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第1章 診察

 翌朝、すっかり眠りこけていたナムチとキマタは、やってきたスクナに起こされた。


「ナムチ、起きろ! キマタ!」


 呼びかけても起きない2人に業を煮やしたスクナが、無理やりかけ布団を引っぺがすと、ナムチとキマタは幸せそうに抱き合って寝ていた。


「いつまで寝ているつもりなのかな? もう9時を過ぎたよ」


 ようやく目を開けたナムチは、大きな欠伸をするとボサボサの頭を掻きながらスクナを見た。


「おはよう、スクナ」


 キマタも目をこすりながら起き上がったが、まだ眠いようだった。

 ナムチはそんなキマタを見て、自分の寝ぐせは放ったらかしたまま、跳ねているキマタの寝ぐせを手で直してやっていた。


 スクナは2人を見て、なんだか一晩で随分と仲良くなったなと思って見ていた。


 そのことが気になったが、今はそれよりも伝えなければならない大切なことがあった。


「医務室から連絡があったよ。 ミイの意識が戻ったって」


「えっ!?」


 キマタがベッドから飛び起きてスクナにしがみ付いた。


「ミイは、ミイは大丈夫なの?」


「ちょっと、落ち着いてキマタ。 意識は戻ったから詳しいことは来てから話すって」


「ナムチ、早く行こう!」


 キマタはまだベッドに腰かけているナムチの服を引っ張った。


「わかった、わかった」


 ナムチはキマタに急かされてベッドが出ると、「早く、早く」と言われながら着替えをすました。


 スクナはそんな2人を微笑ましく見ながら、連絡をしてきた医師にミイの容態について尋ねても、キマタが来てから話すと言って、詳しく教えてくれなかったことに一抹の不安を覚えていた。


 用意が終わると3人は直ぐに師団本部の医務室へと向かった。





「お兄ちゃん!」


 キマタが医務室の扉を勢いよく開けて飛び込むと、ベッドの上に起き上がって診察を受けていたミイが大きな声でキマタを呼んだ。


「ミイ!」


 キマタは医師や看護師を押しのける勢いでミイのところに駆けつけた。


「ちょっとお兄ちゃん、落ち着いて。 ミイは大丈夫だよ」


 ミイはキマタを見て安心したのか、目に涙をためていたが、笑顔でキマタに応えた。


「えへへ……ミイ、良かった」


 答えるキマタも笑顔で涙ぐんでいた。

 ナムチとスクナも、元気そうなミイと喜ぶキマタを見て笑顔を見せていた。


「感動の再会を邪魔して悪いんだけど、ちょっと良いかな?」


 キマタに気づかれないように、ナムチとスクナに声をかけてきた医師は、あごをしゃくって部屋の外に2人を連れて行った。


「先生、ミイを助けてくれてありがとう」


 ナムチは何の疑いも持たずに医師に近づくと、彼の手を握って満面の笑みでお礼を言った。


 そんなナムチに疲れた表所を見せた医師は、ナムチが握った手をゆっくりと外して言った。


「とりあえず命に別状はない、今のところはな」


「えっ?」


 キョトンと言葉の意味を理解していない様子のナムチの後ろからスクナが声を上げた。


「何かあるんですか?」


「あぁ、ミイの頭には硬膜下血腫ができていた。 それが脳を圧迫していて、下半身が麻痺して動かない状態だ」


「WhataFuck!? どういうことだよ?」


 ナムチが目を見張って医師に食ってかかった。


「しっ! ナムチ、声が大きい」


「あっ! ごめん……」


 そんなナムチをスクナが窘めた。

 幸いミイを見てテンションの上がっているキマタは、ナムチの声には気が付かなかったようだった。


「先生、説明をたのむ」


 少し落ち着きを取り戻したナムチが医師に説明を求めた。


「手術で血種を取り除く必要があるが、ここの設備ではそんな大手術はできない」


「どこならできるんだ?」


「ヤマト中央にある大病院だったら手術は可能かもしれないけど、難民の子どもを受け入れてはくれないだろう」


ナムチが尋ねると、医師は残念そうに首を振った。


「Fuck! じゃあ、もうミイの足は動かないってのかよ……」


 ナムチは笑顔で話しているキマタとミイを見た。


「ミイはそのことに気が付いているのか?」


 黙って2人を見ているナムチに代わって、スクナが医師に聞いた。


「さっき、検査のときに足に感覚があるかどうかを確認したけど、まだ、はっきりと伝えてはいない」


 医師の話を聞いたスクナは、ナムチに近づいて尋ねた。


「どうするんだい? ナムチからミイに伝える? 言い難いなら僕から……」


「俺が伝えるよ、家族だからな」


 スクナの言葉を遮ってナムチははっきりと言った。


 ナムチは覚悟を決めるようにゆっくりと笑顔で話しているキマタとミイに近づいていった。


「ミイ、元気になって良かったな」


 平静を装ったナムチが声をかけると、ミイは嬉しそうに笑顔をみせた。


「うん。お兄ちゃんに聞いたよ! ナムチが私たちを助けてくれたんだね」


「そうだぜ! あいつらをバーンってぶっ飛ばしてくれたんだ!」


 キマタが嬉しそうにナムチを自慢した。


 ナムチは「そうだな」と言いながら、キマタの頭をやさしく撫でた。


「ミイ、その、聞いて欲しいことがあるんだ。キマタも聞いてくれ」


 ナムチは真剣な表情でミイとキマタを見た。


「ナムチ、どうしたんだ?」


 キマタは普段見せないナムチの真剣な表情に不安を見せていた。


 ミイは何か気が付いているのか、黙ってナムチを見ていた。


「その、ミイの足のことなんだけど……なんて言うか、その……」


「あたしの足、動かないんだよね」


 言い難そうにしているナムチに向かって、ミイが困ったような笑顔で言った。


「ちょっ!? 足が動かないってどういうことだよ!」

 

驚いたキマタがミイに詰め寄った。


「お兄ちゃん、落ち着いて……そのままの意味だよ。 さっき先生に触られても分からなかったし、足を動かそうとしても全然動かないから……そうだと思ってたんだ」


「そんな……」


 ショックを受けているキマタに心配かけないように、ミイは努めて平然と話していた。

 しかし、ミイの手が小刻みに震えていることにナムチは気づいた。


「ミイ、無理しなくていいんだ。 辛いときは泣いたっていいだぞ」


 ナムチはミイにかけよると、肩に手を当ててやさしく言った。


「へへへ……私、無理なんてしてないって……」


 そう言って笑ってナムチを見たミイだったが、見る見るうちにその目には涙が浮かんでいった。


「ううぅ……ナムチ、私の足もう動かないのかな? うぅえぇぇーん!!」


 堰を切ったように泣き出したミイを、ナムチはしっかりと抱きしめて言った。


「大丈夫だ! 俺もキマタもいる! すぐに足が動くようにしてやるから!」


「そうだ! 兄ちゃんたちに任せておけ!」


 キマタもナムチと一緒にミイを抱きしめて言った。


「ナムチ、お兄ちゃん……」


 励まされたミイは、泣きながら2人を抱きしめ返した。


KNOCK KNOCK


「お取込み中に悪いんだけど、ちょっといいかしら?」


 ナムチたちが振り返ると、医務室の入り口にマーガレットが立っていた。


 最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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