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背負うもの  作者: ボールペン
第七話 非常への入り口
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謎の違和感

 その日は、朝目覚めた時から何かが違っていた。何が違うのか、どう違うのかは分からないが、ただ漠然と、常時とは確実に異なる何かを感じていた。


 朝日も昇らぬほど早い時間。暁というにも暗すぎる、むしろ前夜の続きとも思えるようなくらいに目を覚まし、いつもと同じように朝の支度をし始める。


 起きてすぐに布団を巻き上げると、寝室から寝間着を脱ぎながらシャワールームへと向かう。そして服を全部脱いでしまうなり、シャワーの温度調整など行わず、そのままいきなり冷水のまま、頭からかぶる。


 いつもと同じことをしているのに、何かが違う。この日も、心臓が止まるかと思うくらい冷水が身体に染み、いつもの通り息も上がっていたのに、漠然とした違和感だけは拭えないままだった。


「どうしたの?」


 朝ごはんを食べながら心配をする優も、この日は珍しく寝覚めが良かったらしい。身支度もしっかりと済ませてしまっており、髪も悟史が梳かす必要のないほど綺麗に整っていた。


「・・・いや、別に」


 小首を傾げる従姉を尻目に、彼自身特に体調が悪いだとか、機嫌が悪いだとかも無く、違和感の正体を掴めないままだった。




「・・・あんた、今日どしたん?」


 どうやら、周りは悟史自身に違和感を感じているらしい。優を見送って後、玄関先にやってきた梨花も悟史を一目見て、挨拶よりも先にそう尋ねてきた。


「なんか、おかしいとこあるか?」


「いや、特には・・・・。

 なんとなく、いつもと様子が違う気がして」


「・・・具体的に?」


「知らん。何も無いんならええわ」


 若干不機嫌そうに、梨花はそう言って遮ってしまった。




「なあ、ガット。

 今日、なんかおかしくねえか?」


 休み時間、偶然男子便所の近くで出会うなり川西はそんなことを言い出した。


「・・・そうか?」


「絶対そうやって!

 なんか、違和感があるっつうか・・・」


 力強くうなずく川西に、悟史は少しだけ関心を覚えた。


「・・・具体的に?」


 今朝、梨花にした質問を繰り返す。すると、川西は顎に手を当て考え始めてしまった。


「・・・なにかは分かんねえけどよ。

 でも、ねえか? 違和感・・・・」


 彼もあまり頭の回転は速い方ではなかったため上手く言葉で表現できなかったらしい。しかし、確かに悟史や梨花と同じ違和感を抱いているようだった。


「・・・まあ、分かんねえことはない、かな。

 お前は、いつから?」


「今朝、起きた時からばい。

 いつも通りのはずなのに、なんか妙な感じがするっつうか――――」




「分かる」




「ぅわッ⁉」


 川西が話していると、突如背後から会話に入って来た者がいた。


「うわっ、なんやエリンか・・・」


「はろー、お二人さんっ」


 小学生の頃からの相変わらずのハイテンションぶりで、嵜嶋は挨拶を押し付けてきた。


「お前もやっぱ感じてんの? 変な違和感」


「うん~、なぁんかおかしいよね、今日」


 昔からの付き合い故に特に何とも思わなかったが、髪を金に染めてピアスやら指輪やらアクセサリをごてごてつけている川西と、肌を小麦色に焼いたショートカットの快活そうな嵜嶋が仲睦まじく会話しているのもかなり異様な光景だった。


「ガットも感じとるん??」


「・・・まぁ、それなりには」


「なんなんやろうな、これ」


 こんな会話をしている今現在も、謎の違和感は拭えずにいた。


「でもまっ、大したこと無いやろ!

 それよりにしきさぁ、明日の記録会のことなんやけど――――」


 嵜嶋は良くも悪くも前向きでおおらかな性格だったため、違和感を感じつつも気に留めようとはしなかった。そのまま彼らの所属する陸上部の話へと話題が変わってしまったため、悟史もまた静かにその場を後にした。


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