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<第十六話>美和への質問

 警察が到着した時、巌の部屋の中では、彼の変わり果てた姿を目の当たりにした家族全員が、未だに誰一人として動くことも、話すことも出来なくその場に佇んでいた。




 しかし、無情にも警察官は、捜査のために巌の部屋に続々と集まり始めていた。




 やがて大野の指示で、家族全員は、リビングへと半ば強制的に移動させられたのであった。






 「長野県警の大野です。」


 現場を指揮する立場の刑事であった大野が、リビングで改めて全員に向かって自己紹介をした。




 「亡くなっていたのは、ご主人の剣持 巌さんで間違いありませんね。」


 大野が美和の方を向いてたずねていた。




 「はい。」


 美和が消え入りそうな声で認めた。




 「巌さんを最初に発見したのは、どなたですか?」


 大野が続けて聞いていた。




 「・・・私です。」


 美和が静かに答えた。




 「奥様ですね。

 名前をお伺い出来ますか。」




 「はい・・・。

  美和です。」




 「ありがとうございます。


  それでは美和さん、発見した時の様子を教えて下さい。

  美和さんが覚えている、発見当時の状況を出来るだけ詳しく聞きたいのです。」




 「発見した時の様子ですか?




 ・・・主人は、部屋で倒れていました。」


 美和が小さな声で、一言だけ答えた。






 「では、質問を変えます。


  なぜあなたはご主人の部屋に行ったのですか?」






 「朝食の準備が出来たので、家族を起こして回っていたのです。


  まず主人から呼びに行きました。

  そして、倒れていた彼を・・・、


  見つけたのです。」




 「ご遺体には、手を触れましたか?」




 「いいえ・・・。

  恐ろしくって、とても触ることは出来ませんでした。




  巌は・・・


  彼の胸には、ナイフが刺ささっていたんですよ。



  そんな姿を見た私には、今何が起こっているのかが分かりませんでした。





  そうです。確かすぐに反射的に子供たちを呼んで、助けを求めていたはずです。

  そして待っている間に何度も巌の名を呼んでみましたが、返事はありませんでした。


  ・・・儚い期待だと思われるかもしれませんが、もしかして巌が私の声に反応してくれないかと思ったのです・・・



  ですが、やはりぴくりとも巌は動きませんでした・・・・。






  だから・・・、




  ああ、もう彼は死んでしまっているんだってその時になってようやく頭の中で思い始めたんです。






 でも、こんな出来事が起きてしまうなんて、もう恐ろしくて…、頭の中はほとんど真っ白な状況で何も考えられませんでした。

 

 というより、その時の事を出来るだけ詳しくなんて言われても、覚えていません。




 巌に触るという事だって、今刑事さんに聞かれるまで、思い付きもしませんでした。






 彼の変わり果てた姿が怖くて。


 ・・・いいえ、あまりに悲しすぎて。






 そもそも自分は、何をどうすればいいのかも最初は分かりませんでした。


 その時は、ただただ助けて欲しくて、子供達みんなの事を呼んでいました。




 そして、集まって来てもらってから・・・、






 それから・・・、



 そうです。


 警察を呼んでもらうように言ったんです。




 





 ・・・それが、あの時の私に出来た全てでした。」


 その時の事をポツリ、ポツリと思い出すように、美和がゆっくりと小さなか細い声で答えていた。


 

 








 「そうですね。ご主人が殺されたのです。


 そんな時に色々お伺いをしてしまい、申し訳ありません。







 ですが、事件の解決の為に、まだ幾つか質問をさせて下さい。




 美和さんが巌さんと最後に会ったのは、いつですか?」


 大野が美和の落ち込んだ様子を少し気に掛けながらも、彼女への質問を続けていた。




 「家族で夕食を食べていた時です。」


 美和が答えた。


 


 「そうですか。



 ちなみに巌さんは、夕食後はずっとご自身の部屋で過ごされていたのでしょうか?」


 大野が聞いた。


 


 「多分、そうだと思います。


 食後は、悠馬さんと部屋で仕事の話をすると言っておりましたから。」






 「ほお、夕食後は、悠馬さんと仕事の話を・・・ですか。




 分かりました。


 美和さん、ご協力いただきまして、どうもありがとうございました。」


 大野は、興味深そうに美和が最後に答えた話を聞いていた。



 そして彼女への質問がここで終わった。



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