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「コルロル、テディを覚えてるだろ? 俺たちはアルスト山でさんざんリーススを探してたけど、なんとテディの正体がリーススだったんだ。ずっとリーススを連れながら、リーススを探してたってわけさ」
「テディ? 君がテディなの? 一気に親近感がわくよ。僕はコルロルって呼ばれてる。よろしく」
昇降口の上の部分に片手で捕まり、もう片方の手をリーススへ差し出す。巨大な手に戸惑いつつ、リーススは一本の指に手を乗せて、2人はいびつな握手を交わした。
「ごめんなさい、ぬいぐるみになってた時のことは、ぜんぜん覚えてないの。でもありがとう。一緒に旅してくれたみたいで」
「え、そんなこちらこそ。一度、お姉さんにはちゃんと挨拶しないとって思ってたんだ」
コルロルはバランスの悪そうな立ち位置で、居住まいを正した。
「10年前からレーニスとお付き合いをしているものです。名前はさっき言ったけど、コルロル。そう呼ばれてるだけで、実際には名前なんてないんだけど」
「え、なに? お付き合い?」
名前のことなんてどうだっていいらしいリーススは「お付き合いってなに? 10年前から? どういうこと?」、とこちらに詰め寄る。
「リースス、違うのこれは……」
「憎いって言ってなかった? 本当は10年間も交際してたの? こんなの聞いてないわ」
「いやだから」
「本当なら正装して、僕から家を訪ねないといけないんだけど、まさかこんな形で会うことになるなんて」
混乱するリーススに構わず、コルロルはどこか照れた様子で話を続ける。正装って、コルロルはなにを着るつもりなんだろう。
「私が魔女に願ったから会えたんじゃないの? 本当は今までも会ってたの?」
「違うのリースス」
「魔女って、もしかして僕が会ったあの魔女? 僕とレーニスが会えるように言ってくれたの? それなら君は恩人だ」
話が入り乱れる。あたしは操縦席の背もたれをつかみ、ライアンに助けを求めた。
「ライアン、なぜこんな時に限って黙ってるの? 2人に説明して」
「いや、ははっ。悪い、君たちのやりとりが面白くってね。リースス、コルロルとレーニスが会ったのは、正真正銘10年ぶりだ。2人が会えたのは、君が魔女に願ったからだろう」
ところどころで後ろを振り返りつつ、ライアンは簡潔に説明してくれた。レーニスは「そ、そうなの……やっぱりそうよね」と納得した様子だ。
「それで、2人が交際しているって話だけど、あー……、10年前の幼いレーニスとコルロルは、恋人同士になる約束をしたんだ。でもレーニスは覚えていなかったし、今もそんな気はないらしい」
「そんな気はないって、君は失礼な……」
ライアンをねめつけるコルロルの言葉が、尻すぼみに消えていく。と同時に、コルロルの巨体が、ふっと背中から落ちていった。「きゃああ!」、リーススが悲鳴をあげる。
しかしコルロルの触覚は、飛行船のあらゆる箇所に巻き付いていたから、落っこちるということはなかった。飛行船のゴンドラから、さかさまにぶら下がっただけだ。
「そういえば、そうだった……僕、フラれたんだ……」
弱々しい声が、ゴンドラの外から聞こえてくる。フラれた……っていうのは、あの時のことだろう。頭の中に何度も何度も流れて止まない、翼の中で交わした会話。
「コルロル、変な落ち込み方はやめてくれ。フラれたことを思い出してしまったから、レーニスと顔を合わせづらいんだろうが、飛行船の旅はまだ続くぞ」
昇降口に、コルロルが戻ってくる。しかし、ライアンに言われたからじゃないらしい。
「ライアンまずい。やつら追ってきたみたいだよ」
コルロルが言うのと同時、ギン!と金属がぶつかる音が船内に響いた。「なに?」、ライアンは後ろを振り返る。あたしもコルロルの横から顔をだして後ろをみた。




