旧友はスプリンター
色んな部活をしばらく見て回った二人は、最後にグラウンドに出た。グラウンドも敷地内にはいくつか設置されているのだが、この日二人が訪れたのは陸上用のトラックのあるグラウンドだった。
「お~、陸上かぁ」
陸上といえば、優を真っ先に思い出す。彼女は元短距離の選手で、県選抜にも選ばれるほどの実力の持ち主だった。今は、彼女の通う奈艶高校が家から遠すぎるために部活には所属していないのだが、当時の名残りか、彼女の脚は本当に美しかった。
「――――」
「え? なに、ひとみん?」
ふと、瞳未に袖を引かれ、彼女の指さす方へと目をやった。すると、その先には一人の女子生徒がトラックを走り、タイムを取っていた。
「あの子がどうしたん?」
「・・・・」
相変わらず瞳未は口では応えることなく、梨花の袖を引いて指さした方へと歩き始めた。
梨花は少しばかり近視が入っており、日常生活に支障が出るほどではないのだが、やがて彼女の袖を放して瞳未がその陸上部員へと駆け出し始めた段階では、それが誰なのかが分からないままだった。
「えっと・・・、あれ?
――――もしかして」
その人のよさそうな垂れ目には見覚えがあった。一重なのに大きくてパッチリしているその双眸には、羨望を抱いた時期もあるほどだった。背が高いのに線が細く、手足の指先まですらりとのびた彼女のスタイルは、高校生になった今美しさを更に増したように感じる。
化粧っ気のない、小麦色に焼けた肌が、彼女の元気で活発な性格を表していた。
「まさか、“エリン”?」
「わっ、ひとみんに“リフ”⁉
えっ、なしておるん⁉」
エリンこと“嵜嶋 絵莉”もまた、小学生の頃の仲の良かったグループの一員であった。メンバーの元気印であり、女の子ながら男子に負けない身体能力の持ち主で、彼女が落ち込んでいる姿は記憶にないほどだった。当時から足も速く、体力テストやマラソン大会では、女子の中ではトップに君臨し続け、男子の中に混じってもなお上位一割に食い込む化け物っぷりであった。
「“にしき”も“まこ”もおるし、なぁに?
みんな大集合なの⁉」
つい先程まで走っていたにも関わらず、彼女は大興奮であった。
「え、二人もおるんか・・・。
ってかごめん、部活中やったよね?」
「いやいやいや、もう終わって自主練の時間やけん全然ええよぉ~!」
汗はかいているものの、全く息の上がっていないところを見ると、やはり体力お化けなのは健在らしい。
「そうだっ! ねえ、この後一緒に帰ろ?
色々話したいし!」
「・・・・!」
「おぉ、いいねえ!
ちょいとどっか寄って帰るか!」
梨花自身、一日で二人も懐かしい面々に会えるとは思っておらず、かなり興奮してしまっていた。そのため、悟史を待っていたこともこの時には完全に失念してしまっており、絵莉の申し出に何のためらいも持つこともなかった。




