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<第四十話>昨夜の出来事 1

「えっ!」


 颯斗の突然の大きな声に、大野は驚きの声を出した。



「もういいと言ったんだよ。



 他の家族の部屋をわざわざ探す必要なんかない。

 俺の部屋に刑事さん達が探している衣服は置いてあるよ。







  ・・・さっき兄さんから聞いた話。






  ・・・それを聞くのが遅すぎたんだ・・・。






 父さんや母さん、そして兄さんまでもが、俺の事についてあんなに真剣に考えてくれていた事を、もしも昨日の俺がちゃんとわかっていたのなら、絶対にあんな事なんてしなかったのに・・・。










  ずっと俺だけが悩み、苦しんでいるのだと思っていた。


  俺だけが、誰にも認められなくて不幸なんだと・・・。








  ・・・そう結局自分の事ばかりを考えていたんだよ、今までの俺は・・・。



  こんなに一生懸命に努力や苦労をしても、決して浮かばれない哀れな人間なのだと自分の事を思い込んでいたんだよ。








  ・・・・・・すまない。


  本当に今は、申し訳なく思っているんだ。」


  颯斗が目に涙を溜めながら静かに話し始めた。










 「颯斗・・・・」


 美和が切ない声を颯斗にかけていた。






 「母さん、本当にすまなかった。」


 颯斗は母の方を見る事が出来ずに、そのまま頭を下げたまま言った。








 「颯斗さん、正直に話して下さって、ありがとうございます。



  それでは昨夜の話を改めてお伺いしても宜しいでしょうか。」


  姫子が颯斗に穏やかな声で話し掛けた。その声は、聴いた者が救われるような慈愛に溢れた響きを持っていた。





  颯斗は姫子のその優しい声に反応し、顔を上げゆっくりと姫子の方を向いた。


 「分かりました。





  少し長くなっても構いませんか?」




  姫子は穏やかな顔で一つ頷いた。




  





 颯斗は姫子の仕草を確認すると、静かに話を始めた。


「昨夜の夕食後は、慣れない事が多くて、とても疲れていたので部屋でのんびりと過ごしていました。


 そして眠くなってきた頃に、あの父さんの怒った声が聞こえてきました。



 『兄さんと何を揉めているんだろう』って気にはなりました。



 でもその時は、役員として兄さんにだけ話があると自分の事を部屋に呼ばなかった父さんの事も、その話し合いの中で揉めている二人の事も、心配してわざわざ様子を見に行くことも無いと思う卑屈な気持ちの方が強かったんです。




 結局自分は、部屋に様子を見に行く事も無く、そのまま寝てしまいました。






 少しして、何かの拍子にフッと目が覚めたんです。


 そして頭がすっきりしたからなのか、転寝(うたたね)前に怒っていた父さんの事が、何だか急に心配になってきたんです。




 だから、今度はちゃんと部屋まで様子を見に行く事にしたんです。





 扉をノックしても、父さんからの返事はありませんでした。


 だから、部屋に入る事を少し迷いましたが、念のためにそのまま静かに部屋の中に入ってみました。


 夜も遅い時間になってきていたし、もしも父さんがもうベッドで寝ていたら、そのまま静かに部屋を出ればいい話だと考えたからです。








 だけど部屋に入った時、父さんは、ベッドに寝てなんかいませんでした。




 父さんは、机の横にうつ伏せの状態で、倒れていたんです。




 俺は、慌てて近くに駆け寄って、父さんを抱き起こしました。






 でも、その時には、既に()()()()()()()()()()()()()んです。」



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