第1章 家族
食事を終えた後、キマタはナムチの部屋で寝ることになった。
キマタはミイと同じ場所で寝たい訴えたが、医務室にはミイが眠るベッド以外に寝るところはなく、看護師から翌朝にまたくるように言われたのだった。
といっても部屋にはシングルベッドが一つしかないため、ナムチはベッドをキマタに明け渡して、自分は床に寝袋でも敷いて寝るつもりだった。
「ナムチ、一緒に寝ようよ」
ところがミイのことが心配で不安なのか、普段は生意気なキマタが、珍しくナムチに甘えてベッドで一緒に寝たいと言ってきた。
「なんだ、ひとりで寝るのが怖いのか?」
「そんなことないやい! 床じゃナムチが可哀想だから言ってやったんだよ」
キマタは顔を真っ赤にして怒って言うと、布団をかぶって背を向けた。
「そうなのか? じゃあ遠慮なく一緒に寝させてもらうかな」
ナムチは笑いながらキマタが丸くなって包まっているベッドにもぐりこんだ。
まだ子どものキマタとはいえ、シングルベッドに2人で寝るのは少し狭かった。
しかし、窮屈な布団の中に潜り込んだ2人は、顔を見合わせて笑った。
「ねえ、ナムチはどうして僕たちを助けてくれたの?」
「うーん……どうしてかな……」
ナムチは天井を見つめながら、ちょっと考えて答えた。
「俺は記憶がないから、親とか兄弟っていうのはよくわからないんだ」
「えっ!?」
記憶がないことを知ってキマタが驚いていたが、説明するのが面倒だったナムチは敢えて無視して話を続けた。
「キマタたちが襲われていた時、みんな必死に誰かを守ろうとしていて、俺もこんな風に誰かを必死で守ってみたいと思ったのかもしれない……結局、キマタのパパとママは守れなかったからごめんだけど」
「そんなことないよ! パパとママが死んじゃったのは悲しいけど、ミイと2人でなんとか生き残れたのはナムチのお陰だし……」
キマタは申し訳なさそうに謝るナムチの横顔を真剣な表情でジッと見つめた。
「なぁ、ナムチには家族はいないの?」
「どこかにいるのかもしれないけど、覚えてないからな」
ナムチも近づいてくるキマタの顔を見返した。
「….…じゃあナムチ、僕たちのお兄ちゃんになってよ!」
「Whatz?」
「僕たちにもナムチにも家族がいないんだから、一緒になって家族になればいいじゃん!」
キマタはナムチの顔に触れんばかりに顔を近づけてそう言った。
ナムチはキマタの勢いに一瞬驚いた表情を見せたが、フッと笑うと自分のおでこをキマタのおでこにつけた。
「それは嘘の家族かもしれないけど、嘘でも悪くないよな! 家族だって気持ちが本物だったら」
「そうだよ! 本当になろうと思えばなれるよ!」
2人はベッドの中で、お互いにおでこをつけたまま笑いあった。
その後も2人はしばらく話をしていたが、ナムチがくだらないバカ話をしていると、いつのまにかキマタは眠りに落ちていた。
「おやすみ、キマタ」
ナムチも大きな欠伸をすると ゆっくりと眠りに落ちていった。
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