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初恋にしばられて

初恋を実らせるお話を書いて見たくて。

焦ったい部分もあると思います。


すこしでも共感できる部分があると嬉しいです。

また夢を見た。

小学生の頃の夢。そう初恋の夢。懐かしい、甘酸っぱい夢。


篠原あずさ 27歳。

今まで何人かの男性とデートはした。でも付き合った事はない。初恋の呪縛から逃れられないから。


匠と出会ったのは小学校5年生の時。11歳だ。

長谷川匠。スポーツマンの男の子。動物に例えるなら猿。

匠と初めて同じクラスになったのが、小学校5年生の時だった。

走るのが速くてスポーツマンのくせに、泳ぐ事だけは苦手だった匠。


私はそんな匠が好きになり、匠もまた私を好きだと言ってくれた。

でも所詮は小学生の両想い。可愛いものだ。


そんな匠が1番好きだったのが野球だった。入っていた少年野球チームが、毎週土日に我が家の前にある公園で野球の練習をしていた。遊ぶふりをして何回も見に行ってたっけ。


いつの日だったか、

「あのさぁ、見に来るのやめてくれない?あずさがいるとさ、どうしても気になってエラーが多くなるんだよ。

うわー、格好悪いな」

と言われ、見にいけなくなってしまった。

今考えたら、ませた小学生だ。


そんな匠と私は

「あずさ、絶対に甲子園に連れて行ってやるからな!違う学校に行っても、必ず応援に来いよ」

そう約束をした。今ではいつ約束したのか、なんのタイミングで約束したのか覚えていないけれど。



私は両親の希望で女子校を受験した。そして合格して、匠とは別の中学へ進学することになった。

でも私には匠と同じマンションに住んでいる、美希と言う友達がいる。たまに美希が匠の近況を教えてくれた。


中学の3年間は、私も新しい環境になり楽しかった事もあって、匠が何をしているのかも気にしていなかった。

高校に進学した冬、久しぶりに美希に会うまでは。


「匠さ、野球が強い高校へ行って、今寮生活してるんだよ。あずさを甲子園に連れて行くって約束したからって言ってたけどさ、そんな約束したの?」


すっかり忘れていた約束を匠が覚えて、叶えてくれようとしてる。匠に会いたかった。一目でいいから会いたかった。

美希に伝えると

「分かった。休みの日にさ、たまにマンションに帰ってくるみたいだし聞いてみるよ。おばさんに聞いてもいいしさ。また連絡するね」

と言ってくれる。


そして高校1年のバレンタインデー、美希に付き合ってもらい、電車に揺られて匠の高校へ行った。

寮生活だし、部活をしてるから会えないのは分かっていたけど、私との約束を覚えて、甲子園を目指してくれてる匠を側に感じたくて。

その夜、電話が掛かってきた。


「匠です。久しぶり。今日は…その…チョコありがとうな。分からないように寮母さんに渡してくれてたみたいで、助かったし、嬉しかった。なかなか休みないしさ、会えないけど、夏の甲子園に向けて頑張ってるから」


「電話ありがとう。無理しないでね。甲子園に応援行けるのたのしみにしてる」


それだけ言うのが精一杯だった。

今の匠がどんな顔でどんな身長なのか知らない。だって会ってないから。でも私にとっての匠は大好きな人のままだ。


それから美希とも疎遠になった。


それから高校を卒業するまで、甲子園の県大会の結果は必ずチェックした。甲子園に行く事はなかったし、メンバーに匠の名前を見つける事も出来なかった。

夢は夢。夢を叶えるために頑張るけど、叶えられる人は一握り。私なんかより、匠がどれだけ悔しがっているか。

でも考えないようにして過ごしていた。



そして迎えた成人式。

私は新しい着物を作ってもらい、成人式が行われる会場へ1人できた。中学から地元の学校を離れた私は、約束をしてまで一緒に行く友達がいなかった。会場に行けば誰かに会えるだろうと思っていたのもある。


「あっ、匠きてるよ」


と女の子の声が聞こえて、匠を探す。

そこには金色に髪を染めている、私が知らない匠がいた。

一瞬目が合ったと思う。違ったのかもしれない。

もう私の知ってる匠じゃないんだ。



成人式から数年が経ち、突然美希から電話が掛かってきた。


「あずさってさ、もしかしてまだ匠の事すきだったりする?匠さ、高校の時に肩壊したんだよね。それで野球が出来なくなって荒れたらしくてさ」と、私も最近知ったのと話してくれる。


「知らなかった。と言うより、もう何年も会ってないから知るはずないよね。そっか、怪我しちゃったんだ」


涙が溢れてくる。肩を壊して大好きだった野球が出来なくなったからって荒れるなんて。でもそれ程までに絶望したんだなと思うと、涙が止まらなかった。

美希の話は続く


「でね、この間車を運転中にあずさを見たんだって。あずさだ!って見てたら、電信柱に車ぶつけたらしくてさ。馬鹿だよねー。怪我はないんだよ。でもそれをわざわざ私に言いに来るの」


美希は何故私に電話してきたの?

匠は何故、美希に伝えたの?

私はどうしたら良いの?

22歳の私は、結局何も出来なかった。


それからまた5年の月日が流れた。

母から美希が住んでいたマンションは老朽化で建て替えることになり、住民はみんな引っ越したそうだと聞いた。


27歳、16年前に教室で好きになってからの歳月、私はずっと好きだったのだろうか?

今も母から美希や匠が住んでいたマンションの話を聞いて、匠の事を思い出したのだ。

日々の生活の中に匠は居ない。

でも今でも私を縛り付けている。

どうすれば解放されるのか?

私は解放されたいのか?

匠に会いたい。でも会うのが怖いのも正直な気持ち。



小学校の建て替えをするとハガキがきた。

「卒業生のみなさんは、是非、懐かしい小学校へ来てください」

と。

同窓会ではない。好きな時間に小学校へ足を運び、懐かしんでくださいとの学校側の配慮だろう。

その日は夕方まで、学校を開けてくれているらしい。


私は、小学校の頃から変わらず同じ家に住んでいる。

夕方、もうすぐ日も落ちるだろうと言う時刻に、懐かしい通学路を通り小学校へ向かう。

小学校に着くと真っ先に思い浮かぶのは匠。

ヤバイ…完全に縛られてる。逃れられない。

この先もずっと匠に縛られるであろう自分が恐ろしい。


この時間だ。人も少ない。

とりあえず校舎を一周だけして帰ろうと足を進めた。


5年生の教室の前に辿り着いた時に、窓際の席に座っている人に目がいった。

その人がスーッと顔をこちらへ向ける。

何年会わなくても分かる。ずっと私の心にいた人。憎いぐらい忘れられない人。


「匠…」

次は匠側のお話です。

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