襲撃
「そういえば最近、魔王幹部がこの辺りの国境付近に出没していると言う噂を耳にしましたが、何か知っていますか?」
「いや、初耳だ。まぁ興味ないからな。そんなことは」
ゼータは楽観そうにしているが、クルルはというと・・・。
「そんなことはあります!一大事ですよ。いいですか・・・!ーーー」
クルルの長い説教が始まった。
10分後。
「~ということなのでしっかりと危機感を持ってください!」
クルルはハァハァと息を立てて疲れている。
「とにかく、戦場は近くではありませんが、ここも魔王の領地に近いことは変わりません。なのでいつ魔王軍に攻められてもおかしくないので常に準備をしておいてくださいね」
「大丈夫。俺にその必要はない」
ゼータは机に肘を付き拳で顔を支えて楽観的に言うが、その雰囲気は堂々としていて説得力が何故か感じられた。
カーーーンカンカンカンカンカンカーーーン!
甲高いベルの音が村中に響く。
「こいつは確か非常用の合図だったかな」
「それってつまり」
「何かあったんだろうな」
そして走る誰かの音。焦っているのか、音が心なしか拙い。
それもそのはず。
「ま、魔王軍だ!!魔王軍が攻めてきたぁ!!」
男が叫ぶ。
それによって男の言葉を聞いて村人は慌て始める。
恐怖に怯える者。一目散に我先にと逃げ急ぐ者。混乱して動けなくなる者。
それぞれ一様になっていく。
「姫さん、どうすんの?」
外に出ていた二人はこの状況に冷静でいた。
「もちろん戦いますよ。この国の王女として、勇者パーティーの賢者として!」
しかしクルルの手は震えている。
まぁ頑張りな。
「じゃあ、俺は安全なところに行くわ」
ゼータは手を軽くあげて去っていく。