第1章 ヨモツワニ
黄泉大坂から現れたのは、オオヒルメの塔が建設されて以来、出てきていなかった巨大なヨモツワニだった。
ナムチたちはヨモツワニを浄化殲滅して、イズモの民を守ることができるのか?
今後も不定期での更新になりますが、良かったら読んでください。
黄泉大坂から現れたヨモツワニは、オオヒルメの塔から降り注ぐ神光を浴びても浄化されることなく、悠然と周囲のヨモツを喰い散らしながら、ヤマト中央へ一直線に向かってきた。
「ぼーっと見てても始まらないでしょ? いくよ、ヤサカ!」
「はい、ミナカタ様」
「シン刀売抜刀!」
ミナカタが神光を纏った刀売を構えてワニに突っ込んでいった。
ミナカタはヨモツとの戦闘で失われた刀美に代わって、刀売を玉鋼で強化し「シン刀売」として主武器にしていた。
脇差である刀売の刀身に新たな玉鋼を加えて厚みと重み、長さを増し、さらに深く大きく踏み込むことで刀美以上の威力を出していた。
ヨモツワニはその巨躯と短い手足からは想像できないほどの素早い動きで、周りにいたヨモツシコオやシコメを吹き飛ばしながら飛び下がると、抜刀して斬りつけてきたミナカタの一撃を躱そうとした。
しかしヨモツワニが後ろに下がって避けることは、ミナカタの想定の範囲内だった。
「はあぁっ!」
ミナカタは飛び込んだ勢いのまま、さらにもう一歩前に踏み込むと真っ向からヨモツワニを斬りつけた。
「みなかたのかみのちからさずかれば いのらむことのかなわぬはなし」
斬りつけると同時に輝きを増したシン刀売で、後ろに飛び下がったワニの頭部をめがけてミナカタが斬りつけた。
GaAaaaaaaaaaahhhhhhShaaaaaaaaahhhhh
ミナカタの斬撃でワニの頭部が真っ二つに切り裂かれたかに見えた。
しかしミナカタの腕にワニを斬った手応えはなく、逆に何かにシン刀売の斬撃を跳ね返されたように感じていた。
シン刀売を手元に引き戻したミナカタが、油断なく刀を構えながらヨモツワニを睨みつけた。
「ミナカタ様、ワニの頭部に何かがいます」
「WhataFuxxizDat?」
ヨモツワニの頭部からいつの間にか人型のヨモツシコオが生えており、その腕には棍棒のような武器を携えていた。
ヨモツワニはこの棍棒で神光をが込められたミナカタのシン刀売の一撃を弾き返したのだった。
「たかが頭から生えたヨモツの分際で、生意気に得物を持ってあたしに挑むってか? だけどね……」
「ミナカタ……様?」
「あたしのシン刀売の斬撃を、そんな棒切れでいつまで防げるかな? FuxxinBastard!」
ミナカタは叫ぶと共に気合一閃、ヨモツワニに連続で斬りかかった。
ヨモツワニから生えた上半身だけのヨモツシコオは、ミナカタの鋭い斬撃を棍棒で受け流そうとしたが、あまりに鋭く早い連続の斬撃に、徐々に受けきれず切っ先に身体を斬られ、浄化された部分から黒い煤のようなものが上がっていた。
「神光を込めた斬撃に斬られれば、ちゃんと浄化されるようだな」
「はい。 しかし、あの程度の傷では全体を浄化することはできないようです」
「きっちり浄化するには、しっかりブッた斬ってやらないとダメってことだな」
ミナカタはさらにスピードを上げてヨモツワニを斬りつけていった。
その凄まじい勢いにヨモツシコオは攻撃を受けきれず、持っていた棍棒を取り落としそうになっていた。
「オラァァ! Fuxxoof!」
ミナカタが止めとばかりにシン刀売を横なぎに振り下ろし、ふらついたヨモツシコオの首を叩き落そうとした。
しかしヨモツワニが頭を大きく振り、シン刀売の軌道からヨモツシコオを逃がすと同時に、鋭い牙の生えた口でミナカタの神衣に襲い掛かった。
「ミナカタ様、後退します」
ヤサカが推進装置を起動させて神衣を後退させて、ヨモツワニの攻撃を躱した。
「ヤサカ、ナイスだ!」
「はい、ミナカタ様! ヨモツワニ、再び攻撃きます!」
ヨモツワニはさらに大きく口を開けると、後退した神衣を追いかけて喰いつこうとしてきた。
神衣を素早く横に滑らせ、紙一重でヨモツワニの牙を躱したミナカタは、ヨモツワニに目掛けてシン刀売を振り下ろそうとした。
Gyaaaahhhhhhh!
しかし口を閉じたヨモツワニの頭部から生えたヨモツシコオが、雄叫びを上げて刀売を振り下ろそうとしていたミナカタに棍棒を叩きつけてきた。
「Sxit!」
ミナカタはヨモツワニへの攻撃を一旦諦め、ヨモツシコオが振り下ろしてきた棍棒をシン刀売で弾き返した。
「ミナカタ様、ワニに喰いつかれます」
「Fuxx!? ならその大口ごと斬り捨てる」
ミナカタが棍棒で刀売を弾き返したタイミングで、再びヨモツワニは大きな口を開いて、神衣を喰い千切ろうとしてきた
ミナカタはすかさず刀を戻すと大きく開いた口の上顎を切り落とさんばかりに斬りつけた。
GyaGyaGyaaaaahhhhhhh!?
ミナカタが斬り上げた刀売の切っ先と、ワニの鋭い歯がぶつかり異様な音を上げた。
びっしりと生えていた数十本のワニの歯が刀売に切り裂かれて吹き飛び、切り取られた傷口から煤のような煙があがった。
しかし煤が出た傷跡を埋めるように新たな歯が生えてくると、浄化もそこで止まってしまった。
「Sxit! 思ったより硬いじゃないか」
「ミナカタ様、上です」
さらに口を閉じたヨモツワニの上にくっついていたヨモツシコオが、再び棍棒を振り下ろししてきていた。
「FuxxinBastard! ヤサカ、一旦、下がるよ」
「はい」
ミナカタはヨモツワニの下顎を蹴り上げると、ヨモツシコオが振り下ろしていた棍棒を躱して飛び下がった。
「ヨモツワニの口と上のヨモツシコオが連携して攻撃してくるのがFuxxin面倒だね」
「はい、ミナカタ様。 どうやって意思疎通を図っているのかわかりませんが、お互いの動きに合わせて戦闘を行っているようです」
「うーん、身体はくっついているんだから、どっかで意識も通じているのかね?」
「ミナカタちゃん、だったらぁ~こっちも見せてやろうぜぇ~本物の連携って奴をさぁ~」
ミナカタとヤサカの会話を傍受していたコトシロが通信で割り込んできた。
「嫌だね! 大体、これまでにお前と連携したことなんざ無いだろ」
ミナカタが即座にコトシロの提案に拒否の意思を示した。
「ちょっちょっと待って下さいよぉ~! この1年一緒にバディを組んでぇ~やってきたじゃなぁ~い」
「一緒に哨戒任務についていただけだけど? そもそも連携どころか一緒にヨモツと戦ったことすらなかっただろう?」
「いやいやいやぁ~! 新種のヨモツが出てきたときにぃ~一緒に戦ったじゃ~ん」
「ヤサカ、そんなことあったか?」
「はい、ありました。 しかし、特にコトシロ様と連携したという記録も記憶もありません」
「えぇっ!? ヤサカちゃんまでぇ~ひどいっ!!!」
「ヤサカ、うっさいから通信を切って」
「はい」
コトシロの連携作戦を一考することもなく拒否したミナカタは、騒いでいるコトシロの通信を一方的に切断した。
「奴らがうまく連携していようが、各個撃破で一方ずつ潰していけば一対一と一緒だ。 いくぞ、ヤサカ」
「YesMom!」
まずヨモツワニの頭部から生えているヨモツシコオに狙いを定めたミナカタは、飛び上がって祝詞を唱えると攻撃を仕掛けた。
「みなかたのかみのちからさずかれば いのらむことのかなわぬはなし のべにすむけだものまでもえにしあれば くらきやみじもまよわざらまし わかみまもりたまえ さきわえたまえ」
ナカタが高らかに祝詞を唱えると、渾身の神光を込められたシン刀売が光輝いた。
大きく大上段に振りかぶると凄まじいスピードでヨモツワニの上で棍棒を構えるヨモツシコオを一刀両断に斬りつけた。
Kiiieeeeehhhhhhhh
ヨモツワニから生えたヨモツシコオが異様な叫び声を上げながら、頭上に振り下ろされてくるミナカタの渾身の一撃を棍棒で打ち返した。
ミナカタは両手で棍棒を振り上げてシン刀売の一撃を受け止めようとしたヨモツシコオを一瞥したが、特に躱す素振りも見せず、渾身の力を込めて振り下ろした。
「ミナカタ様!」
「ヤサカ、構わずぶった切る! GotoFuxxinHell
BaaaaGGGGyyyyaaaaaaaannnnnNNNN!!!!
ミナカタの斬撃をヨモツシコオが棍棒で受け止めた、しかし、その瞬間、棍棒はシン刀売に真っ二つに叩き切られていた。
さらに斬撃は棍棒の真下にいたヨモツシコオも頭から腰あたりまで真っ二つに切り裂いていた。
Gyaaaahhhhhhh
断末魔の叫びを上げながらヨモツワニの頭部でヨモツシコオが浄化されていった。
「ふんっ! PieceaFuxxinCake! これで1体は片付けたね。 次は下のワニの方だよ」
ミナカタが標的をヨモツワニに移そうとしたとき、ヨモツワニはぶるりと体を震わせた。
すると浄化されかかっていたヨモツシコオの上半身が、ポロリとヨモツワニの頭から切り離されて地面に落ちた。
「WhataFuxx!?」
ワニから切り離されたヨモツはそのまま浄化されて煤となって消えていったが、ヨモツワニは無傷の状態でミナカタの神衣に襲い掛かってきた。
「トカゲの尻尾じゃあるまいし、切り離せるのかよ?」
「神光の攻撃で一緒に浄化されることを逃れるための機能でしょうか」
「なら次は予定通りにヨモツワニの本体を、あたしがブッタ斬ってやればいいんだね」
ミナカタがヨモツワニの攻撃を躱しながら一旦距離を取り、再び気を取り直してヨモツワニの本体に攻撃を仕掛けようと態勢を整えた。
それを察したのかヨモツワニも大口を開けて威嚇してきた。
「一丁前にデカい口を開けやがって! ヤサカ、避けたら即、反撃だよ」
「YesMom!」
ヨモツワニは大口を開けたまま飛びかかってきた。
しかし飛び掛かったのはミナカタではなく、その横を進んでいたヨモツシコメとヨモツシコオだった。
ヨモツワニはその大口でヨモツシコメに喰いつくと、そのまま丸のみにし、さらにヨモツシコオにも喰いついて捕食し始めた。
「FuxxinFilthyAnimal! この期に及んで共食いかよ」
「ミナカタ様、攻撃は?」
「予定通りに行くよ」
「YesMom!」
ミナカタは共食いするヨモツワニを改めて攻撃目標に据えると、無防備にさらされている胴体に渾身の斬撃を打ち込んだ。
GaAaaaaaaaaaahhhhhhShaaaaaaaaahhhhh
しかし、何かがミナカタの渾身一撃がヨモツワニの胴体を切り裂く前に防いでいた。
「WhataFuxx!? また生えてくるのかよ?」
ミナカタの斬撃は、いつの間にかヨモツワニの胴体から新たに生えてきたヨモツシコメの棍棒に防がれていた。
「ミナカタ様、一体だけではありません」
「FuxxinBullSxit! 今度は2匹かよ!」
ヨモツワニの胴体だけでなく、先ほど切り離された頭部からも、新たに棍棒のようなものを携えたヨモツシコオが生えていた。
さらにミナカタの斬撃を弾き返して素早く後退したヨモツワニは、下がった先に居たヨモツシコオに喰いついて丸のみにした。
するとヨモツワニの、ヨモツシコメが生えていない反対側の胴体がビクビクと鱗ごと盛り上がり、もう一体のヨモツシコオが生えてきた。
新たに現れたヨモツシコオはヨモツワニのあばらあたりに手を突っ込むと、そこから棍棒状の棒を引っ張り出して、ミナカタに向けて構えた。
「ミナカタ様、ヨモツワニから生えてきたヨモツシコオは、先ほどヨモツワニに捕食された個体とデータが一致しています」
「なるほどね。 ヨモツワニは捕食した他のヨモツを自分の身体から生やすことができるみたいね」
「そのようです。 やられたら切り離して、新しいヨモツを捕食して付け替えることも可能と推測します」
「じゃあ、生えているヨモツを1匹ずつ始末しても、他のヨモツを捕食されたら元の木阿弥ってこと?」
「残念ながら周囲には食べ放題のヨモツがいます」
「FuxxinPuke! それは食欲をそそらない嫌な食べ放題メニューだね」
頭部にヨモツシコオ、胴体からはヨモツシコメとヨモツシコオを生やしたヨモツワニは、器用にバランスを保ちながらミナカタに向かって突進してきた。
「ミナカタ様、上と左右から棍棒の一撃きます!」
「同時攻撃とはヨモツのくせに生意気だね! ヤサカ、前だ!」
「YesMom!」
GGGGGaaaaaKKKKKeeeeeennnnnnnnn!!!
向かってくるヨモツワニに対して、ミナカタは敢えて前に突っ込んで行くと、円を描くようにシン刀売を旋回させて振り下ろされた3つの棍棒を斬り上げた。
「いのらむことのかなわぬはなし! GotoFuxxinHell!」
ミナカタは刀売で棍棒を弾き返して振り上げたシン刀売を、勢いもそのまま振り下ろし、ヨモツワニの頭を袈裟懸けに斬り下ろした。
GGyaGGGyyyyaaaaaCCCChhhhoooo
「Sxit! 浅いっ」
ミナカタの斬撃は頭部から生えていたヨモツシコメの肩口からヨモツワニの鼻先までを切り裂いた。
頭部のヨモツシコオは黒い煤を出して浄化が始まっていたが、ヨモツワニは鼻先から一瞬黒い煤が上がっただけで、すぐに浄化は止まってしまった。
GGGGuuuuaaaaayyhhaaaa!
ヨモツワニは鼻先を傷つけられて怒っているのか、大きな雄叫びを上げると、身体をぐるぐると回転させて頭部から生えたヨモツシコオを切り離しつつ、ミナカタの正面から逃げ出した。
さらに回転の勢いにのせて胴体から生えていたヨモツシコメが、ミナカタに棍棒を突き出した。
「DontFuxxwizMe! そんなぬるい攻撃でやられるかよ!」
ミナカタは神衣の上半身を捻って難なくヨモツシコメの棍棒を躱した。
しかしヨモツシコメの棍棒を躱した後ろから、反対側の胴体から生えたヨモツシコオの棍棒が迫っていた。
「Wao! 見事なコンビネーションってか? FuxxYo!」
ミナカタはさらに捻った神衣の上半身を思いっきり前に戻して、ヨモツシコオの棍棒を掻い潜ると、しゃがみ込んで一旦、力を溜めて、立ち上がると同時にシン刀売で斬り上げた。
GyaGyaGyaaaaahhhhhhh
シン刀売の刃が回転しているヨモツシワニの顎を真っ二つに切り裂いた。
「ヤサカ!」
「はい! 神光集中」
「みなかたのかみのちからさずかれば いのらむことのかなわぬはなし」
さらにミナカタは斬り上げたシン刀売に神光が集中させた。
神光を帯びたシン刀売の刀身が眩いばかりに光輝いた。
「はああああっ!」
ミナカタは気合とともに巨大な光剣と化したシン刀売を、顎を真っ二つに切り裂かれ一瞬動きをとめたヨモツワニ向かって振り下ろした。
胴体から生えたヨモツシコオとヨモツシコメは、ヨモツワニの傷ついた頭部へと身体を移動させながら、棍棒でシン刀売を防ごうとした。
しかし棍棒もヨモツたちの胴体も、光剣と化したシン刀売によってまるで豆腐のようになすすべなく切り裂かれた。
斬られたさかれた2体のヨモツは一瞬で浄化されていった。
生えていたヨモツを犠牲にして、辛うじてシン刀売の斬撃を躱したヨモツワニは、凄まじい速さで後退りミナカタから逃れようとした。
「おいおい、どこに逃げるつもりだよ? WaidaFuxxinMimute!」
さらにヨモツワニは周囲にいたヨモツシコメやヨモツシコオも捕食しようとしていた。
「させねぇーよ! ヤサカ!」
「YesMom!」
ミナカタが跳び上がると同時に、ヤサカが神衣の推進機を加速させた。
神衣は発射台から飛び出すように加速して、素早く後退っていくヨモツワニに殺到した。
光剣を真横にしながら暴れ独楽のように周囲をぶった切っていった。
ワニは地面を這うように動きミナカタの攻撃を躱そうとしたが、体から生えたヨモツたちはなす術なく切り裂かれ浄化されていった。
新たにヨモツを取り込もうにも、周囲のヨモツも暴風にさらされたようにミナカタに斬り飛ばされていた。
「追いついたぜ! FuxxinCrocodile」
GyaaaaahhhhhhhOoooohhhhhh!
真正面から追いつかれたヨモツワニは後退を止めると、一転して突っ込んでくるミナカタに向かって顎が避けたまま大口で噛みついてきた。
「所詮はワニ畜生か、芸がないね。 ヤサカ!」
「ミナカタ様、行きます!」
「みなかたのかみのちからさずかれば いのらむことのかなわぬはなし」
ミナカタはシン刀売に再び神光を集中させると、光剣と化した刀身でヨモツワニを横なぎに斬りつけた。
刀売はワニの硬い歯すら物ともせず、その頭部から身体までを上下真っ二つに切り裂いた。
見事二つに切り裂かれたヨモツワニは流石に再生することなく、黒く煤化して浄化していった。
「ハハハっ! こりゃワニの開きだな」
「はい! ミナカタ様、お見事です」
意気揚々と叫ぶミナカタたちに、コトシロから緊急回線で通信が入った。
「ミナカタさぁ~ん? 喜んでるところ悪いんだけどぉ~」
「WhataFuxxYoWant? コトシロ、さっきも言ったがお前の助けはいらないぞ?」
「うぅ~ん、それはぁ~別に良いんだけどねぇ~ちょっと周りも見てよぉ~?」
「はぁ?」
「ミナカタ様、周囲に巨大なヨモツが多数出現しています」
ミナカタが周囲に目を向けると、先ほど倒したヨモツワニと同じ巨大なヨモツが、周囲に少なくとも5体出現していた。
「ミナカタ、ヨモツワニを1匹ぶっ殺したくらいでキャーキャー喜んでんじゃないよ!」
すでに地表に出現して動き回るヨモツワニの一匹と交戦していたマーガレットからも、喜び浮かれているミナカタに叱責が飛んできた。
「べ、べ、別にあたしは浮かれてなんて……」
「流石はミナカタ先輩! ワニ狩り一番乗りだね」
ワニと交戦中のナムチからもミナカタを称賛するお誉め言葉が送られた。
「いやぁ~さすがだねぇ~いよっワニ殺し!」
「ShutFuxxup、コトシロ!」
コトシロもナムチに乗っかってミナカタを揶揄った。
「なんだお前ら! 人を馬鹿に……」
「ShutaFuxxup。Peewees! ミナカタもキレてる暇があったら、ヤサカにヨモツワニ浄化のデータを送らせな」
「Sxit! ヤサカ!」
「マーガレット様、ミナカタ様、マヒトツネ様ともうデータを共有しています」
「じゃあ、キューちゃん、行けるね?」
「……ペギー、もちろん」
御霊マヒトツネからの返事を聞くと、マーガレットは待ってましたとばかりに手に持ったモルゲンシュテルンの星球を大きく開いたヨモツワニの口の奥に押し込んだ。
「アマツマーラ!」
祝詞を叫ぶと同時にヨモツワ二の口中で神光を纏った星球を破裂させると、棘がヨモツワニはもちろん、胴体や頭部から生えていたヨモツシコオ、ヨモツシコメも貫いて一気に浄化していった。
「お前ら、生えているヨモツどもも、下のワニ野郎も一気にぶっ潰しちまえば、一発で浄化できるようだぜ!」
「おぉ! マーガレット師団長、了解! ハクト、一発でやるよ!」
「……ナムチ、あんたの兵装にそんな武器ないから」
「ええっ!?」
「とりあえずサキミタマとクシミタマのコンビネーションでぶん殴ってみる?」
「ハクト、それでいける?」
「うーん……Maybe?」
「ちょっとハクトさぁ~ん!!!」
ナムチは両拳にサキミタマとクシミタマを発動して神光を込めると、まずはアッパーカットでヨモツワニを空中に打ち上げた。
そして追いかけるように神衣で空中に飛び上がり、ヨモツワニが地上に落ちる前に左右のコンビネーションブローでヨモツワニから生えている3体のヨモツの頭部を叩きつぶし、最後に地上に落ちたワニの胴体を、右ストレートで串刺しにして神光を送り込み浄化に成功した。
「捕食すれば増えるなら、捕食できない状態でぶっ潰せば良いんだろ?」
「ナムチにしては考えたね」
「アハハ! ハクト、褒めるなよ!」
「……褒めてないけど?」
「えっ?」
「ええっ?」
御霊ヤサカからヨモツワニのデータをもらった他の神衣主たちは、各々の御霊によって、最適なヨモツワニの攻略法を見つけ出して、対応を始めていた。
コトシロは神剣でワニの口ごと頭部から生えたヨモツシコオを真っ二つにしながら、ヨモツワニの首元まで一気に切り裂くと、再生される前に神剣をさらに真横に切りつけて、胴体から生えたヨモツシコメの胴体を切り離すことで、一気に浄化していた。
何とか5体現れたヨモツワニへの対応はできたイズモ師団の面々だったが、ヨモツワニが出現した後も黄泉大坂からは、大量のヨモツシコオやヨモツシコメが勢いを衰えさせることはなく出現してきており、ヨモツワニを始末しても、戦線はイズモの市民が避難している防衛ラインに向かってじりじりと押されていた。
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