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<第十八話>捜査協力の依頼

 「『俺の仕事について』だって?


  一体二人で何をコソコソと話していたんだ。」



  颯斗が驚くように言った。




 その声は悠馬に確かに聞えていたはずなのに、悠馬は颯斗の方を向く事も、質問に答える事もことなく、俯き加減のまま話の続きを話し始めた。






 「父は、私と同じように颯斗も父の下で働くようにと、そろそろ秘書課への部署変えを考えていたんです。




 しかし私は、颯斗が秘書課に異動するのは、まだ時期尚早だと思ったんです。



 自分が今のように父の下で働くようになるまでには、入社してからもう何年か経験を積んでいたんです。



 だから颯斗も同様に、もう少し色々な業務を経験させてからの方が、父の仕事を覚えやすいのではないかと話していたんです。」






 「それが、昨日の巌さんと揉めていた内容ですか。」


 大野が確認した。




 「そうです。」


 悠馬が小さな声で答えた。








 リビングに一人の鑑識官が入ってきた。大野の所まで来ると、何やら小声で報告をして、透明な袋を大野に手渡していた。







 「ところで、このペーパーナイフに見覚えがある方は、誰かいませんか?」




 大野が全員に見えるように高くかざした透明な袋には、1本のペーパーナイフが入っていた。


 そのペーパーナイフの刃先は、赤く染まっていた。






 家族全員は、そのペーパーナイフを見つめた。


 


 しかし、誰も大野の問いにすぐに答えようとはしなかった。


 ただ、家族は各々に一人の男性の様子を隠し見るようにしていた。





 その状況は、一人の男性が顔を上げた時に動き出した。





 「それは、・・・私のペーパーナイフです。」


  悠馬が小さな声で答えた。






 「もうお気づきになっている方もいらっしゃるとは思いますが、申し上げます。


  巌さんの胸に刺さっていたのは、このペーパーナイフです。」


 大野が静かに断言した。






 「・・・はい、知っています。



  今朝父の変わり果てた姿を部屋で見た時に、その胸に刺さっていたナイフを見た時から、気が付いていました。





 ・・・でも刑事さん、聞いて下さい。


 そのナイフは、昨夜父の部屋に、置き忘れてきてしまった物なんです。」



 悠馬が慌てるように早口で答えた。








 「悠馬さん。



  あなたにはこれからもう少し、別室で昨夜の出来事を詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか?」



 大野は、悠馬に近づいてくると、ポンと肩に手を置いて、静かに言った。






 「刑事さん、あなたは何か誤解をなさっていませんか?

  僕は、何もしていません。



  別室で話を聞くと仰いますが、もう僕の知っている事は、ほどんど全部お話していますよ。」



  悠馬は言った。




 「そうですか。




  それは、あなたの今のご意見として、一応聞いておきましょう。





  いいですか、悠馬さん。これは、あくまで捜査協力の依頼です。


  最終的に事件を解決するために、今から別室で、あなたに更に話を聞きたいと言っているだけなんです。




  誤解しているかどうかの判断をするのは、私です。あなたじゃない。


  だからその為の話を聞きたいと言っているんですよ。」



 大野は悠馬を突き放すように言った。





 大野は、がっくりと項垂(うなだ)れた悠馬を連れて、リビングを出て行った。

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