調査開始(1)柳生情報
華音が伊勢志摩ライナーを降り改札口まで歩くと、久保田紀子が手を振っている。
改札口を出た華音は、少々文句。
「あのさ、もう中学生の子供ではないの。いつまで家庭教師のつもりなの?」
しかし、久保田紀子は華音にグッと身を寄せる。
「うん、それは今西圭子と松田明美から、しっかりと聞いている」
「だから、それを確かめたくて、お風呂一緒にって言ったの」
華音はその言葉に呆れた。
「当分、話をしたくない・・・離れてくれる?」
久保田紀子は、華音の言葉に反応なし。
さらに身体を押し付けながら、目をキョロキョロと動かす。
「精がつくものがいいかな、地魚料理・・・牡蠣も美味しそう」
そこまで言って、声を低くする。
「柳生事務所の報告があったの」
華音は「うん」と、久保田紀子の次の言葉を待つ。
久保田紀子は続けた。
「鮮度が低い素材を使ったのかな」
「食中毒が半年で数回」
華音は驚いた。
「こんなに海が近いホテルなのに?」
久保田紀子は、首を横に振る。
「いや、至近の漁港や漁師からの情報では、地元への貢献はゼロだって」
「賞味期限スレスレか、あるいは過ぎている素材を格安で仕入れているらしい」
「場末のスーパーより悪質」
「仕入れ帳簿を見ればわかるはず」
華音は、それでも信じられない。
「食中毒になれば、保健所の指導もあるのでは?」
「マスコミにも情報が」
久保田紀子は、そこで顔をしかめた。
「おそらくね、地元の政財界、役所まで、全部グル」
「やばい情報は政界、財界。マスコミ、警察、税務署、極道まで含めて」
華音は納得した。
「それで今のうちに、まともな食事をしようってこと?」
「わかりました」
久保田紀子は、華音の言葉に応じて、しっかりと腕を組んでいる。




