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第1章 ヤマト建国の歴史

 突然、死体が黄泉がえり、人々を襲い始めたのは約50年前だった。

 動き出した死体は生きている人間や動物を襲うだけでなく、死体同士でも共食いを繰り返した。

 黄泉がえりの発生当時、火葬が一般的だった東洋の国・日本では、土葬が一般的なアメリカやヨーロッパなどと比べて被害が少なかった。灰は黄泉がえっても灰だったからだ。

 そのため日本では黄泉がえりをヨモツと名付けて、様々な研究を行うことができたという。

 しかし、日本での研究でわかったことは、


①ヨモツと意思疎通を図ることはできない

②ヨモツは他のヨモツや生物を捕食することで能力を取り込む

③ヨモツによっては巨大化することもある


という程度のことだけだった。

 ヨモツがどうして発生したのか、そしてもっとも人々が知りたかった、どうやって殺すのか、ということは研究しても分からなかった。

 ヨモツは心臓潰そうが、頭を切り離そうが、バラバラに解体しようが、活動を停止することは無かった。

 そして火葬されて灰になった死体からも、長い時間をかけて、灰同士が結合した醜悪なヨモツとなって黄泉がえった。


 ヨモツが世界中に広がるのに、そう長い時間はかからなかった。

 世界各地で、人々はヨモツが何なのかもわからないまま、黄泉がえった死なない化け物・ヨモツと戦うことになった。


 「世界の警察」を名乗る西の大国は、核兵器でヨモツを一層しようとした。

 ヨモツは凄まじい核の炎に焼かれ動きを停止させた。

たが、活動を停止したのは一時だけだった。

ヨモツは核の炎で焼けただれた体を結合させると、放射能を纏った巨大な化け物と化し、人々に襲い掛かった。

 いまでは西の大陸に生きた人間が住める場所はないという……

 中東のある国は、神に祈りを捧げ死者を「あるべき」ところに帰そうと試みた。

 しかし、祈りをささげた国民は全てヨモツに食われ、その国は「死者の国」となったという……

 世界各国で、科学や宗教など、考えられるありとあらゆる手段を用いて、黄泉がえった死者・ヨモツを滅ぼそうとした。

 しかしすでに死んでいる「ヨモツ」を再び「殺す」ことはできなかった。

 たった数年で世界はヨモツに蹂躙され、かろうじて生き残った人々はヨモツに怯え、見つからないように息をひそめて、恐怖の中、隠れて暮らしていた。

 そんな中、かつてヨモツを研究しながら、何も解明できなかった日本で、ヨモツを滅ぼす神の光・神光テラが発見された。


 神光テラは日本に古くから残る血筋を伝るスメラギ家の一族が、細々と代々祀っていた古き神・オオヒルメの光といわれ、その光を浴びせると、ヨモツは黒く煤化して滅んでいった。

 スメラギ家はこれを神光テラによる浄化と呼んだ。

 しかし神光テラは、スメラギ家が管理する場所から持ち出すことも、他の場所で発生させることもできなかったため、生き残った数少ない人類は、唯一ヨモツを浄化できる神光テラがある日本に救いを求めて集まった。


 スメラギ家の当主・スメラギ・ホノ・ニニギは、西洋の錬金術師アルベルトゥス・フォン・ビスマルクら集まった人々の叡智を結集し、スメラギ家が管理する土地を神光テラで永劫的に照らし、ヨモツを排除するための塔を建造すつことを計画した。

 そして建設の間、ヨモツから人々を守るために、ヨモツと戦うための人型兵器・神衣カムイを創り出した。

 スメラギ家の持っていた神光テラの知識と、錬金術師ビスクマルクが西洋から伝えられた技術、さらに現代科学の粋をを集めてつくられた神衣カムイには、御霊ミタマと呼ばれる人工知能が搭載されていた。

 それぞれ神衣カムイには、必ず御霊ミタマが搭載されており、御霊(ミタマ)と契約することで神衣カムイの操縦者・神衣主カムイムチとなった。

 神衣カムイは選ばれた神衣主カムイムチのみが操縦することができ、さらに搭載されている八咫鏡ヤタノカガミから神光テラを照射することでヨモツを浄化することができた。

 ホノ・ニニギが搭乗する真っ白に輝く天神衣テンカムイ御霊ミタマヒルメたちの活躍で、スメラギ家の管理する土地からヨモツを駆逐しつづけ、多大な犠牲と2年という月日を費やして神光テラで大地を照らし、ヨモツの侵入を拒む、人間たちの安住の地が生まれたのは、およそ20年前だった。

 その頃、塔の周りに集まった生き残った人類はは5000人にも満たなかった。

 スメラギ家の当主となっていたホノ・ニニギは、漸く訪れた平和を維持し、生き残った人類を守るため、オオヒルメの塔を中心とした国家ヤマトを建国、初代の帝となった。


 ヤマトの中心にそびえるオオヒルメの塔からは、ヨモツを浄化する神光テラが降り注ぎ、その光が届く半径2キロ圏内は、世界で唯一の人間がヨモツに怯えず安心して暮らせる国となった。。


 帝となったスメラギ・ホノ・ニニギは、帝を補佐し国の運営を行う神祇伯カンヅカサノカミ・ナカトミ氏と、スメラギ一族の直系とされる御巫ミカンナギの三家・カミムス氏、ミナカヌ氏、タカギムス氏、ヨモツから人々を守るための軍隊を統べるタケ・ミカヅチ氏らとともに、オオヒルメの塔で暮らしてヤマトを支配した。


 しかし、その神光テラが届く範囲を一歩でも出れば、そこには無差別に人を襲うヨモツが跋扈する危険な世界となっていた

 そのためヨモツから逃げて世界各地やってくる人々の数は日に日に増え続け、だった半径2キロ圏内の国土では、人々を受け入れられなくなったため、新たにヤマトの四方に、ヤマシロ・オウミ・イズモ・カワチの4つのエリアをつくり、世界各地から逃げてきた人々はそこに暮らすこととなった。

 オオヒルメの塔から離れれば神光テラは光は弱まり、比例して浄化の力も弱くなっていくため、人々はなるべく塔の近くに暮らすことを望んだが、限りある土地では全てを受け入れることはできなかった。

 そのため、能力や血筋などによって人々を選別する入国審査が行われていた。

 このことが、建国当時からヤマトで暮らしていた人たちの貴族化と、それ以外のエリアで生活するの人たちとの差別を生み出すことに繋がった。

 建国からたった20年で、ヤマトには中央に住む人たちとそれ以外のエリアに住む人たちの間で差別と格差が広がっていった。

その一方で周辺エリアも含めたヤマト国内にヨモツが現れることはこれまでに一度もなく、平和な日々が続いた。

そのため若い世代、特に直接ヨモツに襲われた経験のない若者たちからは、ヨモツに対する恐怖も薄らいでいた。

 しかし、その安寧とした平和は間もなく破られることになる。


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