壱:「開いてる」(7)
一年から三年までクラス数は変わらず、一組から九組まである。
一年は一階なので一年間限定で苦労することはない。
その事に夕子は喜んびつつ嘆いていた。
「朝から階段登るのやだー」
三年になれば自動的に三階まで行かなければならない事が相当嫌らしい。
「ダイエットだと思えば、いいんじゃない?」
「はあ、こんな短距離じゃダイエットにならないよ」
お互いに苦笑いしつつ一年の教室が並んでいる廊下に到着した。
三組は右、五組は左にあるため彼女と別れなければならない。
「コウ!友達って無理して作るもんじゃないよ!」
その励ましの言葉だけを残し、三組の教室へ入っていった。
僕も一息ついて五組の教室の扉を開ける。
教室内では見知らぬ男女が疎らにグループを作って散らばっていた。
二三人で話しているところもあれば、一人で座っていたり短い自由を謳歌している。
視線を前方の黒板に映すと、四十人程のクラスメイトの座席が書かれている。
僕の席は窓際から縦二列目の横三列目だ。
黒板は見えやすい位置だが、教師からも見えやすい。
話し相手のいない今、授業に集中するだけで位置はあまり関係ないだろう。
自身の席に座ろうとした時、見覚えのある女生徒がいる。
マッシュバングの彼女だった。
意外や意外、一年だとは思わない程に上級生の風格があるので、教室にいる事に内心驚いた。
彼女に興味のある男女と話している。
クラスメイトでも関わる事のないジャンルの方達だと思い、着席し教師の到着を待つ。
しばらくして女教師が入室してくると、クラスメイトは一斉に自分の席へ座る。
「担任を受け持つ皆木と言う。とりあえず体育館に向かう。自己紹介は式の後で行うから」
見たところ二十代後半で、白いカーディガンにジーパン、眼鏡をかけている。
釣り目が特徴的で話しかけにくいオーラを感じてしまう。
素っ気ない態度で体育館での所作の説明を受けた後、皆で体育館へと向かった。
歩いてる途中、背中に感じる気配に振り返るとマッシュバングの彼女が歩いていた。
「同じクラスだったんですね」
華やかな笑顔で少し低めの声。
話しかけられるとは思ってもなかったのでたじろぐ。
「また後で」
一体、後で何が控えているというのだろう。
人見知りな僕からすれば恐怖の対象でしかない。
恐怖に身震いしながら、体育館で校長の話など色々な催しをこなし教室に戻る。




