よだかなお姉様と私と王子
よだかな私と王子と姫の別視点です。
この世界で綺麗な物は何かを聞かれたら、私は迷うことなくカノンお姉様と答えるわ。
カノンお姉様は時々よく分からないことを話す。
「私はよだかだから、仕方がないの」
『よだか』
ヨダカって、何ですか??
詳しく聞くと、醜い鳥のことらしい。
この世で一番綺麗なお姉様が鳥ってどういうことでしょうか?なぜ、その醜い鳥限定なのかしら。美しい鳥じゃダメですか?
私はアノン。8番目の王女。誰も私を気にかけない、気にもとめない。空気の姫。
カノンお姉様以外には忘れられた王女。だから、お姉様を傷つける人は許さない。お姉様を傷つけたハイン王子も許さない。お姉様を傷つけた時点で兄と思ってないから、ハイン兄様のことはハイン王子と呼んでるの。
私に兄扱いされずにハイン王子と呼ばれて傷つく顔はご馳走です。誰のせいでカノンお姉様が長年苦しんでいるのかしらね。一生兄とは呼んであげません。
私は一応姫。教育のために教師が呼ばれましたが、私が無反応を良いことに、化粧直しに行ったきり戻らないことも多かったのです。
教本を読破したから別に問題ありません。ただ、向き合ってくれないことが少し悲しく思いました。そんな私に気づいてくれたのはカノンお姉様。
カノンお姉様は忘れられた私のために最高の家庭教師をつけて下さりました。魔法を覚えられるようにと、それはみっちりスケジュールを入れてくれました。私の部屋には、家庭教師とお姉様が来てくれますが、お姉様より私の方が美しいと言ったので、少し責めたらその日の内に辞職されました。
いえいえ、家庭教師の無能を私の魔法で指摘しただけです。
それに、これで良かったと思います。私が1日中勉強していたら、カノンお姉様を傷つける人へのおしおきが滞りますから。
お姉様の顔を見て反らした人には魔法をかけましょう。
ーーあなたと目を合わせる人がいなくなるように
お姉様のお顔の傷を笑った人には魔法をかけましょう。
ーーあなたの顔を見て、皆が笑うように
お姉様の悪口を言う人には魔法をかけましょう。
ーー皆があなたの悪口を言っていると思い込むように
お姉様はよだかじゃない。人だ。
私は美しくない。魔女だ。
それでもいいの。守りたい者を守れない弱い人にはなりたくないのだから。
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ある日、お姉様を監視している影から情報が入った。
悲しいお顔ばかりしていたのに、急に晴れ晴れしていると。どうやら漸く見切りをつけたらしい。
ある朝、ハイン王子が待ち伏せをしてきた。
「アノン。君の宝物が遠くに行くようだ。私は勿論ついていくよ。でも、君は来なくてよい」
「ハイン王子、私の宝物が遠くに行くならば、私が行かないのはあり得ません」
「魔女狩りをしようか」
「いえいえ、狩りは私の領分です。私の魔法は、役に立ちますよ。これまでこの王宮で沢山、狩りの経験は積みました」
「・・・では、同行を許そう」
「ハイン王子が着いてこなくて良いですわ」
「私は風魔法で余計なものを枝で抉るのが得意でね。宝物に飛んで来る虫を風で払い、枝で抉る予定だよ」
「では、同行を許します」
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「こんな朝早くにどこに行くんだい?」
「お姉さまったら、楽しいハイキングを1人で行くつもりなのかしら?」
カノンお姉様の前は私達が歩きます。
優しいあなたに向かうものを、全て払って差し上げます。
次は王子視点です。その後連載で旅をします