華音の珈琲と、華音を勧誘する女子たち
長谷川直美は、一口飲んで、目を丸くした。
「すごい・・・香りも・・・このコクが全然違う、美味しいなんて言葉では言い尽くせない」
花井芳香は目を閉じて味わう。
「ドッシリ感があるなあ、珈琲豆本来の風味が生きているし」
佐藤美紀は感動している。
「どうして?あんな簡単な淹れ方なのに・・・はぁ・・・美味しい」
志田真由美
「こうなると、毎日煎れてもらいたい」
華音は、困ったような顔。
「いえ・・・これは、すごく簡単で、誰でも初心者でも上手に珈琲を淹れられる方法で・・・」
と言うけれど、女子たちは、全く納得しない。
長谷川直美
「従妹の佐々木あきも、紅茶とかお茶系も、すごいって言っていたしさ」
花井芳香
「それは楽しみだ、文学研究会は華音君の美味しい飲み物付きになる」
佐藤美紀
「そのうえ、華音君を日々、愛でることができるしねえ・・・」
志田真由美は、華音を軽くにらむ。
「瞳と一緒のクラスが悔しい、だいたいどうして一番先に文学研究会に来ないの?」
華音は、またここで困った。
「そう言われましても・・・」
となるばかり。
珈琲を味わいながら長谷川直美
「ところで、真面目な話」
「華音君、是非、入ってもらいたいの」
他の三人の女子も真顔になった。
華音が少し答えをためらっていると、長谷川直美は真剣な顔。
「本当は剣道部と空手部の極秘なんだけれど、華音君が、そっちの方面でも、ずばぬけて強いとか、すごいという話は聞いているの」
華音は、ただ聞いている。
長谷川直美は、話を続けた。
「でも、華音君には、そっち系の部活に入る気はない」
「あまりにも、実力が違い過ぎることもあるし、もったいない気もするけれど」
「学園長のお言葉の通りで、学園外にまで評判が広がると、華音君を狙う学外の格闘系の人たちと、トラブルになりかねない」
「そうなると、文化系の部活が安全と思うの」
華音は、少し頷く。
三年生の佐藤美紀が尋ねた。
「華音君は、格闘系以外の体育系の・・・陸上とか球技とか水泳系は興味あるの?」
「それか、文化系で言えば、美術とか音楽とかは?」
その質問に、他の女子も、華音を顔をじっと見る。
華音の答えは、少々、ためらいがち。
「えーっと・・・体育系については、以前の中学とか、高校では、それも誘われました」
「それも、あちこちで、勧誘に来るので、かなり面倒で、誘いに来る人たちの中でトラブルになって困っていました」
少し間があった。
「美術と書道については、6歳ぐらいから先生について習いました」
「音楽はピアノとヴァイオリンを4歳から」
華音を見つめる女子たちは、またしても目を丸くしている。




