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背負うもの  作者: ボールペン
第二話 空野有利砂
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噂の美女

 私立黒坂高校は、とても特殊な学校だった。


 家庭の事情が複雑な生徒や、手に負えない不良の生徒を請け負っているのはもちろんのこと、それ以外にも、並外れた才能を持つ生徒たちも少なからず請け負っていた。そのため、クラス分けも少々複雑だった。


 普通科は、A~J組まであり、成績の良い生徒ほど順の早いアルファベットのクラスに組み入れられる。ただし例外もあり、悟史のような問題児の管理者として、自らの成績に見合わぬクラスに組み入れられる梨花のような生徒もチラホラいた。


 なお、中でもH~J組は理数科や工業科など、より専門性の高い生徒が組み入れられている。


 芸術科は、K~N組まであり、こちらは美術、音楽、書道、その他の四つに分類され、クラス分けされている。


 体育科は、O~S組まであり、こちらは球技、水泳、陸上、武道、その他の五つに分類され、クラス分けされている。


 このことからも分かるように、黒坂高校の生徒数は膨大で、入学から卒業まで一度も会わない人間さえいるくらいだった。


 また、普通科においての頂点はB組であり、A組はそこから更に頭の抜けた、いわゆる『天才育成プログラム』といったレベルのカリキュラムを組んでいた。一学年につき千人前後いる中でも、A組に組み入れられるのはたった五人にも満たないとか。


 そんな中、件の美人と話題の先輩である“空野 有利砂”は三年A組だという情報を得た。




「えっ⁉

 りっちゃん、まだ空野先輩見たことないと⁉」


 クラスメイトはチラホラと、その女性を見かけたという。


「やばいよ、あの人!

 もうなんか、オーラっち言うか、周りにキラキラが見えるばい!」


「へぇ~・・・。

 どんな人なん?」


「え~? ん~とねぇ・・・」


 梨花に尋ねられ、自らの記憶を想起する学友の表情は、心なしか恍惚としていた。


「なんち言うか、めっちゃ綺麗なんよ! かっこいいし!

 身長も高くて、そーとー脚スラッちしとるし、線は細いのにおっぱいでっかいし!

 いや、でもなにより顔! 顔がいい!」


 そう力強く語る彼女は心底楽し気だった。


「顔? そんなに美人なん?」


「美女! めっちゃ美女!

 ハリウッド女優とか、ネットで話題になる天使とか、そんなレベルの美女!

 も~、近寄るのすら申し訳なくなるし、同じ空気を吸っとるっち思うだけで昇天しそうやわぁ~!」


 男子生徒ならともかく、同性の女子生徒でここまで言わしめるということは、やはり相当なのだろう。いわゆる女子高で言うところのモテ女のような存在なのだろうか、などと梨花はぼんやり考えていた。


「へぇ~。なに、誰似なん?」


「え~? 誰やろ・・・。

 でも、すっごい日本人離れした、西洋系のお顔なんよ!

 彫は深いし目鼻はハッキリしとるし、瞳は緑色やし・・・」


 名前からして、ハーフなのだろうか。話を聞けば聞くほど、空野という女性は様々なコンテンツの盛り合わせのような人のようだった。


「りっちゃんも絶対見た方がいいって!

 同じ空間におるだけで幸せになれるばい!」


「ふぅん。まあ、その内見かけるやろうけん楽しみにしとくよ」


 女も惚れるほどの美女、ということなのだろう。確かに噂は兼がね聴いており、つくづく気になってはいたのだが、如何せん情報が少なく、実物も見たことが無かった。しかし、こうして女友達がここまで評価するほどという事実が、梨花の中での空野という女子生徒に対する興味を掻き立てたのだった。


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