第1章 紙一重
「さて、これ以上妙な邪魔が入る前に決着をつけようか」
コトシロとの通信を終えたマーガレットは、気を取り直して動きを止めたナムチに相対していた。
「ナムチには指一本触れさせませんよ」
マーガレットの目の前にはスクナが立ち塞がった。
「刺突剣もない、満身創痍の神衣であたしと遣り合おうってのかい?」
スクナの神衣は、ナムチとの戦闘ですでにボロボロになっていた。
「例え殺られると分かっていても、死んでも引けないときがある」
「ハハッ! じゃあ死んでも苦情は受け付けないよ」
マーガレットは鉄鎚を振りかぶってスクナに襲いかかった。
「スクナ、一旦下がるかしら!」
巨大な鉄鎚を相手に正面から戦うの不利だと、カガミノは後退するように伝えた。
「ダメだ! ここから動くわけにはいかない」
スクナの後ろには、意識を失い動けなくなったナムチの神衣が立っていた。
「はぁ〜また無茶を言うかしら」
「ごめん、カガミノ」
「……他に言うことがあるんじゃないかしら?」
「……カガミノ、僕に力を貸して」
「フフッ……わかったかしら」
スクナは鉄鎚を振り下ろそうとするマーガレットに向かって行った。
「なめるな!? Don'tFuckwithMe!」
マーガレットは向かってきたスクナに鉄鎚を振り下ろそうとした。
スクナはさらに加速して前に出ると、振り下ろされる直前の鉄鎚に手をつくと、跳び箱のように飛び乗った。
「GoFuckYourself!」
スクナはそのまま鉄鎚の上で、手を下にして逆立ち状態から回転して、マーガレットの横っ面を蹴り飛ばした。
「Shit! ちょこまかと鬱陶しい」
スクナはスピードを生かして、どうしても大振りになる鉄鎚の攻撃を紙一重で躱しながら、マーガレットに攻撃をし続けた。
しかし……
「このままじゃ、ジリ貧かしら」
「こちらは一撃でも貰ったら終わりだけど、あちらは何発当てられても大して効いてないしね」
一瞬でも気を抜けば鉄鎚に叩き潰される、という緊張感の中で戦い続けてきたスクナだったが、そろそろ限界が近づいていた。
「ナムチ! 目を覚まして! 神光を抑えて……」
スクナたちが戦っているとき、ハクトは必死にナムチに語りかけていた。
無意識でも放出し続ける神光は未だに収まる気配は無かった。
「ナムチ! 起きて!」
「うぅ……」
現実世界だったら叩き起こしてやりたいところだったが、神衣の中ではそれも難しかった。
「このままじゃ埒が開かないわね……」
神光をコントロールするためには、ナムチの混乱している感情を抑える必要があった。
「こうなったら……」
ハクトはナムチを起こすため、最後の手段に出ることにした。
「ナムチ、朝よ! さっさと起きなさい!」
「うぅ〜ん…」
「いつまでも寝てるんだい? 起きないと朝ご飯無しだよ!!!」
「えぇっ!? おばちゃん、そりゃ無いよ」
ナムチはかなり焦った様子ですぐに目を覚ました。
食い意地の張ったナムチには、ご飯抜きが一番ショックを与えられると思ったハクトの考えが当たった。
「あれ? ここは神衣? 俺は何を……」
目を覚ましたナムチはまだ混乱しているようだった。
「ハクト? 一体なにが……」
「……誰が……」
「えっ?」
「誰がおばちゃんだ、ModaFucker!」
「えぇーっ!? 何のことぉー!?」
ナムチは訳が分からないまま、おばちゃん呼ばわりされてキレたハクトに怒鳴られた。
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