噂の男子は
4月20日。とある噂を耳にした。
「なんか、C組にそーとカッコイイ人がおるらしいばい!」
「あ、それ知っとる!
あれやろ? バスケ部の人!」
級友がまた何やら新しい情報を得たらしく、なにやら盛り上がっていた。
「え? 誰?
誰んこと?」
「あ~、なんち言ったっけなぁ・・・。
確か・・・、“明石”くんっちいったっけ・・・?」
「確かそうよ、明石くんやったと思う」
「明石・・・?」
その名前には、聞き覚えがあった。否、聞き覚えどころか、むしろ最もよく知っている名の一つだった。なにせ、小学校の頃に特に仲の良かったグループの一員である。ただの同姓の可能性もあるが、少なくともその名に心当たりがあるのは間違いなかった。
「明石って・・・、“明石 伊吹”?」
「んん、下の名前は知らんのやけどね。とにかくかっこいいんやって!
背は高いし、筋肉もしなやかで、顔もイケメンで!」
「あかぶきが・・・?」
あかぶきというのは、知り合いかもしれない明石の小学校時代のあだ名である。確かに彼は当時から背も高く、顔も今になって思い返すと整っていたような気がする。
「りっちゃん、知っとん?」
「いや、もしかしたら、ね。
小学校の頃の友達かもっち思って」
しかし、その線は割と薄く思われた。あかぶきは家庭もごく一般的で、また模範生のように真面目で頭もよかったため、彼には黒坂のような特殊な学校に通う理由がないのだ。
反対に言えば、それは梨花にも悟史にも当てはまる話なのだが。
「C組っち言ったっけ?
その、明石くんっち人」
「そそ。まあ、いっぺんお目にかかった方がええと思うばい!
めっちゃかっこええけん!」
とにかく同じセリフで何度も推してくるあたり、他に捉えどころのない男なのかもしれない。そう思うと、やはり本当にあかぶきなのかもしれないと、梨花は少し緊張しながらも楽しみになっていた。




