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<第三話>歩いている方向

三人でけんちゃんと女性が歩いてきた方向にそのまま歩き始めて少しすると、姫子は女性の方を見ながら話し始めた。


 「自己紹介が遅くなりました。


  私の名前は、純情じゅんじょう 姫子ひめこと申します。

  

  そしてもしよろしければ、私の事は、どうぞ下の名の姫子と呼んで頂けませんでしょうか?

  


  出会って突然我儘を申してすみません。


  何しろ私は、もう長いこと名前で呼ばれる生活をしているので、それにすっかり慣れてしまっているものですから。」




 「姫子さんですか。

  分りました、そうお呼びしますね。


  私は 剣持けんもち かおると言います。


  どうぞよろしくお願いします。」


 薫が笑顔で答えた。




 「はい。

  こちらこそどうぞよろしくお願いします、薫さん。」


 姫子も負けない笑顔で答えた。






 「ところで、今私達が歩いているのは、お会いした時に二人が歩いてきた向きのままなのですよね。


  ちなみにこの歩く方向は、けんちゃんが教えてくれた帰り道の方向なのでしょうか?」


 姫子が歩きながら薫に方向の確認をした。




 「いいえ。歩く方向はけんちゃんから教えてもらっていないんです。」


  薫は、少し考えてから話し始めた


  

 「すみません。この向きは、私が決めた方向なんです。


  私とけんちゃんが出会った時には、けんちゃんは姫子さんと同じ方向、つまり今とは逆向きにトボトボ歩いていたんです。


  だから最初は、そのまま二人で一緒に今とは逆方向に歩いていたのです。


 

  でも、名前を聞いたりしながら歩いていたら、けんちゃんが『もうお家に帰れない。』って急に泣きながら言い始めたんです。


  そのけんちゃんの様子を見て、思ったんです。



 そう言われて考えてみたら、このまま歩いて行くと、散策をする方向。

つまり人里からは離れていく方向だなと。


 だから貸別荘が多く建っている場所は、自分達が歩いているのとは反対方向だったなぁと思い直して、そこから方向転換をして今の方向に一緒に歩き出したという状況だったんです。




 だからすみません、姫子さん。


 やっぱり今のこの方向が間違っていて、お家とは逆方向だったとしたら、ごめんなさい。」


 薫が申し訳なさそうに、うつむきながら言った。




 「そうだったんですか。出会った時、けんちゃんはそんな様子だったのですね。教えて下さって、どうもありがとうございます。



 薫さん、大丈夫ですよ。


 今歩いている方向で、私も合っていると思いますよ。




 ただそのお話を基に考えてみると、そもそもけんちゃんは、迷子ではなくてお家に帰りたくなくて、この道を一人で歩いていたのかもしれませんね。」


 姫子は、少し心配そうに薫に言った。



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