調査開始(7)フロントトラブル
柳生寛は、赤ら顔のフロント係に質問。
「あの女の人がキャンセルした場合も、キャンセル料は発生するのですか?」
赤ら顔のフロント係は、「うっ」と一瞬詰まったけれど、しっかりと頷く。
「はい、当然です、一度はお部屋に入られたのですから」
「当然、所定の料金はいただくことになります」
しかし、女性フロントは、苦しそうな顔。
「そうじゃないでしょ?この場合」と。赤ら顔のフロントの脇をつついている。
黙っていた華音が口を開いた。
「支配人は、おられるでしょうか」
「とにかく、フロント係二人で話が食い違っているようです」
すると赤ら顔のフロントは、いきなり怒り顔。
そして、「何だ?このガキ!何様のつもりだ!」と、ロビー全体に響き渡るような怒鳴り声。
これには、華音は当然、柳生寛、久保田紀子も呆れた。
テレビクルーたちにも失笑が広がる。
しかし、赤ら顔のフロントは、それを馬鹿にされたと思ったらしい。
「うるせえ!このホテルには、このホテルの約款がある!決まりがある!」
「それを守れないなら、金払って出ていけ!」
と、怒鳴り声。
それでも、気がおさまらないのか、腕を伸ばし、華音の首元を掴んでしまう。
その時だった。
「やめろ!」と大声。
立派なスーツに身を包んだ、小柄、オールバックの紳士が走って来た。
その姿を見て、女性フロントも声をあげる。
「支配人、済みません、渡辺さんが切れてしまって・・・」
「どうにも止まらなくて」
支配人は、真っ青な顔で、華音と、赤ら顔のフロント「渡辺」の前に立った。
そして、再び赤ら顔のフロント「渡辺」を制止にかかる。
「手を離せ!この馬鹿!」
しかし、赤ら顔のフロント「渡辺」は、その制止に応じない。
「何でですか!支配人!」
「このガキが悪いんです!」
「所定の料金を払わねえとか、そしたらテレビ局が来て、くだらねえことを言って!」
「そしたら、変な女まで来て、どうでもいい文句!」
「このガキが文句を言うから、それから変なことに!」
「支配人、いつも言っているじゃないですか、言うこと聞かなかったら脅せって」
「まあ、それでも聞かなかったら、親分に連絡すればいいって」
赤ら顔のフロント「渡辺」の指は、華音のシャツを越え、首に食い込んでいる。




