攻防戦をおさめた華音の視線の先に、不穏な事態!
さすがテニス部、雨宮瞳はダッシュ、あっと言う間に華音の前に到着した。
華音
「雨宮さん、わざわざありがとうございます」
文化研究会の長谷川直美は、少々呆れた。
「まさに体育会系の動き、品がない」
花井芳香は、胸を張る。
「華音君と楽しいひと時を過ごしました、それから、今後もね」
佐藤美紀は、華音にウィンク。
「頼もしい新入部員、可愛いし」
志田真由美は、さっと華音に密着。
「華音君は、私たちがゲットしたの、だから瞳はいらないよ」
瞳が、涙目になるくらい言ってくるけれど、華音はいつもの冷静な顔。
「学園内ではクラスが違ったり、学年が違ったり、部活が違うこともありますが」
この華音の言葉の次は、文学研究会女子も瞳も全く読めない。
華音はやさしく微笑みながら、また当たり前のことを言う。
「今は、同じ学園の生徒、帰宅するという共通の目的をもって、共通の最寄りの駅まで歩く生徒なんです、つまり同じ立場の仲間なんです」
長谷川直美
「ふむ、争う必要も理由もない」
雨宮瞳
「あまり道で大騒ぎすると、学園が恥かしい思いをすると」
花井芳香は感心する。
「うまくおさめたなあ、さすが華音君」
佐藤美紀も志田真由美も、同じように華音の言葉の意味を捉えたようだ。
いつの間にか、雨宮瞳とも、普通に言葉を交わし、駅まで歩きだしている。
その華音の歩みが突然、止まった。
そして前方を厳しい顔で、見ている。
長谷川直美は、華音の表情が気になった。
「華音君、何かあるの?」
華音は厳しい表情のまま。
「はい、あのおばあさんん、少し大き目な鞄を持って、携帯で必死に話をしています」
雨宮瞳
「それがどうかしたの?」
華音
「あの言葉は博多とか九州の言葉です」
佐藤美紀
「うーん・・・ガクガク震えて電話しているよね、話も通じないのかな」
華音の表情がまた厳しくなった。
「おばあさんに近づいていく若い男の人・・・でも、おばあさんはキョトンとした顔」
志田真由美
「あ!おばあさんと若い男が、鞄を取り合っている」
華音は、長谷川直美に声をかけた。
「すみません、警察に連絡してください!」
そして雨宮瞳に
「保健室の三井先生、そして学園長に連絡してください!」
と声をかけ、走り出す。
佐藤美紀と志田真由美も、華音につられて走り出す。
華音は二人に
「スマホで録画してください!」
佐藤美紀が「え?」と聞き返すと
華音は少しだけ声を大きく返す。
「おそらく、詐欺、持ってこい詐欺かも」
志田真由美は震えた。
「危ないって!」
しかし、志田真由美の声は、華音には届かなかった。
あっと言う間に、華音は鞄を取り合っているおばあさんと若い男の前に到着した。
その華音を見ておばあさんは「助けて」と、懇願するような顔。
若い男は、華音をギロッと睨み、大声で凄んだ。
「おい!兄ちゃん!邪魔すると怪我するで!」
その様子が気になったのか、周囲に人が集まってきている。




