第1章 訓練
Fワードなどを造語に変更、文章も一部書き直してアップしなおしています。2022年3月25日追記
入所式を終えた訓練生は貴族も平民も全員が寮生活となり、神衣主となるための厳しい訓練を受けることとなった。
訓練生2人に一部屋が与えられ、偶然か必然か、スクナはナムチと寮で相部屋となった。
ほとんどのルームメイトが貴族同士や平民同士など、身分的に近いものが同室となっていた。
それはかつて能力的に近いものを同室としたときに、貴族の子弟だった訓練生が、同室となった平民の訓練生を見下して奴隷のように扱い、トラブルになったことがあったからだという。
貴族の中でも高貴とされる御巫のスクナと、貴族ではないナムチが同室になったことは、訓練生の中でも以外に思われていたが、ナムチはともかく、スクナもあまり気にしていなかった。
スクナは同室になったとき、ナムチに「もしかしてどこかの貴族なの?」と聞いてみた。
「貴族? 俺が? ていうか俺、施設から来たから親とかよくわかんないんだよね」
ナムチの言葉に、スクナは聞いてはいけないことだったかと思い、それ以上のことは聞くことができなくなってしまった。
しかし、話をしたナムチの方は、スクナが気にしているように、自分が施設から来たことを特に気にしてはいなかった。
そのため他の訓練生から生い立ちを聞かれたナムチ自身の言葉によって、数日のうちに訓練生全員が知ることとなっていた。
話を聞いたヤソガミを中心とした貴族の子弟たちは「ナムチはどこの馬の骨かわからない孤児だ」と馬鹿にしたが、教官たちが特に注意することもなかった。
以降、ヤソガミたちのグループはナムチを殊更に無視したり、仲間外れにしたりするなど露骨な嫌がらせをした。
ナムチは当初、嫌がらせにいちいち反応して、ヤソガミたちもそれを喜んで嫌がらせを続けていたが、スクナからヤソガミたちの相手にしないように言われたり、外の訓練生も巻き込まれることを嫌がって揉めていても無視するようになったため、しばらくするとあからさまなトラブルは無くなっていった。
小さな嫌がらせは続いていたようだったが、細かいことを気にしないナムチは本当に気が付かなかったり、特に反応することもなかった。
そもそもスクナはナムチが孤児であることを特に気にしてはいなかった。
馴れ馴れしくグイグイと距離をつめてくることに辟易することもあったが、寮で一緒に生活していくうちに、ナムチはちょっと空気が読めないところがあるが、基本的には裏表のない気のいい奴だとスクナは思うようになっていた。
寮で同室になったこともあり、ナムチとスクナは一緒に行動することが多くなっていた。
貴族グループの中には、プライドが高く良い意味でも悪い意味でも貴族らしいヤソガミよりも、同じ御巫の三家の出であるスクナをリーダーにしようと考える者もいたが、スクナが常にナムチと行動を共にしているため、そんな話もいつの間にか無くなっていた。
イヴァは入所式での出来事以降、ヤソガミたち一部の貴族子弟からは距離を置かれているようだったが、それ以外の一般の訓練生や下級貴族の子弟たちから慕われ、様々な相談などもされているようだった。
イヴァ本人は相談などにも真摯に対応しながら、授業や訓練を淡々と受けていた。
しかし、そんな当たり障りのない訓練生生活は長続きしなかった。
訓練は毎日午前6時に起床、基礎体力をあげるための走り込みや筋肉トレーニングを行い、昼食後は思念力をあげるための瞑想、ヤマト建国の歴史やヨモツについて学習、戦闘訓練などが行われていた。
そんな生活が1ヵ月も続き、訓練生たちが慣れてきたころ、事件は起きた。
この日は午後から戦闘訓練で、2人一組になり交互に攻撃と防御を行っていた。
当たり前のように、ナムチはニコニコと笑顔を浮かべて、スクナの下にやってきて一緒に訓練を始めようとしていた。
別に僕と君はペアというわけではないんだけどね、とスクナは心の中で思ったが、妙になついてくるナムチを振り払って別の訓練生と訓練することもなかった。
「Deam! 毎日毎日筋トレだの、勉強だのって意味あるのか?」
スクナの心のうちには全く気付いていない様子のナムチが、休みなく続く厳しい訓練への愚痴を言い始めた。
「体力はあるに越したことはないし、ヨモツについての研究も必要でしょう」
「スクナはマジメちゃんだね」
ナムチとスクナは、おざなりなパンチを繰り出しながら軽口を叩いていた。
他の訓練生たちも、1カ月を経て少し余裕が出てきたのか、スクナたちと同じようにしゃべりながら訓練していた。
そんな弛んだ空気を叩き壊すように、教官の怒号が校庭に響き渡った。
「ShutaFuckUp! なにをペチャクチャと楽しそうにしているんだ?」
顔を真っ赤にした教官が怒声を上げた。
教官は傍にいたヤソガミに近づくと、顔を睨みつけて唾を飛ばしながらさらに怒鳴りつけた。
「ヤソガミ訓練生、おしゃべりしながらする戦闘訓練は楽しいか?」
「いいえっ! 自分はマジメに訓練を……」
「ShutYoMouth! 私は「楽しいか」と聞いているんだ!」
教官はヤソガミの答えを遮って、さらに顔を近づけてもう一度大声で聞いた。
「いえっそっその、たった楽しいであります!」
ヤソガミは姿勢を正し、緊張した表情を浮かべながら大きな声で答えた。
すると、教官はニヤッと笑って、額をヤソガミのおでこに付かんばかりに近づけ、ヤソガミよりも大きな声で叫んだ。
「Isee! 楽しいのか! それは良かった」
さらにヤソガミの両肩に手を置いてがっちりつかむと、唾を飛び散らせながら続けて言った。
「私は訓練生思いの教官だからな! そんなに戦闘訓練が楽しいなら、もっと楽しくさせてやろう」
教官は楽しそうに笑うと、ヤソガミの肩をつかんでを隣にいる訓練生・フユキヌのほうに無理やりふり向かせた。
「殴れ!」
「はっ?」
突然の教官の命令にヤソガミが戸惑った表情を見せた。
しかし教官はそんな戸惑ったヤソガミの反応を無視して、ニコニコと笑顔を浮かべながら後ろから顔を近づけて、後ろからヤソガミの耳に囁くように話をつづけた。
「ヤソガミ、早くこいつを殴れ」
「えっ!?いや、それは……」
「何を迷っているんだ? 楽しい戦闘訓練だぞ! 早く殴れぇー!!!」
「はっはひぃー!」
教官に耳元で大声で殴れと叫び声を上げられたヤソガミは、たまらずフユキヌに殴りかかった。
「いや、ちょっと待って」
「うわぁー!!」
フユキヌは怯えて逃げようとして後ろに下がったが、ヤソガミは構わずに飛び掛かると、右拳で思いっきりその顔面を殴りつけた。
突然殴られたフユキヌは後ろに倒れこんで、目に涙を浮かべ口からは血を滲ませていた。
「な、なんで僕がこんな目に……」
ヤソガミは怯えたように呟くフユヌキを見ながら、呆然とした表情でハアハアと肩で息をしながら震えていた。
教官は血を流すフユヌキには見向きもせず、殴りつけた拳を見つめながらプルプルと震えているヤソガミに近づいて聞いた。
「楽しいか?」
教官は俯いて拳を見つめているヤソガミの顔を下から覗き込むようにして近づくと、再び聞いた。
「ヤソガミ、同期のお友達を殴って楽しいか?」
「……」
教官は、青い顔をして俯いたまま答えられないヤソガミを冷たい目で一瞥すると、くるりと振り返ると、今度は倒れているフユキヌに近づいていった。
尻餅をついて倒れこみ、口についた血を痛そうに拭っているフユヌキの前にしゃがみ込み、その顔を睨みつけて言った。
「フユキヌ、殴られて楽しいか?」
「うぅ……楽しくありません」
フユヌキは痛みと屈辱で今にも泣き出しそうに顔を歪めながら、教官の顔を恐々と見つめ返して小さな声で応じた。
「そうか、そうか! それはそうだな。殴られるのは嫌だな」
教官はニコニコと笑いながら言うと、優しげにフユヌキの肩を両手で抱え、抱きかかえるようにして立ち上がらせた。
更によろけながらも手を借りて立ち上がったフユヌキの、服についた砂埃をその手で優しくはらってやると、涙をこらえながら怯えて教官を見ることしかできないフユヌキに、満面の笑みを浮かべた顔を近づけた。
「では、殴り返すのは楽しいだろう!」
「えっ!」
「お前を殴った奴を殴り返したら楽しいだろう?」
「えぇっ!? Whata?」
教官は戸惑いながら聞き返したフユヌキの肩を両手でがっつりとつかむと、驚き混乱しているフユヌキを無理やりヤソガミの前に引きずっていった。
「さあ、フユヌキ! ヤソガミを殴れ!」
「いや……僕は別に殴り返したくは……」
教官に怯えうろたえたフユヌキは、助けを求めるように周りの訓練生をキョロキョロと見まわした。
しかし、訓練生の誰もが下を向き、フユヌキと視線を合わせようとはしなかった。
「さあどうした、フユヌキ? 早くヤソガミを殴り返せ! さあ、早く! やられたらやり返すのは楽しいだろう?」
教官は怯えるフユヌキに対して、容赦なくヤソガミを殴るように強要してきた。
「うあぁ……ヤソガミ、僕は……僕は……」
フユヌキは自分を殴ったヤソガミにも助けを求めたが、ヤソガミは黙ったまま俯いて唇を噛み、フユヌキと視線を合わせようともしなかった。
「あぁ……殴られた上、なんで僕がこんな目に合わなきゃならないんだ……」
フユヌキは他の訓練生も、自分たちのリーダーだと思っていたヤソガミも、周りにいる誰一人として助けてくれないことに絶望し、思わず泣き崩れた。
泣き出したフユヌキを見ても、教官は一切表情を変えることもなく、さらに容赦なく怒声を浴びせかけた。
「さぁフユヌキ! 殴れ! 早く! 早く殴れぇー!!」
「うわあぁぁぁ!!」
追い詰められ耐えられなくなったフユヌキが、たまらずヤソガミを殴ろうとしたとき、いつの間にかフユヌキのすぐそばまできていたナムチが、振りかぶった腕をがっつりとつかんだ。
「Yo、フユヌキ! StayCool! ちょっと落ち着けって」
「ナムチ……?」
フユヌキはいつの間にか近くまで来ていたナムチを驚いた様子で見ていた。
ヤソガミや他の訓練生たちもナムチの突然の行動に一様に驚き、何をしようというのかと固唾をのんて見つめていた。
教官も突然近くまでやってきたナムチを驚いた様子で睨みつけた。
「ナムチ、貴様、なんのつもりだ?」
フユヌキの腕をつかんでいるナムチの後ろにやってきた教官が、怒りを抑えてこめかみをピクピクと震わせながら、敢えて出した冷静な声音でナムチを問いただした。
「うーん……先生、フユヌキはそういうタイプじゃないから、殴られて殴り返しても楽しくなさそうだよ」
「ほう、私の指導が間違っていると?」
ナムチは教官の問いには答えず、掴んでいたフユヌキの手を放し、涙で汚れた顔をポケットから出した薄汚れたハンカチで拭いてあげた。
教官はそんなナムチの後ろにくると、怒りで血管をビクッと浮き立たせて、顔をタコのように真っ赤にして睨みつけた。
ナムチは激怒している教官に気づいていないのか、わざと無視しているのか、普段と変わらない落ち着いた様子で言った。
「いやぁ~間違っているとか、そういうのは俺にはよくわかんないけど、なんかフユヌキは楽しそうじゃないし、ヤソガミもいじめちゃ可哀想じゃん?」
ナムチは振り返って後ろに立つ教官を見ると、頬を指でかきながら苦笑いを浮かべて言った。
教官とナムチのやりとりを見ていたヤソガミは衝撃を受けていた。
貴族であり、尊ばれ、敬われるはずの自分が、よりにもよってどこの馬の骨ともわからない孤児のナムチに、ずっと馬鹿にして見下していたナムチに、いじめられて可哀想だと憐れみをかけられたのだ。
その瞬間、ヤソガミの中で何かが弾け飛んだ。
「うおぉぉぉー!!! WhataFuuuuxxxx!!!」
青い顔で俯いていたヤソガミは、両腕を振り上げながら雄叫びを上げた。
傍にいたナムチや教官、フユヌキだけでなく、固唾を飲んで成り行きを見守っていた訓練生たちも、突然叫び声を上げたヤソガミを、驚いて見つめていた。
「先生は間違っていません! さあ、フユヌキ、早く! 早く俺を殴れぇ~!」
俺は貴族だ、こんな奴に憐れみをかけられる謂れはないと、プライドを傷つけられ激昂したヤソガミは、教官とナムチを押しのけるようにしてフユヌキに駆け寄ると、早く自分を殴るように要求した。
「さあ、フユヌキ、早くしろ! 俺を殴れ! フユヌキ、殴ってくれ!」
目を血走らせて必死に自分を殴れと訴えてくるヤソガミに、フユヌキを先ほどとは違う意味で怯え、そこから逃れようと身を仰け反らせた。
「ヤ、ヤソガミくん、ちょっと何を言っているんだ? お、落ち着いてよ!」
「何でもいいから、早くしろ! フユヌキ、俺を殴ってくれ!」
「嫌だよ! ちょっちょっと止めてよ! どうしたんだよ?」
「いいから! 早くしろ! 俺を殴ってくれ!」
フユヌキは恐怖で顔を青くしながら、なんとか興奮したヤソガミに落ちつかせようとしたが、激昂して自分を殴れと言い続けるヤソガミは聞く耳を持たずに、口角から唾を飛ばしながら「殴れ!」と叫び続けていた。
教官も他の訓練生も、狂ったように叫び続けるヤソガミを唖然とした様子で見つめることしかできなかった。
「ヤソガミ、自分を殴って欲しいってお前はドMなのか?」
周囲が驚いて何もできずにいる中、全く空気を読まないナムチが、興奮して自分を殴れと叫び続けるヤソガミに、まさかのツッコミを入れた。
「はぁ?」
まさかのツッコミに一瞬あっけにとられたヤソガミが間抜けな声を上げた。
「えっ? それってどういうこと?」
「ドMって? 変態なの?」
訓練生たちがナムチのツッコミを聞いて、落ち着きなくザワザワとし始めた。
自分に変態的な性癖があるように指摘されたヤソガミは、顔を真っ赤にして否定を始めた。
「ちがっ! 俺にそんな趣味はない」
「でも、殴って欲しいって」
「ふざけるな、ナムチ! それはそういうことじゃない!!!」
「えっ? じゃあどういうこと?」
さっきまで必死に殴れと言っていたヤソガミが、今度はナムチに向かって自分は変態ではないと性癖を否定して叫び声を上げた。
「……ぷっ! あはははは」
緊迫した状況から、一転して始まったあまりに馬鹿々々しいやり取りに、たまらず周囲で事の成り行きを見守っていた訓練生たちが思わず笑い出した。
先ほどまで怒りの声を上げていた教官も、俯いて顔を隠しながら肩を震わせていた。
♪キーンコーンカーンコーン
そのとき、訓練の終了を告げる鐘が響いた。
「ふっふん、今日の訓練はここまでだ!」
教官は笑いをこらえながら、何とか怖い顔をつくって、渋々といった様子をみせながら、訓練の終了を訓練生たちに告げた。
そして振り返って一旦校舎へ帰る素振りを見せたが、ふと何かを思い出したように戻ってくると、ナムチの前に立って、その顔を睨みつけた。
「ナムチ、貴様はきょうから1週間、寮のトイレ掃除だ」
「Whatz!? なんでだよ! 俺は何もしていないだろう?」
「理由は教官に反抗したからだ!」
「えぇーっ! 意見しただけで、反抗してないだろう!」
「ふんっ!」
教官はナムチの質問に答えることなく、くるりと背中を向けて黙って教官室に去っていった。
「先生に逆らったんだから仕方がないね」
いつの間にかやってきたスクナが、クスクスと笑いながらナムチに言った。
「はあ!? 逆らってないでしょ? ていうかスクナは何してたんだよ?」
「僕? 僕は見ていたけど?」
「WhataFuxx! そこは俺を助けにきてよ?」
「NoKiddin! 何で僕が? そんなのいやだよ」
「なんでだよー!!!」
自分を助けてくれないスクナに怒って地団太を踏むナムチをみて、スクナはアハハと大声で笑いながら笑顔を見せていた。
そんな2人を悔しそうに顔を歪めたヤソガミが憎々しげに睨みつけていた。
「ヤ、ヤソガミくん、大丈夫?」
ヤソガミの様子を伺うように恐る恐る近づいてきたフユヌキが、心配そうに話しかけた。
ヤソガミは振り返ってフユヌキを見ると、一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに表情を隠して足早に校舎に向かって歩き出した。
「俺は大丈夫だ」
「そう……きょうはごめんね」
フユヌキは申し訳なさそうにしながら、トボトボとヤソガミの後ろについて歩き出した。
ヤソガミはちらっと振り返ってフユヌキを見ると、すぐに前を向いて、また歩きだした。
「……大丈夫か?」
「えっ?」
「お前は大丈夫か? 俺に殴られたところは?」
照れ臭そうに前を向いたまま、ヤソガミは殴られたフユヌキを気遣った。
フユヌキは最初、何を聞かれているのか理解できなかったが、すぐにヤソガミが殴ってしまったことを気にしていることに気が付いて応えた。
「ああっ! もう血も止まっているし、こんなの大した怪我じゃないよ!」
「ふんっ! それじゃあ俺のパンチがしょぼいみたいじゃないか」
「いやっ! そういう意味じゃ……」
焦ってフユヌキが顔を上げると、ヤソガミが立ち止まって真面目な顔をしてジッと見ていた。
「ヤソガミくん?」
驚いたフユヌキが立ち止まって見返すと、ヤソガミは黙って頭を下げた。
「いきなりぶん殴ってすまなかった」
「ヤソガミくん」
「本当に申し訳なかった。ごめん」
ヤソガミは頭を下げたまま謝罪を続けた。
「わかった、わかったから頭をあげてよ」
「……俺を許してくれるのか?」
「うん、もうわかったよ。だから頭をあげて」
「ありがとう、フユヌキ」
フユヌキに許されたとヤソガミはニカッと笑顔を見せた。
そんな姿を見て、プライドが高くて偉そうだけど、こういうところが憎めないんだよ、とフユヌキは思っていた。
そしてふと思い出したようにヤソガミにこう言った。
「もう、自分を殴れって強要するのは止めてね」
「NoFuxxinWay! 頼まれたって2度と言うか!」
2人はお互い顔を見合わせて笑った。
「しかし、ナムチの奴、生意気に人を助けようとしやがって」
「でも、教官に逆らって1週間、寮のトイレ掃除の罰を受けたんだから、ざまあないね」
「寮のトイレ掃除か……」
ヤソガミは何かを思いついたようにニヤリと笑うと、楽しげにフユヌキにいった」
「せっかくきれいにしてくれんだ、せいぜい寮のトイレをしっかり使ってやろう」
「うん。そうだね。OBを出さないように、しっかりとね」
フユヌキもニヤニヤと笑うと、とても楽しいことが待っているかのように、ウキウキとしながらヤソガミの後ろについて校舎へ歩きだした。
翌朝、寮のトイレ掃除を命じられたナムチが、大きなあくびを嚙み殺しながら男子トイレの個室を開けると、そこには流していない大きなモノが便器に残されていた。
「BullShit!? やったらちゃんと流せよ~!!!」
トイレにナムチの絶叫が木霊するのを聞いて、ヤソガミとフユヌキが寮のベッドに寝ころんで大笑いしていた。
修正するにあたって各章の区切りも変更していきたいと思っています。
少しずつ直しいきますので、重複など読みにく部分が残っていたりするかと思いますが、ご了承下さい。2022年3月25日記