第1章 決着?
マーガレットとナムチ・スクナの戦いが遂に決着?
「俺たちのターンだ!」
「僕たちのターンだ!」
威勢よく啖呵を切ったナムチとスクナだったが、一方は神光の暴走で疲労困憊、もう一方は武器を失った上、これまでの戦闘で満身創痍とボロボロの状態だった。
「ハハっ! カッコいいじゃないか!」
「……ウケる」
マーガレットとマヒトツネは、マトモに戦える状態では無いにも関わらず、格好だけはつけているようなナムチとスクナを馬鹿にしたように言った。
「最初にも言ったけど、アタシは現実を理解出来ない口だけのクソガキは嫌いなんだ」
「へぇ〜俺たちも偉そうで実力もないクソババァは大嫌いなんだ」
「そりゃあ、気が合うねぇ〜」
マーガレットはクルクルと回していた鉄鎚をビタリとナムチの鼻面の正面で止めた。
「ブチ殺してやんよ! DamnBoys!」
マーガレットは飛び出すと鉄鎚を持ったまま、くるりと右に回転すると遠心力を利用して、ナムチの右側頭部を目掛けて攻撃を仕掛けた。
「オラァッ!? 死ねや!」
「嫌なこった! OldBitch!」
ナムチは頭を下げて鉄鎚を交わすと、マーガレットの前に出て神光を纏った右拳を叩き込もうとした。
「舐めてんのか? そんな簡単に間合いに入れる訳ないだろう」
マーガレットは鉄鎚を振り回した勢いを利用して、そのまま踊りのようにくるりと回転すると、前に出てきたナムチに再び振り下ろそうとした。
「舐めてんのはあなたでしょう! マーガレット!!!」
ナムチの背後から飛び出してきたスクナが、正に振り下ろされる鉄鎚に回し蹴りをお見舞いした。
「セイヤッ!!」
BahhGooohhhhh!
前に加速しながら飛び上がって回し蹴りを決めたスクナは、回転して加重の乗った鉄鎚の動きを一瞬止めることに成功した。
しかし、完全に力を相殺することは出来ずに、反動で吹き飛ばされた。
「ナムチ、今だ!!!」
吹っ飛ぶ神衣の中でスクナは叫んだ。
「あいよ!」
前に出てきていたナムチは神光を纏ったままの右拳で、スクナの攻撃で一瞬動きの止まった、マーガレットが持つ鉄鎚の柄を思いっ切りぶん殴った。
「おりゃあッ!!! ScrewYo!」
GaTTssuuuunnnnnn!?
「あたしの鉄鎚の柄を狙ってきた!? 柄も玉鋼で出来ているんだ、そう簡単には折れはしないよ!」
マーガレットは柄を両手で持って、ナムチを押し返そうとした。
「俺の拳に壊せぬ物無し! サキミタマ!!!」
ナムチは祝詞を唱えて神光の出力を上げて、押し返してくるマーガレットに対抗した。
鉄鎚の柄はギシギシと音を立てていた。
「……ナムチの神光の熱で柄が持たない」
マヒトツネが操縦席のマーガレットに警告を与えた。
「……こちらも神光を」
「あぁ、了解だ!」
マーガレットはマヒトツネからの指示通りに、鉄鎚に神光を纏わせるため祝詞を唱えた。
「アマツマーラ!!!」
鉄鎚が神光を帯びて光輝き、神光同士の反発する力がナムチの拳を押し返した。
「Shit! 左拳にも神光を……」
「ナムチ、ダメよ! 今、気を抜いたらあっという間に押し切られるわ」
力が拮抗した状態で、ナムチは新たに神光を発動させるのは難しかった。
「クッ……このままじゃ持たない」
ナムチが限界を迎えかけたその時!
「ナムチ!!!」
加速して飛び込んできたスクナが、刺突剣の一撃を鉄鎚の柄に打ち込んだ。
「きなんを はらひのぞきて かしこみ まをす」
スクナは鉄鎚に吹き飛ばされたとき、刺突剣を回収できる位置を、カガミノに演算させていた。
飛ばされた先で素早く刺突剣を回収すると、発動させた神光を剣先に集中させ、全力一撃をナムチの右拳と同じ1点に激突させた。
「うおぉぉぉぉぉ〜っ!!!」
「はあぁぁぁぁぁーっ!!!」
ナムチとスクナが気合を込めて鉄鎚の柄に攻撃を集中させた。
「Fuck!? 押し返される? 舐めるな!」
マーガレットは力任せにナムチとスクナを押し返そうとした。
「……マーガレット、ダメ! それじゃあ柄がもたない!!!」
マヒトツネが警告を発した、その時。
BaGyaaaaahhhhhhnnnnn!?
鉄鎚の柄が砕け散って、鉄鎚のヘッド部分がくるくると宙に舞って飛んでいった。
「FuckinDidit! ハハッ! やったぜぇ!!!」
ナムチはマーガレットの鉄鎚の破壊したことで、意気揚々と叫んだ。
「ナムチ、まだ戦闘は終わっていないよ!」
無邪気に喜びナムチを尻目に、スクナは刺突剣をマーガレットに向けて、動くを警戒していた。
「おっと、そうか! ごめん、スクナ」
ナムチも気を取り直してマーガレットに相対して身構えた。
「やってくれるじゃないか……YoSonobaBitch!!!」
激昂したマーガレットが、手に持っていた圧し折られた鉄鎚の柄を放り投げながら叫んだ。
「……マーガレット、ComeDown! 熱くなり過ぎ」
マヒトツネが激昂しているマーガレットを落ち着かせようとしていた。
「クッ!! あたしは冷静だよ! 鉄鎚が無くったってやれんだろ?」
「……本意気?」
「ここからは真剣の殴り合いだ!!!」
「……了解」
マーガレットの神衣の腕の装甲が一旦外れると、両手の拳を覆うように移動した。
マーガレットの神衣の拳を覆う装甲は倍ほどの大きさになり、両手が巨大なハンマーのようになっていた。
「まだ、あんな装備があったの?」
ハクトが驚きの声を上げた。
哨戒ポイント①に到着する直前、錬金術師ビスマルクの神衣キュクロープスのことを思い出したハクトは、その武器が巨大な鉄鎚だったことをナムチたちに伝えていた。
ナムチたちの当初の作戦では、スクナが早さを生かして一撃離脱を繰り返しつつ、隙をついてナムチが鉄鎚の柄を破壊するというものだった。
ナムチが不用意に突っ込んだせいで、作戦自体は計画通りに行かなかったが、当初の目的だった鉄鎚を破壊することに成功した。
「ハクト、次はどうするんだった?」
「えっ!? ……知らないわよ」
「はぁっ!?」
またナムチとハクトの言い争いが始まりそうな空気を読んで、スクナが通信を入れてきた。
「ナムチ、当初の作戦では、マーガレットの鉄鎚を破壊すれば、それで訓練が終わると思ってたでしょう」
「そうだっけ?」
既に目的とされていた、ナムチの神光を覚醒させることには成功していたし、通常の訓練なら、相手の武器まで破壊すれば終わりのはずだった。
しかし、訓練を監督するはずのマーガレットが、訓練であることを忘れて、完全に戦闘モードに入ってしまっていた。
「お前らもこれで終わりなんて思ってねぇよな?」
「もちろ……」
「ナムチ、ShutaFuckup!」
売り言葉に買い言葉で戦闘を継続しようとしたナムチを、ハクトが通信を遮断して黙らせた。
「マーガレット師団長、もうすでにこの訓練には意味が無いのでは?」
代わってスクナがマーガレットとの交渉を始めた。
「そうかもね? でもね、ひとりの神衣主として、ここまで良いようにやられちゃったら、このままでは引けないね」
マーガレットは師団長としてでは無く、ひとりの神衣主、戦士として、大切な武器まで破壊されてこのままでは終われないと言う。
「……そうですか……やるしかないんですね」
そこまで言われてはスクナも逃げるわけにはいかなくなった。
「ここからは言葉は不用だよ」
マーガレットはこれ以上話すことはないと、通信を切断した。
「ナムチ、もうやるしかない!」
「俺はいつでもやれるぜ!」
マーガレットとナムチ・スクナの第3ラウンドの火蓋が落とされた。
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