるのを見ると、雰囲気はすごく良さそう。

そこに一緒にいたかったという想いと、来年俺たちは同じようにできるのかという不安。

いろんな思いがごっちゃごちゃだけど、今できることは遠くから信じて応援することと自分の練習をすること。


>明日いつも通りのかっこいい演奏ぶちかましてきてください!


トランペットパートのグループにメッセージを送った。

正直こんな直前に送っていいもんか、なんて送っていいのか30分ほど悩みつつ「なんとかなれー」精神で送信。

数分後、

送られてきたのは善行寺のお守りが2つ映った写真。

カナさんとナツキさんの分だろうか。

そしてメッセージ。


>ぶちかましてくるぜ!!!


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