壱:「開いてる」(6)
「あ、三組だ」
ぽつりと彼女が呟いた。
三組なので比較的早くに見つけられたのだろう。
僕も丁度三組当たりを確認しているのだが、名前は見当たらない。
そんな都合よく同じクラスにはなれない。
徐々に視線をずらしていき、発見先は五組の中だった。
「私と同じクラスになれなかったからって気を落とすなよ」
僕の心情を見透かしたのか、肩を叩いて慰める。
しばらく何か言わないでいると彼女は意外そうな顔をする。
「え?本当にそれで落ち込む?」
「いや、そういうわけでもないけど」
自分でもなんでこんな事で落ち込んでるのかわからない。
どこかで期待していた部分があったのかもしれない。
今までも別のクラスになったことなんてあったのに。
図星を突かれて、否定の言葉を吐き出す事しかできない。
「いいじゃん。新しく友達作る事も必要だよ」
「出来るかな?」
「出来るって!もしかしたら、彼女も出来るかもよ!?」
笑顔で元気づけてくれるが、些細な事で気持ちが晴れず作り笑いで返答した。
僕はともかく、彼女はすぐにでも友達が作る事は出来そうだ。
その時、残っている女生徒が視界の端に映る。
黒に紅がかかった色でマッシュバングの背まである髪、垂れ目で自然なピンク色の唇、夕子より背は低いだろうか(僕は170で夕子は165と少し高め)。
姿勢がよくどこか儚げで大人びている、そんな印象を受けた。
守ってあげたいという保護欲がある男子から人気が出そう。
いつもなら気にするような性分ではないし、何も知らない人を見つめるのは失礼に当たる行為だ。
しかし、自分でも気づかぬ間に彼女を凝視していた。
それに気づいたのか、彼女は笑顔で愛想よく会釈する。
何を考えるでもなく固まっていた僕は急いで会釈すると夕子も続く。
確認を終えた彼女は教室へと足を向けた。
「綺麗なのか、可愛いのか、そこで悩んでるんだね」
顎を人差し指と親指で挟みながら夕子は頷いている。
自然と感じた部分でいえば『可愛い』と判断できる。
しかし、その裏で彼女の笑みにはどこか懐かしさがあったし、恐ろしさも少なからず感じた。
直感的な部分なので、アテに出来るかどうかフィフティーフィフティーだ。
「あの女の子のことはいいよ。それより夕子、時間ない」
「やっべ!早く言ってよー!」
自分をごまかすように夕子を促し、一年の教室へと向かった。