第1章 黄泉大坂
いよいよ黄泉大坂から出現したヨモツとの戦闘が始まります!
今後も不定期での更新になりますが、良かったら読んでください。
巨大な黄泉大坂の真っ暗な穴の中から、静かにゆっくりとヨモツが這い出してきた。
直径約100メートルの穴から、最初は数体のヨモツシコオの姿を確認するや否や、その数はあっという間に数百体、数千体のヨモツシコオやヨモツシコメたちに膨れ上がった。
地上に這い出てきたヨモツたちは、言葉にならない不気味なうめき声を上げながら、ゆっくりと進んでいく。
その数キロ先では神衣に乗り込み戦闘態勢でマーガレット師団長の出撃命令を今か今かと待つ、ナムチたちイズモ師団の4人の神衣主たちがいた。
「マーガレット師団長、いつまで待つんだよ!」
「焦るんじゃあないよ! YoFuxxinShortTimer!」
「焦ってるんじゃなくてぇ〜ヨモツの大群を〜眼の前にしてぇ〜びびってるんじゃ〜ないですかぁ〜?」
「コトシロ、ShutaFuxxup!」
「ナムチくぅ〜ん、コトシロ先輩だろぉ〜?」
戦闘前の緊張感からか、妙なテンションで馬鹿話を続けるナムチたちの眼前には、これまで見たことがないほどの大地を埋め尽くさんばかりのヨモツの大群が迫ってきていた。
一体何を求めて進んでいるのか、押し合い圧し合いながら同じ方向に進んでいくヨモツたちは、ぶつかって転倒したヨモツは踏み潰しながら、一定のスピードで歩みを止めることなく進んでいた。
「こりゃまたぁ~えげつないヨモツ共だぁ〜ねぇ~」
「なんだ、コトシロ? ビビってんの? AreYoChicken?」
「CockCockCock! ナムチじゃないからビビってましぇ~ん」
「俺だってびびってねぇーって!」
「それとぉ〜コトシロ先輩っだっつーのぉ! YoSonobaBitxh!」
「誰の母ちゃんがBitxhだって!」
「あぁ〜ごめん、ごめん、ナムチはぁ〜母ちゃん知らない子だったぁ〜」
「FuxxYo! この…バカ!」
「YoFuxxYoMom! あっ! ごめぇ〜ん」
「なっ! この……」
「ナムチ、もうやめなって! コトシロに口で敵うわけないから」
「流石ぁ〜ハクトちゃんはわかってるぅ〜」
先ほどコトシロにびびってると揶揄われたナムチがここぞとばかりにやり返したそうとしたが、逆にやり込められていた。
巫山戯て無駄口を叩いてるコトシロとナムチとは対照的に、反対側で待つミナカタは新しく鍛造した太刀・シン刀売を鞘ごと大地に突き立てて、静かに待っていた。
すると部隊の中央にいたマーガレットの真っ赤な神衣がふらりと一歩前に出てきた。
「さぁーて、キューちゃん、そろそろ良い頃合いかね?」
「……ペギー、AllReady、Mom!」
「テメェら、これだけいれば相手には困らないだろう。 GoFuxxit!」
そう叫ぶとマーガレットはこの戦いのために新調した新しい得物・モルゲンシュテルンを振り下ろした。
モルゲンシュテルンとは鎖で繋がれた星球と呼ばれる無数の棘が付けられた球体状のヘッドを持つ巨大なハンマーだ。
振り下ろされた勢いで星球は柄から外れ、ジャラジャラと音を立てながら、凄まじいスピードでヨモツの先頭集団に目掛けて飛んでいった。
星球が迫ってきていても、ヨモツたちは表情をかえることも、逃げる素振りすらも見せずに迫ってきた。
毬栗のような星球は無表情のヨモツたちを直撃して薙ぎ倒し、叩き潰して大地に突き刺さった。
「爆ぜろ、マヒトツネ!」
「……了解」
「アマツマーラ!」
マーガレットの叫び声に合わせて、星球についていた神光を纏った無数の棘が四方八方に飛び出し、周囲にいた数百のヨモツたちを一気に貫いた。
マーガレットの神光が込められた棘に貫かれたヨモツたちは、一斉に浄化され消えていく。
「Yahoo! マーガレット師団長、YoFuxxixCool!」
待ちに待った出撃命令が出たにも関わらず、ナムチはその場に留まってマーガレットの戦果に喜びの声を上げた。
「だからテメェはShortTimerだっての! よく見ろ!」
「ええっ!?」
そう言われてヨモツたちを見ると、先程のマーガレットの攻撃で消えたヨモツの穴は、あっという間に後続のヨモツで埋め尽くされて無くなっていた。
「まぢか!?」
マーガレットはモルゲンシュテルンの星球を柄に引き戻しながら、まだ後ろに待機している神衣主たちを振り返って言った。
「WhataFuxxAreYoDoing? もう戦闘開始は命令したぞぉ?」
マーガレットの言葉で我に返ったナムチが慌てて神衣を発進させた。
「ハクト、いっくぞぉ~!!!」
「えぇっ!? 兵装を接近戦に……ってちょっと待って、ナムチ!」
ハクトの静止も聞かず、ナムチが雄叫びを上げながら目と鼻の先に迫ってきたヨモツの先頭集団に突っ込んで行った。
「いやぁ〜若いっていいですねぇ〜」
「コトシロ、テメェは行かないのか?」
突っ込んでいくナムチを見て、他人事のように呟いたコトシロにマーガレットがドスの効いた声で尋ねた。
「いやぁ〜僕の神衣にはぁ〜この距離で攻撃できる武器はぁ〜無いのでぇ〜」
「あぁ!? コトシロ、距離がなんだって? そんなに接近戦がお得意なら、ナムチの馬鹿を見習ってヨモツ共に突っ込んだら良いんじゃないか?」
「いやぁ〜こちらからぁ〜突っ込まなくてもぉ~、あとちょっとでぇ~向こうが来るでしょぅ~」
「ShutaFuxxup! ガタガタ言わずにとっとと行きやがれ!」
「へいへぇ〜い!」
渋々といった面持ちで神衣を起動させたコトシロは、諸刃の剣を抜き放ち、両手でしっかりと構えてゆっくりとヨモツの集団にホバリングしながら向かっていった。
「タマクシ、現状でぇ〜最も効率良くぅ~ヨモツを減らすにはぁ~?」
「コトシロ様、我が神衣には遠距離攻撃はおろか、ヨモツの集団を広域殲滅する兵装はありません。 八握剣から神光の斬撃を飛ばすくらいでしょうか?」
「だよねぇ~。 やっぱり猪突猛進のナムチくんみたいにぃ~ヨモツが集団で集まっている中心にぃ~飛び込むしかないかぁ~」
そう呟くコトシロの正面には、いち早くヨモツ集団に飛び込んでいったナムチが縦横無尽に暴れまわっていた。
「おりゃ~!? サキミタマ! クシミタマ!」
ナムチが神光を込めた両拳をヨモツに打ち付けるたびに、拳の延長線上にある数十のヨモツたちが一気に浄化されていった。
「オラオラ悪羅悪羅! GotoHellModaFuxxer!!!」
「ナムチ、この程度のヨモツなら、いくら攻めてきても大したことないわね」
「PieceobaFuxxinCake! ハクト、余裕のよっちゃんって奴だぜ!」
初めてのヨモツとの大規模な戦いを前にして、どうしても緊張が隠せなかったナムチだったが、いざ戦闘が始まってみれば、神光で問題なく浄化できる上、個々のヨモツの戦闘力もこれまでと大差なく、問題なく浄化できたことで、いつもの調子を取り戻していた。
現在、イズモ防衛の脅威となっていたのはただ一つ、浄化された傍からその穴を一瞬で埋めるように増えていく底の見えない圧倒的なヨモツの数だけだった。
しかし、それも調子を取り戻してきたナムチにとっては大したことは無いように思えていた。
「黄泉大坂だの大侵攻だの言うから、どんなにすごいのかと思ったら、ただ数が多いだけじゃねぇか!」
「あらぁ〜随分とぉ〜余裕出てきたじゃなぁ〜い」
「ふんっ! ShutaFuxxup、コトシロ! 俺は初っ端から余裕アリアリだったつーの!」
ナムチは周囲のヨモツを次々と浄化しながら、コトシロとも会話をする余裕も出てきていた。
「油断は禁物なのである!!!」
しかし、そんなイズモ師団の面々に、後方で待機していたタケ・ミカヅチから全神衣に対して大音量の強制通信が入った。
「Shutup! 鼓膜が破れるわ! なんだい? タケ・ミカヅチ師団長は随分と心配性だね?」
「マーガレット師団長、油断大敵なのである! すでに黄泉大坂の口が開いた以上、押し出てきた大量のヨモツどもの後ろには、これを追いかけてくる化け物級のヨモツがいると考えるべきなのである」
「こいつらの後ろに何かついてくるってのかい?」
「然り! 真の敵は後からくるのである! それはお決まりなのである!」
過去に黄泉大坂ほどの大規模なヨモツ侵攻を経験したことがあるのは、この場ではヤマト建国前から戦い続けているタケ・ミカヅチしかいなかった。
タケ・ミカヅチの経験では、黄泉大坂ほどの大穴が開くと、まずヨモツシコメやヨモツシコオが大量に這い出て来るという。
そしてそれらを追いかけて巨大で凶暴なヨモツが出てくるのだという。
「タケ・ミカヅチのおっちゃん、そういうことはもっと早く言ってくれよ!」
「おっちゃん!? うーむ……作戦会議で伝えたのである」
「そうなん?」
「……」
あまりに長かった作戦会議の弊害で、最初の頃にタケ・ミカヅチが話した内容を、会議に出ていなかったナムチだけでなく、他のイズモ師団の面々も覚えていなかった。
「……故に力を温存しつつ、このあと来る強敵に備えるのである!」
どうにか気を取り直したタケ・ミカヅチは、改めて眼前のヨモツの大群を相手にして、力を消耗し過ぎないように忠告した。
「じゃあ、コイツらぶっ倒しても意味ないのか?」
タケ・ミカヅチの忠告を聞いたナムチは一瞬、手を止めると、神衣を後退させながら呟いた。
「お前は馬鹿か? YoStupidAsxhole!」
「WhatFuxx! ミナカタ先輩!? なんだよ、突然!」
「Fuxxoff、ナムチ! あたしらが何のために戦ってるのか忘れたのか?」
戦力を温存させようと前線から後退しようとしたナムチをミナカタが怒鳴りつけた。
ナムチたちはイズモの人たちをヨモツから守るために戦っていた。
ナムチたち神衣主には大した脅威にはならないかもしれないが、一般の人たちにとってはたった1体のヨモツでも、大きな被害となる。
今、迫ってきているヨモツが主力ではないからといって、素通りさせてイズモの民が避難しているシェルターまで行かせる訳にはいかないのである。
「タケ・ミカヅチのFuxxinOldGranPaがゴチャゴチャ言ってきたからって、いちいち相手にするな!」
「えっ! ミナカタちゃん、クソ爺はひどいのである……」
通信を聞いていたタケ・ミカヅチが地味にショックを受けていた。
「うっさい! あたしは一族とは縁を切ったんだ! 勝手にちゃん付けすんな!」
タケ・ミカヅチを怒鳴りつけながら、ミナカタはナムチが見逃した数十のヨモツにシン刀売を振るって神光の斬撃を飛ばし屠っていった。
「真の敵だかなんだか知らないけど、ここから先に行かせるわけにはいかないんだよ!」
「そうか! すまねぇーミナカタ先輩。 ハクト、アイツらをぶっ倒すぞ!」
「ナムチ、八咫鏡は臨界状態だよ!」
ミナカタに叱責されたナムチが神衣の両拳にありったけの神光を込めて振りかぶると、再びヨモツの中心目掛けて突っ込んで行く。
「お前もとっとと行かないのか?」
「まぁ〜何が待っているのかぁ〜知らんけどぉ~俺たちには目の前の敵をぉ〜屠って屠って屠り続けるしかないってことだぁ~ねぇ~」
いつ間にかマーガレットの側まで撤退してきていたコトシロが、いつも以上に気だるい口調で他人事のように呟いた。
「タケ・ミカヅチ師団長の話じゃぁ~黄泉大坂が閉じるまでぇ~三昼夜かかったこともぉ〜あったらしいですよぉ〜」
「へぇ〜、じゃあその間はクソもしょんべんも垂れ流しかい?」
「流石にぃ~三日分ともなるとぉ~尿瓶も一杯になっちゃう? おじさん、そういうプレイはぁ〜あんまりかなぁ〜」
「この変態が! そこは御霊が排泄物をちゃんと処理してくれるだろう? Maybe?」
「「えっ!?」」
マーガレットとコトシロの会話を聞いていた2人の御霊マヒトツネとタマクシは、突然、神衣主から排泄物の始末を求められて驚きの声を上げた。
「「えぇ?」」
自分の御霊たちが驚く声を聞いて、コトシロとミナカタもびっくりして声を上げた。
「まぁークソや小便の話は後にして、コトシロ、お前もとっとと行ってこいや!」
マーガレットからサボるなと叱責が飛んできたが、それでもコトシロは話を続けようとした。
「でもマーガレット師団長ぉ~、小便だけならぁ〜いいんですけどねぇ~」
「YoShutaFuxxup! クソの話は良いから、とっとと行って戦闘に集中しな!」
「ヨモツはぁ~ちゃんぶっ潰してますよぉ~」
マーガレットがコトシロを叱責している間に、圧倒的な数の暴力で、ヨモツたちはすでにマーガレットたちの眼前まで接近してきていた。
コトシロは周囲に群がってくるヨモツに斬撃を飛ばして、一瞬で数十体を殲滅浄化しながらマーガレットへ話を続けてようとした。
「でもぉ〜やっぱりぃ〜固形物はヤバいっていうかぁ〜」
「ISayShutaFuxxup! テメェごとやっちまうぞ!」
「コトシロ、いっきまぁ〜す!」
マーガレットにモルゲンシュテルンを突きつけられ、半ば強制されて戦闘に参加したコトシロだけでなく、ミナカタはもちろん、そのミナカタに叱責されたナムチも気合いを入れ直して周囲のヨモツを殲滅していった。
それから凡そ1時間、戦闘を続けたマーガッレトたちイズモ師団は、すでに数万余りのヨモツを浄化殲滅していた。
しかし、それでも黄泉大坂から出てくるヨモツの勢いが弱まる様子はなかった。
「Damn! コイツら本当にキリがねぇ~ぞ!」
「ナムチ、黄泉大坂から出てくるヨモツの数がさっきより増えているわ!」
「Fuxxinマジか!? コイツらこれだけ潰してもまだ出てくるってのか!?」
止まることを知らないヨモツの大群は、これまで以上の異常な勢いで黄泉大坂から殺到して出てきていた。
ついには他のヨモツを踏みつぶしてまで出てこようとするモノや、押し潰されまいと圧し掛かってきたヨモツに喰いつく者も出てきていた。
「キューちゃん、ちょっとこれは普通じゃないね」
「……確かに……まるで何かに追い立てられ逃げ出そうとしているようだ」
「このあとヨモツを追い立てる何かがくる?」
あまりに異常なヨモツたちの行動に、マーガレットと御霊のマヒトツネは、そろそろ噂の化け物が出てくると予想した。
「テメェら、警戒レベルを上げな!」
「おぉ〜マーガレット師団長、そろそろぉ〜きちゃいますかぁ~?」
「いつでもこいっての!」
ヨモツ殲滅に飽きてきていたコトシロと、強敵を待っていたナムチが別の意味で歓喜の声を上げた。
ミナカタは黙って神衣の操縦席から黄泉大坂の中心部に視線を向けた。
それぞれの反応にマーガレットはニヤリと笑った。
「コトシロ、ビビるなよ!」
「はぁ〜!? バカナムチと違ってぇ〜ビビってましぇ〜ん」
「ShutaFuxxup! コトシロ、ビビってるのはお前だろ?」
「だからぁ〜ビビってましぇ〜ん」
「コトシロ、ビビってる!」
「Fuxxoof! テメェら2人とも黙れ!」
マーガレットがまたふざけ始めたナムチとコトシロを黙らせたそのとき、御霊マヒトツネが全神衣に警告を発した。
「……全神衣に告ぐ! 最大警戒! BigAxsholeisComing!」
マヒトツネの警告の叫びをきいたはマーガレットを始めとしたイズモ師団の神衣主たちは、攻撃の手を休めることなく黄泉大坂の中心に視線を向けた。
まず密集しながら我先にと逃げるように出てくるヨモツの後ろから、ヨモツを食い散らす「巨大な口」が現れた。
「WhataFuxx? 何だあれ?」
数メートルはある巨大な口が周りにいるヨモツたちを一度に十数体ほど食い散らしながら、黄泉大坂からゆっくりと地上に這いあがってきた。
それは黄泉大坂の仄暗い穴の奥から、のしのしと出ててくるとその全貌を地上に現した。
「むむ……あれはヨモツワニである。 しかし神光の下で動けるワニが出現したのは初めてなのである」
後方でヤマト中央へのゲートを守護していたタケ・ミカヅチが、黄泉大坂から出現した四つ足で動き回り、巨大な口で当たり構わずヨモツを食い散らす化け物をヨモツワニであると指摘した。
かつての戦いでは、巨大なヨモツワニに喰いつかれれば神衣でもかみ砕かれたというが、神光に弱いことは他のヨモツと変わりなく、オオヒルメの塔が完成して以後、ヤマト周辺に現れることはなかった。
しかし今回、黄泉大坂から現れたヨモツワニは、オオヒルメの塔から降り注ぐ神光を浴びても浄化されることなく、悠然と周囲のヨモツを喰い散らしながら、ヤマト中央へ一直線に向かってきた。
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