第1章 平穏
検査を終えたミイは、明日の朝に迎えが来るまで、ナムチやキマタと一緒に寮で過ごすことになった。
「キマタ、また一緒に寝るか?」
「えっ! お兄ちゃん、ナムチ兄ちゃんと一緒に寝たの?」
「バカっ!? ナムチ、余計なこと言うなよ!」
顔を赤くしたキマタは、照れ隠しにナムチに怒り出した。
「あはは! ごめん、ごめん」
ナムチは怒って叩こうとしてきたキマタを避けて笑った。
「ナムチ、食事はおばちゃんに材料を食堂の冷蔵庫に残してもらってるから、ベッドは空いてる部屋のを使って良いって」
ミイの車椅子を置いて戻ってきたスクナが、ナムチに声をかけた。
スクナはスタッフもほとんど避難して居なくなった寮で、食事やベッドの手配などナムチが気が付かない様々なことをフォローしていた。
「スクナ、いつもありがとな」
「気にするなよ。 ナムチの面倒みるのはもう慣れたよ」
そんな2人のやり取りをベッドに座って見ていたミイがクスクスと笑った。
「ミイ、何がおかしいんだ?」
楽しげに笑っているミイにナムチが尋ねた。
「なんかナムチ兄ちゃんとスクナ兄ちゃんって、パパとママみたいだなと思って」
「あぁーわかる! ナムチ兄ちゃんがパパでスクナ兄ちゃんがママでしょ」
聞いていたキマタが頷きながらミイに同意した。
目が覚めたミイとキマタにはスクナが男性であることは伝えていた。
一番驚いていたのは、ずっとスクナを女性だと思い込んでいたキマタだった。
「キマタ、だから僕は男だって言ったでしょ!」
「スクナが兄ちゃんだったのはちゃんとわかってるんだけど、やっぱりパパじゃなくてママなんだよなぁー」
「なっ!? だから僕は男だよ!」
「だからわかってるって」
珍しくムキになって否定してくるスクナを見て、キマタやミイは笑顔を見せていた。
「まあまあ母さん、落ち着きなさい」
「ちょっ! ナムチまで何を言ってるんだよ!』
「あははは! 冗談だよ」
キマタやミイも怒っているスクナを見て笑っていた。
「もうっ! 人を揶揄うのはやめてよ」
「ごめん、ごめん」
ナムチたちは明日の別れを前に、寮で自由に過ごすことを許されていた。
ナムチとスクナも明日の昼までは特別休暇が与えられていた。
「スクナ母さんに、もう一つ甘えても良いかな?」
ナムチも寮でゆっくりと過ごすつもりだったが、その前に一つやっておかなければならないことがあった。
「だから母さんはやめろって! なんだよ、もう」
「アハハ、ごめん。 ちょっとキマタとミイを頼むよ」
ナムチは笑いながら謝ると、スクナに軽い感じで頼んだ。
「ナムチ、どこか行くの?」
ミイが心配そうに聞いてきた。
ナムチは屈託なく笑うと応えた。
「うん、ちょっと相棒に会いに行ってくるよ」
キマタとミイはキョトンとしていたが、スクナはそれで意味がわかったようだった。
「ナムチ、わかった。 帰ってくるまでに食事の用意をしておくよ」
「あっ!? 知ってる! 帰ってきたら、ご飯にする? お風呂にする? それとも私? って聞くんでしょ!」
キマタがどこで覚えたのか、妙なことを言い出した。
「でも最後の、それとも私? って何なのかな?」
「さあ? それはお母さんのセリフだから、スクナ母さんに聞いてみなよ?」
ナムチはそう言うと、アハハと笑いながら部屋を出て行った。
「ちょっとナムチ! こっちに変なこと押し付けて行くなよ!」
部屋からはキマタとミイの「なんで? なんで?」とスクナに尋ねる声が聞こえてきた。
「フフッ……スクナ、宜しくな」
ナムチは部屋から聞こえてくる声を心地よく思って聞きながら寮を後にして、神衣の格納庫へ向かった。
御霊ハクトに逢うために。
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