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16年後に再び

「匠…」


初めて匠を知り、彼を好きになった教室で、またこうして匠に再会できた。

お互い見つめ合ったままだ。


あっ、髪が黒くなってる。背も伸びてるし、ますます格好良くなってる。

何を話せば良いのか。

会いたいと思っていたのに、会ったら言葉が出てこない。

でも何か言わなければ。ちゃんとさよならをしなければ、私はまともな恋愛がこれからも出来ない。私を縛り付けてる匠を、匠自身で消して欲しい。


長かった恋を終わりにしなければ。



「ウソだろ」


夢にまで見たあずさがドアの所に立って、俺を見つめている。

綺麗になり、大人の女性になった彼女が、俺の手の届く所にいる。今まで知ってきた女性では味わえなかった、温かい気持ちとギュッと捕まれる気持ちが混在する。


今日、ここで長かった恋が終わる。



言葉を発したのは私からだ

「久しぶり。懐かしいねこの教室。私、今から6年も見に行こうと思ってるの。匠は何してるの?」


「ああ、懐かしいな。ここにいたらさ、いろんな奴に会ったよ。ますます懐かしくなってさ、昔を色々思い出したわ」


「へー、そうなんだ。私は今来たから誰にも会わなかっなぁ。でも匠に会えてよかった。

懐かしい小学校に来たのに、同級生に会えないなんて寂しいもんね」


言ってから後悔する。匠はただの同級生じゃないのに。

そんな後悔を胸に秘めている事も知らず匠は


「そうだな。俺もあずさに会えてよかったよ。

まぁ他の同級生とは違うけどな。あずさは」


「…話て良いかな?長い話になるけど」


と言って、今までの事をかいつまんで話してくれた。

私は途中から涙が流れた。止まらなかった。


匠がずっと私を思ってくれていた。

私も言葉にして伝えなければ。また同じ事を繰り返す事になってしまう。


「次は私の話を聞いてくれる?」


私も気持ちを全て匠にぶつけた。

匠は目を大きく見開いて行く。


「信じられない。マジかよ…」


どちらからともなく歩み寄り、出会ってから初めて唇を合わせた。

私は初めてで躊躇うばかりだ。


「あの…どうしたらいいか分からなくて…だって…初めてだから…」


「うれしい。あずさの初恋もキスも、全部俺がもらうんだな。

でもごめん。俺は初めてじゃない。本当にごめん。荒れてた時期があるから…あー、言い訳だよな!!本当にごめん」


「ううん、いいの。だって、匠の初恋は私でしょ?だから良いよ。許してあげる」


そしてぎゅーっと抱きしめあった。こんな幸せがあって良いのだろうか?16年も回り道をしてしまった私たち。もう絶対に手を離さない。



あの日から1年後、私はウエディングドレスを着ている。


匠が挨拶に来てくれた日、母は

「彼氏を連れてきた事もないし、この子は何を考えているのか分からなかったのよ。

匠くんの事がずっと忘れられなかったのねー。

初恋を実らせるなんてすごいじゃない!

しかも匠くんがこんなイケメンになってるなんて」

と終始ニコニコしていた。


一方の父は、肩を壊したのが原因なのは理解するが、荒れていた時期がある事が引っかかるみたいだった。


「必ずあずささんを幸せにします。16年かけてやっと手に入れたんです。絶対に手放しません」


と宣言してくれた。

お父さんも本当は賛成しているのよ。と母がこっそり耳打ちしてくれた。母には全てお見通しなのだ。


匠のご両親は、匠が真面目になったのは私のおかげだと、大歓迎してくれた。


両家の顔合わせも、元々の知り合いだった事もあり、和やかに済まされた。その席で、

「式は早く上げちゃいなさい!」

「そうよねー。なんと言っても16年なんだから」

とニヤニヤと母たちにされて、恥ずかしかったけど背中を押してくれてありがたかった。

母は強い。父たちは圧倒されるばかりだった。


式場の空いてる日の1番早い日を抑え、忙しいながらも充実した日々が過ぎ、結婚式当日になっている。

新婦控え室でウエディングドレスを着て時間が来るのを待っている時に、匠が入ってきた。


「あずさ…やっと、やっとあずさが手に入った。

本当に長い長い回り道をしたな。

これからは絶対に離さない。だから離れないでくれ。

もうあずさがいない生活なんて考えられないから」


「うん、私も同じ気持ち。

いつも匠が心の奥底にいたの。追い出したくても無理だったの。

でも匠がずーっと心にいてもいいんだと思うから幸せ。

嫌がってもそばにいるからね!」


どちらともなく唇を合わせる。

これからは2人で幸せになろうね。もう離れるのはいやだから…



END

お読みいただきありがとうございました。

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