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道真公つながり、おばあさんは泣き出してしまった。

華音は、黒ベンツの助手席に乗り、後部座席におばあさんとシルビア、そして吉村学園長が乗る。

おばあさんは、かなり緊張した様子で、しきりにお礼を繰り返す。

「ほんのこつ、お金も命も助けてもらったうえに、これほどよくしていただいて」

吉村学園長が、おばあさんの手を握る。

「いえいえ、ご心配なさらず、華音君も私たちも、人助けが大好きなので」

「そんなことよりも、本当に心配な時間を過ごされたでしょう、今日はゆっくりと疲れを癒してください」


シルビアからも、おばあさんに声をかける。

「出来る限りのお世話をさせていただきます」


おばあさんは、また感激のあまり、泣き出してしまった。


黒ベンツが華音のお屋敷に入ると、春香が玄関でお出迎え。

吉村学園長には会釈、おばあさんには深くお辞儀。

「とにかくお疲れでしょう、ゆっくりおくつろぎください」


おばあさんは、屋敷の中を見回し、本当に驚いたようだ。

「なんと・・・大層な旅館のような・・・」

「わざわざ旅館を取っていただいたのですか」


春香は、にっこりと、首を横に振る。

「いえ、私どものお屋敷にございます」

「何も心配はいりません」


吉村学園長は、再びおばあさんの手を握る。

「さあ、お食事の用意が出来ております」

「お口に合うかどうか・・・」


おばあさんは、また驚く。

「いえいえ・・・ほんのこつ、申し訳なかとです」

「ここまでしていただいて」

吉村学園長に手を引かれ、そのまま食堂に進む。


食事の内容は、典型的な和食、魚介類の鍋料理。

おばあさんは、一つ一つの料理に感激しながら食べている。

「この煮物も焼き物も、味付けが柔らかくて」

「椀物も、ふっくらと・・・」

「ご飯も、よほどの炊き方上手でないと、こんなにお米の甘さは出ません」


吉村学園長が、おばあさんに、やさしく声をかける。

「おそらく九州の御出身ですよね」


おばあさんは、深く頷く。

「はい、大宰府近くの、料亭で長らく、仲居をしておりました」

「三年前に定年退職して」

「今は、家で、のんびり過ごしております」


立花管理人が、おばあさんに声をかけた。

「私も大宰府、博多は大好きです」

「万葉集の時代、大伴旅人の時代も好きで」


ずっと黙っていた華音が口を開いた。

「大宰府の天満宮に祀られている菅原道真公は」


吉村学園長とシルビア、春香がクスッと笑う。


華音が言葉を続けた。

「僕の奈良の西の京の実家のすぐ近くが、出身地なんです」

「奈良の西の京近く、菅原の地」

「菅原天満宮という神社があって、道真公の産湯の池も残っています」

「自転車で行けば、5分もかからない」

「僕もよく参拝したり、梅の花を見に行きました」


おばあさんは、また泣き出してしまった。

手を合わせて、華音を見ている。

「ほんのこつ・・・道真さんの御利益」

「毎日、毎日、参拝をして・・・良かった・・・」


震えて言葉が出ないおばあさんの肩を、吉村学園長が抱きかかえている。



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