少年伊琉
目が覚めると、真っ白な部屋の真っ白なベッドの上に寝転がっていた。
「あっ、気が付いた!」
聞き覚えのある声に反射的にそちらを振り向くと、中学生くらいの少女がベッド横に腰かけていた。
「――――?」
「おはよう!
悟史さん、だとなんだか他人行儀だから、“さと兄”って読んでもいい?」
目が合うなり無邪気な笑みを満面に浮かべ、少女はそんなことを訊いてきた。
「え・・・、いや、誰・・・?」
「あっ、そっか、そこからか」
悟史が思わず訊き返すと、彼女は少しだけ照れたように後頭部に手を当てた。そして、彼が上体を起こすと同時にベッドから離れて立つと、ぺこりとお辞儀をした。
「はじめまして!
僕は“長谷川 伊琉”といいます!
よろしくお願いします!」
「ボク――――?
・・・男?」
「うん、男だよ?」
そう言って愛想を振りまきながら手を振った彼の容姿は、どう見ても少女のそれだった。確かに胸も大きくは無いし、身体のラインも着ているシャツが少し大きめのサイズなのか全く分からないため、男といわれれば見えないこともなかった。しかし、声変わりもしていない音程の高い声と、何よりもその相貌が男のそれとは思えなかった。
大きな瞳にくっきりとした二重瞼、長い睫毛は綺麗に天へと伸びており、鼻は小さく筋が通り、唇は厚いわけではないが、白い肌に良く映える瑞々しいピンク色だった。端正なその顔立ちは、美少年というよりは美少女のそれであったのだ。
「・・・・そう、か。男なのか」
「ん? 女の子の方が良かった?」
「いや、別に・・・」
「ならよかったぁ!」
天真爛漫な性格なのだろう。とてもにこやかな、元気のいい少年だった。脳裏に一瞬嵜嶋が浮かばなくも無かったが、あまりにもタイプが違った。
「多分、今ものすごく混乱してるよね・・・?
もし良ければ、僕が答えられる範囲で質問に応じるから、何でも訊いて!」
「・・・・あ、まあ・・・、サンキュ・・・・」
どや顔で張った彼の胸は、確かに平たかった。特に性別が違ったらどうこうというわけでもないのだが、悟史の人生の中でこれほどまでに女性らしい男性がいなかったため、あまりに新鮮だったのだ。




