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<第四話> 家 出

「実は、最初にお二人の姿を見た時から、けんちゃんがやけに不釣り合いな程大きなリュックを背負って歩いていたのが、とても気になっていたんです。






 先程の話から別荘の外観を知っていたので、けんちゃんは既に一度は別荘に着いていますよね。




 それなのに、まだ全部の荷物の入るような大きなリュックを背負っているのは、少し変だと思いませんか?






 それに、今私達が歩いているこの林道は、しばらく一本道が続いている場所です。




 でも私たちがこれだけ貸別荘の方向に歩いているのに、まだお父さんが探しに来ない事も、心配していたんです。






 ですからこれらの状況に、薫さんの出会った時のけんちゃんの様子も加味して考えてみると、現在お父さんは、けんちゃんを心配して慌てて探しているのではなく、別荘でけんちゃんの事を、どちらかというと怒るような否定的な様子で待っている可能性が高いと私は思うのです。






 どんな事情があったのかは知りませんが、小さな子供が泣いて別荘から飛び出してきてしまう程悩んでしまうのは、やはり心配な事です。






 これから別荘を見つけたら、私がお父さんとお話をする必要があるかもしれませんね。」




 姫子が薫にそう答えながら、けんちゃんの方も見て、安心させるように優しく微笑んだ。






 「そうだったのですね。けんちゃんの様子から、そんなに色々な事を予想できるなんて、凄いですね。」




 薫が驚きながら、姫子を見つめて答えていた。










 「けんちゃん、こっちに歩いて行って、このまま別荘に戻っても、大丈夫かな?




 もしかしてけんちゃんは、パパとケンカでもしちゃったのかな?」




 先程から、悲しげな顔をして歩いているけんちゃんの様子を心配して、姫子が優しくたずねた。




 けんちゃんは、歩きながらコクリと頷いた。





 「それは、パパの方が絶対に悪いよね。」



 姫子が、わざとパパを悪く言ってみた。




 「ううん、パパは悪くないの。悪いのは、けんちゃん。」



 けんちゃんは、首を左右に軽く振りながらすぐにそう答えた。






 「そっか。そんな風に思えるけんちゃんは、とても優しくて偉いね。




 それじゃあ、今から皆で別荘に帰れたら、まず最初にパパに『ごめんなさい』の挨拶を一緒にしないとだね。




 皆でちゃんと謝ったら、パパの機嫌だってよくなるかもしれないね。」




 姫子がけんちゃんに笑顔で答えた。




 「うん。」



 けんちゃんが姫子の話を聞いて、嬉しそうに返事をした。








 「ところで、どうしてけんちゃんは、パパとケンカをしちゃったの?」




 「パパがね、急に新しいママになる人に今度会って欲しいなんて言うから…。





 ぼく、『ママは、ママだけなの。けんちゃん、新しいママなんて要らない』って答えたの。




 


 そうしたら、パパが怖い顔になって、何にも言わなくなっちゃたの。」




 小さな震える声でけんちゃんは答えると、また下を向いてしまった。




 一緒に歩いていても、健ちゃんはやはりその事が気になってしまい、足取りが重くなってしまうようだった。






 「そうだったんだ。




  悲しい思いをしたお話をしてくれて、どうもありがとう。




  だからけんちゃんは、その後にパパの所からとび出してきちゃったんだね。





  そうだね、、、やっぱり、パパとちゃんと仲直りをしないといけないよね。



 私達も仲直りのお手伝いをしたいから、けんちゃんと一緒にパパとけんちゃんの事をお話してもいいかな。」




 姫子がけんちゃんに言った。






 「うん。どうもありがとう。」




 けんちゃんが姫子に嬉しそうに答えた。



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