壱:「開いてる」(3)
小中と同じクラスになったり離れたりはしたものの変わらず接してくれる。
彼女は幼少時代から現在に至るまで性格の変化はない。
先ほども社交的であると言ったが、四文字熟語で表すなら『天真爛漫』なのだ。
彼女自身がそう言ったわけではなく僕の主観も入った見方だ。
しかし、彼女は世間一般の女子と変わらない普通の感性の持ち主だ。
喜怒哀楽もあれば恋もする。
テレビに映った渋めの俳優が好みだと言ったり、中学の頃に一年上の先輩を好きになった事だってある。
その男子は人気があり彼女もいたため、片思いで幕を閉じた。
彼女が相談という形の愚痴を僕にこぼしたから知っている。
僕の存在は幼馴染以上のモノではないだろう。
だが、そんな彼女に対して僕は好意を寄せている。
僕にはない眩しいものを持つ彼女、夜を舞う蛾が蛍光灯の光に引き寄せられるようだ。
性格、見た目がタイプである事を考慮すれば、自然な流れだと思う。
成長するにつれ、思いは強くなる一方だった。
勇気のない僕は気持ちを伝える事が出来ないでいる。
彼女との会話は心地のいいぬるま湯であり、告白など恐怖でしかない。
もう一度言う。
彼女は世間一般でいう普通の女子だ。
相手に対しての思いはよほどの鈍感でない限り伝わるもので、彼女は空気が読めるし気づいているかもしれない。
それでも言えない。
友情が壊れるだとか、そういう繕う言い方をしたくはない。
ただ、自分が大事なのだ、怖いのだ。
ある日、彼女は赤高への入学を決意する。
『寝る時間を重きに置いてる私にとって十五分の距離は捨てがたい』との事。
僕より成績のいい彼女であれば難なく入る事は出来るであろう。
理由はどうであれ、僕の心は空に羽ばたく思いで駆け上がっていく。
まだぬるま湯に浸かっていられるのだ。