第1章 ババ抜き
食事を終えた後は、食堂にトランプを持ってきていたコトシロの発案で、罰ゲームに皿洗いを賭けた大ババ抜き大会が行われた。
言い出しっぺのコトシロは早々に上がり、スクナ、ミナカタ、ミイが順調に上がってたいった。
残ったのはババを持ったらすぐに顔に出てしまうナムチと、すぐにむきになるキマタだった。
「キマタ、本当にそっちでいいのか?」
「ナムチ兄ちゃん、うるさいよ」
お互いに残り1枚となったナムチとキマタは熾烈な争いを続けていた。
「ちょっと!? そっち取るからかカードを離してよ!」
ナムチはキマタが取ろうとしたカードを取らせまいと、持つ手に力を入れていた。
「ナムチ、さすがにそれは大人げないぞ」
ナムチのあまりにも幼稚な行為に、ミナカタがドン引きしていた。
「そうだよ! ナムチ兄ちゃん、正々堂々とカードを渡せ!」
キマタがミナカタの指摘を受けて、素直にカードを渡すように要求した。
「ちぇっ! わかったよ」
ナムチは渋々とカードをキマタに渡そうとした。
「ちょっと待ってくださいよぉ~! ナムチ、そっちのカードじゃ~ないよねぇ~」
カードを渡そうとしたナムチを、ニヤニヤと笑いながらコトシロが制止した。
「コトシロ先輩、なんですかいきなり?」
「さっきぃ~ミナカタが話しかけてぇ~皆がそっちを見た隙にぃ~カードを入れ替えたでしょぉ~」
「……そそっそんなことはしてないけど」
コトシロから渡すカードを入れ替えたと訴えられたナムチは、否定しながらも目が泳いでいた。
「はぁ~どうして君はそういうわかりやすい嘘をつくのかな?」
「ナムチお兄ちゃん、ズルはダメだよ!」
スクナやミイからもカードを入れ替えたことを見破られて、ナムチはとても悲しそうな顔をしていた。
「みんな、もういいよ! ナムチ兄ちゃんの好きな方を頂戴」
悲し気なナムチを見て可哀想になったキマタが、ナムチに助け船を出した。
「おお! キマタは良い子だ!」
嬉々としてカードを渡そうとするナムチに、コトシロが再び声をかけた。
「そうだねぇ~ナムチはどうかなぁ~良い子なのかなぁ~?」
「えっ?」
ナムチは周囲を見てみると、ミイを除くスクナ、コトシロ、ミナカタの3人がジト目でナムチを見つめていた。
「……」
ナムチは黙ってカードを手元に戻すと、改めてキマタに差し出した。
キマタはカードを受け取ると、驚いたようにナムチに聞いた。
「ナムチ兄ちゃん、これでいいの?」
「ああ、さっきキマタが引こうとしていたカードはそっちだからな」
「ありがとう、ナムチ兄ちゃん! 上がりだよ」
キマタは嬉しそうに笑うと、揃った3のペアを捨てた。
「やったね、キマタ兄ちゃん!」
ミイが嬉しそうに喜ぶ横で、スクナたち3人が当然と言った顔で頷いていた。
「……なんだよ、最初からこうするつもりだったから」
「「「嘘つけぇ~」」」
不服そうに言うナムチに3人が同時にツッコんだ。
ナムチは渋々と食器を洗うために食堂の台所に向かったが、流石に全てを押し付けるのは可哀想だと、スクナとミイ、キマタが手伝ってくれた。
コトシロとミナカタは「勝負は勝負だからねぇ~」と言いながら、部屋に戻っていった。
食器洗い終えて風呂に入り、キマタとミイを寝かしつけた頃、ナムチの部屋に訪問者が訪れた。
「ちょっと話があるんだけど? スクナも一緒に」
部屋の入り口にはイヴァが無表情に立っていた。
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