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背負うもの  作者: ボールペン
第七話 非常への入り口
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襲撃開始

 大穴は、五階建ての棟の屋上から三階まで見事なまでに貫通しており、彼は寸でのところで四階の踊り場に不時着した。


「いっつゥ・・・‼」


 大穴は、原因は不明であるが何らかの大爆発によって空いたようであった。乱暴にこじ開けられた縁の部分はところどころ焦げており、熱を帯びた瓦礫がそこここらに散らばっていた。


 屋上の、しかも入り口上の屋根から四階の廊下まで落ちたのである。いくら頑丈な彼であってもすぐに立てるようなダメージではなく、また無造作に並んだコンクリート片が身体の節々に食い込み、出血も余儀なくされていた。


「何をしているの?

 早く逃げないと、死んでしまうのよ?」


 遥か後方から、悪魔の声を耳にした。違和感を感じ取り、警戒心を抱いていた彼の本能は、どうやら間違ってはいなかったらしい。だがしかし、謎があまりにも多過ぎて今はただ身体を起こすことに精一杯になっていた。


「くそっ、動け馬鹿!」


 痛みに悲鳴を上げている身体に鞭を打ち、悟史は何とか立ち上がった。そして、天井の穴から屋上の方を振り返ると。




 空野の傍らには、人ほどのサイズの氷塊がさも当然のように浮かんでいた。




「はい、第二次波」


 彼女の呟きに呼応するかの如く、氷塊は見る見るうちに先端が溶けていき、それに連なって身の毛のよだつような鋭さを獲得していった。


 そして直後。悟史の立っている四階めがけて、勢いよく射出された。


「ぅおっ‼」


 歴戦の中で培った身体能力が、ここに来て最大限に発揮された。プロ野球の投球よりも疾いその氷槍を、考えるよりも早く身体が後方へと跳び下がってくれたことで、ギリギリのところで直撃を免れることができた。


 しかし、つい数秒前まで寝転がっていた場所は巨大な氷槍が突き立ち、刺さった部分から少しばかり周囲を凍らせ、現代アートの如くそびえ立って制止していた。


「・・・一体」


 先程まで痛んでいた身体の各所のことも忘れて、悟史は威光猛々しく佇む氷の槍を注視していた。しかしそれも束の間、突如氷の槍はその表面がささくれ立ち始め、その破片が所構わず射出され始めたのである。


「うわっ、わっ‼」


 飛んできた破片もまた鋭く尖っており、あちこちの床壁天井に風穴を空けていくほどの威力を持っていた。凄まじい、まるで銃声のような金属音がそこら中から響いてくる中、悟史は一心不乱に廊下を駆け出した。肩やふくらはぎなど、部分的に掠ったり抉られたりはしたもののやはり彼の闘争本能の高さ故か、直撃だけはなんとか凌ぎきった。


 急いで三階へと、メインではない方の階段を駆け下りる。その時だった。




「ずいぶんと悠長に逃げているのね」




 頭上から再び、悪魔のささやきが聴こえた気がした。だがそれはどうやら気のせいではなかったようで、直後階段の上から一筋の光が伸びてきた。それは箸くらいの矮小さで、一見すると全く脅威を感じられなかったのだが、ここでもやはり、彼の本能が危険信号を何重にも振りかざしていた。


 刹那、天井をも貫通していた光の筋は人二人分くらいの幅に成長すると、はじめに屋上で聴いたのと同じ、凄まじい轟音と共に目の前で大爆発が起こった。


 目の前が真っ白に染め上げられ、それと共に身体を浮かせるほどの爆風が彼を襲い、熱風と瓦礫の数々に打ちのめされながら、崩れ落ちる階段と共に足場を失った彼は叫ぶ間もなく意識を刈り取られた。


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