第1章 覚醒
全身から炎のように神光を噴き出しながら、力が抜けたようにダラリとして動かなかったナムチの神衣に変化が起きた。
両腕を大きく開いて、雄叫びを上げるかのように頭を天に向けて身震いした。
すると全身から噴き上がって神光が一瞬輝いた後、両手の光だけを残して消え去った。
「ナムチ!! 気がついたのか?」
スクナはマーガレットの攻撃を掻い潜って、ナムチの側までやってきて声をかけた。
「有線通信を繋ぐかしら」
「頼む、カガミノ」
神衣同士を有線で接続して通信を繋いだ。
「……繋がったかしら」
「ナムチ、聞こえ……」
「誰がおばちゃんじゃゴルァ!?」
「えぇっ!? 何のことだよ?」
通信機からはハクトの怒声が轟き、言い返すナムチの声が聞こえてきた。
「えっ? ちょっとナムチもハクトも何をやってるの!?」
スクナが思わず聞き返すと、ハクトの怒りの矛先はそちらにも向いてきた。
「あぁん!? スクナ、お前も人をババァ扱いしてんのかぁ?」
「いや、してないし! ナムチ、何がどうなってんの?」
「知らねえよ! 気がついたらいきなりハクトがキレてて、何がなんだか」
「ハハハハクト様……?」
キレて怒り狂うハクトに、カガミノもどう声をかけていいか分からず怯えていた。
「どいつもこいつもアタシを年寄り扱いしやがって!? FuckinBullShit!!」
キレて叫ぶハクトを、ナムチはどうすることも出来ずに見ていた。
スクナは何としなければとナムチの神衣を見ると、その後ろに大きな影が迫っていた。
「ナムチ、下がれ!」
スクナはナムチの神衣を押すと、後ろに迫っていたマーガレットの前に出た。
「ようやくお目覚めして楽しそうなところなんだけど、アタシをなめてんのか?」
マーガレットは振りかぶった鉄鎚をスクナに打ち下ろした。
DonkGAaaaahhhh!!!
「ぐぅあぁぁーっ!?」
「きゃあぁぁーっ!!
スクナの神衣は、マーガレットの鉄鎚に弾き飛ばされ地面に転がった。
「スクナ!!!」
スクナに押されてマーガレットの攻撃を避けたナムチが振り返って見ると、右肩と装甲が剥がれ落ちた神衣が倒れていた。
「スクナ! 大丈夫か!?」
「……クッ……なんとか……ね」
「スクナ!」
操縦席で痛みに顔を歪めながら、スクナは神衣を立ち上がらせた。
「右上腕、及び右肩の装甲が破損したかしら」
「カガミノは大丈夫?」
「んっ……ちょっと痛いかしら」
「……ごめん」
乗り込むことで感覚を共有し、場合によっては痛覚接続を切断することもできる神衣主とことなり、神衣そのものである御霊は、傷付けば痛みをそのまま感じることになる。
「これ以上はやらせない」
「んっ」
「まずは刺突剣を取り戻そう」
スクナは気合を入れ直してマーガレットに対峙した。
「ナムチ、いくよ!」
「スクナ、ごめん」
「……ごめんなさい」
さすがにスクナが攻撃を受けて、キレていたハクトも我に返ったようだった。
「Thanksスクナ。 ここからは俺も一緒に戦うよ」
「そうしてもらえると助かるかしら」
スクナに変わってカガミノが答えた。
平気な顔をしていたが、カガミノと同じように、スクナも痛みに耐えていることに気がついていた。
「カガミノ……?」
「ふんっ! さっさと終わらせるかしら!」
スクナは操縦席で痛みに耐えながら笑顔を見せた。
「そろそろ良いかしら? Peewees」
「……待ってあげて優しい」
マヒトツネか小さな声でマーガレットを揶揄った。
「待たせたな、マーガレット」
「師団長が抜けてるわよ。 DamnBoy」
マーガレットは、神衣で鉄鎚をブンブンと振り回しながら、ナムチに余裕の表情で言い返した。
「その余裕を直ぐに後悔することになりますよ」
「ハハッ! 言うねぇ〜FuckinBigMouth!」
スクナの挑発にマーガレットの瞳がギラリと鋭く光った。
「ここからは僕の……」
「俺の……」
「「俺たちのターンだ!」」
ナムチとスクナの反撃が始まる。
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