表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物コルロルの一生  作者: 秋月みろく
■新品の翼
72/74

3




「リースス……レーニス……」、潤む目が、あたしとリーススを交互にみたかと思うと「ありがとう! 君たちって、最高だ!」、力強い腕は、軽々とあたしたちを抱き込んだ。その勢いに、踵が浮く。


「ありがとう……本当に、なんて言っていいか……母親に、本当のことを話すよ。俺はあなたの息子だって。受け入れてくれるか分からないけど、このままの俺を愛してもらえるように。きっと、うまくいく気がするよ。今なら、どんな困難だって一足飛びで越えられそうだ」


 ライアンの笑顔は、会ったばかりの頃と同じで、相変わらずまぶしかった。でも、あの時よりもずっと柔らかくて、親しみを感じることができた。今のあたしには分かる。あたしたちは、友達になれたんだ。


「お礼を言うのは、私の方よ」、リーススは穏やかな表情で彼を見上げる。「あなたには、たくさん助けられたわ。私じゃ言えないような言葉で、私やレーニスを勇気づけてくれた。ライアン、あなたは綺麗な人よ。私たちが、あなたを想っているから」 


 ライアンは固まってリーススの顔を見た。それから数歩、なにかに押されるように下がる。かと思うと、手のひらで目元を覆ってしまった。その下で、笑顔の形を残した口から、弱い笑い声が漏れた。


「はは……まさか、こんなふうに言ってもらえるなんて」、ライアンは目元を抑えていた手を下ろした。「ずっと、俺には誇れるものがないと思っていたけど……君たちという友達ができた。俺の誇りだ」


 それからあたしたちは、ジュースの瓶で乾杯をした。今まで気づかなかったけど、あたしたちはすごく喉が渇いていたらしい。


 ライアンは瓶底を空へむけ、喉を鳴らして一気に飲みほした。ぷはーっと息を吐いてから、「これはまた、ぬるくて最悪だな」と嬉しそうに言った。


「今が最高だから、最悪のジュースでちょうどいい」、コルロルは瓶口を何度か口に運び、少しずつジュースを飲んだ。


「言い忘れたかもしれないけど、コルロル、君も俺の友達だ。無骨な男の友達でもいいだろう?」


「無骨な男だからって断るほど、僕の心は狭くない」


「へえ。それは初耳」


 あたしはコルロルをじっと見ていた。なんとなく見ていただけなんだけど、コルロルはそわそわした様子になり、意を決したように口を開いた。


「レーニス、さっきのことなんだけど」


「おじさん、大丈夫かな。1人みたいだったけど」、コルロルと同時に言った。ジュースを飲んで落ち着くと、ふと気になったのだ。ライアンが飽きれた顔をする。


「レーニス、君はあれだけのことを」


「いいの。分かってるから言わないで」、ライアンが言おうとしていることは分かるので、ストップをかける。「心配してるってわけじゃないの。ただ……おじさん、星空を綺麗だって、言ってたから……ため息がでるって。それがなんだか、印象に残ってるだけなの」


「ははん?」、ライアンは片頬を持ち上げる。「なるほどね。あれだけ強欲な人間が、夜空の美しさに感動するのが、腑に落ちないんだな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ