調査結果の大まかな説明と華音の不機嫌
奈良に戻るワンボックスカーの中で、柳生寛が調査結果の説明を始めた。
(収益及び費用に根拠資料が添付されていない)
(架空計上、過大計上他、根拠のない計上だらけで、真実の数値が全く不明)
(しかし県議の政治的圧力と、配下の極道の暴力的圧力が長年続き、地域税務署も黙認を続けていた)
「過去に何度か、本局に通報を試みたが、その都度、試みた人間の家族が襲われた」
レストランなどでの食中毒の発生ともみ消し。
(賞味期限切れの食材を不衛生な厨房で調理、客に提供し食中毒が発生するものの、県議の政治的圧力と、配下の極道の暴力的圧力を使用し、顧客及び地域保健所を脅し、黙認させて来た)
宿泊客に対して、過大な宿泊料や食事料金の請求、宿泊部屋の清掃整備も不徹底
(いずれも事前予約とは異なる過大料金を請求し、顧客の抗議には、配下の極道を使い暴力的手段で脅し取る)
ホテルの駐車場、庭園の整備及び清掃は、全く行っていない。
(清掃業者からの架空請求書と架空領収書は、残っていた)
そこまで話し終えて、柳生寛は、間を置いた。
「今後は、国レベルの捜査が入ります」
「地検は既に入っているものと思われます」
華音は、難しい顔。
「いずれにせよ、地域の人にも嫌われているホテル」
「今後、イメージを変えるには、経営陣からホテルマンまで、総入れ替えが必要」
「時間もかかるだろう」
久保田紀子も浮かない顔。
「あんな汚らしいホテル・・・建物だけは立派だったけれど」
華音は、車窓から外を見る。
「ほとんど仕事ができなくて、柳生に任せきりかな」
「それが、情けない」
久保田紀子は、首を横に振る。
「そうではないの」
「全てを華音君が・・・ではないの」
「華音君がフロントで、失礼な対応をされる」
「それも、今回は大切な仕事」
柳生寛が苦笑いをして、華音を見る。
「ところで若・・・あの極道を転ばした技は何です?」
「あれは初めて見ました」
華音は、それには答えた。
「ああ、あれは合気の技」
「スッと首の力を抜いて、相手が驚くと同時に相手の足首を蹴る」
「相手は腰の力が抜けて、しばらく動けない」
しかし、その後は、車窓から外を見たまま、黙り込んでしまった。




