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<第四十五話>そして、十年後・・・

 あの悲しい事件から10年という時間が経っていた。


 姫子と薫は、あの事件の後も定期的に会い、食事をしながら近況を話す友人となっていた。






 薫は、姫子に言われた通りに人と話す事に対して、心に留めておくことなく出来るだけちゃんと言葉で相手に気持ちを伝えるように努力していた。




 そして最近では、姫子から聞かれるよりも先に、自分の事を話せるようになっていた










 今日会う事は、薫からのたっての願いで姫子を呼び出していた。






(あらっ、今日はいつもよりも更に早目に来たというのに・・・。




 残念だわ。今日こそは、私が先に着いて待っていようと思っていたのにな。


 でも姫子さんは、待ち合わせ場所にちゃんといらっしゃるのね。)




 いつも待ち合わせ時刻より少し早めに来る薫であるが、そのさらに上をいく姫子は、やはり今日も先に着いて、ゆったりと待ち合わせ場所で笑顔で立っていた。








「姫子さん、お久しぶりです。」


 明るく手を振りながら、薫が小走りで姫子の元に近づいてきた。




「お久しぶりです。薫さん、お元気そうで何よりですね。」


 小走りで元気そうに自分の方に向かってくる薫を見ながら、姫子も優しく答えた。








 二人は、目的地に向かってゆっくりと歩き出しながら、いつものように薫が笑顔で話し始めた。




「今日は姫子さんが一緒に参加して下さって、本当に嬉しいです。


どうもありがとうございます。




 やはり兄さん達は、二人とも主催者側の人間ですし、忙しいに決まっているから、会場で話かけることも難しいと思うんです。




 だから私、今日もしも一人で行く事になっていたら、どうやって会場で過ごしていたらいいのかをずっと不安に思っていたと思うんです。




 姫子さんが一緒に居て下さる事が、本当に心強いですわ。」






「そんな風に言って貰えると、私も嬉しいです。



 でも、私はもうすっかりおばあちゃんですから、ホテルのグランドオープンセレモニーなんて華やかな場所にお伺いするのは、場違いなのではないかと思って、最初は遠慮しようと思っていたのですよ。」


 姫子が答えた。




「何をおっしゃいます。姫子さんはまだまだお元気だから、大丈夫ですよ。




 それに姫子さんの柔らかい物腰は、今回オープンするホテルにとてもお似合いな雰囲気なので、場違いという表現も当てはまらないと思いますわ。」


 薫は笑いながら答えていた。







 




 姫子と薫が向かっているのは、日本最大級のアートホテルのグランドオープンのセレモニーである。






 アートホテル


 単に宿泊を目的とするのではなく、まるで美術館のような空間を持ったホテルの事である。




 このグランドオープンを迎えるホテルの上層階のフロアには、個性豊かな芸術家達のアートルーム仕様の客室が作られている。




 各々の客室内には、その芸術家の作品が実際に展示されており、部屋の雰囲気も芸術家が演出を担当している。だから宿泊者は、まるでその作家のアトリエに泊まっているかのような雰囲気が味わえるのである。






 そしてホテルの隣には、美術館や屋外庭園が造られている。




 美術館では、このホテルの客室を担当した芸術家達の作品の他にも、若手を中心とした様々な芸術家の作品展を定期的に開催し、何度でも訪れる事を楽しむことが出来るようになっている。




 屋外庭園では、彫刻が展示されていて、自然の中を散策をしながら、芸術に親しむ空間が演出されているのだった。







 そして、もちろんこのホテルをオープンさせるのは、悠馬と颯斗の二人である。



 父が亡くなった後を継いだ二人の努力の成果が、今日ついにグランドオープンを迎えたのである。





 二人の道のりは、ここまで辿り着いたのである。





 今でこそ、オープン前から人々の話題となっているアートホテルであるが、このような状態に辿り着くまでには、剣持家の人々は、ずっと様々な苦労と努力を続けていた時期があった。

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