表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
483/500

華音は奈良に戻る。(1)

華音にとっては3年ぶりの奈良の実家への帰郷になった。

ただ、新幹線の中でも京都からの近鉄線の中でも、懐かしいという気持ち以上に、父が口にした「調査」の件と、母の病状への不安で落ち着かない。


「買収予定のホテルの調査か・・・なぜ僕に?」

「父さんの会社のスタッフで十分なのに」

「母さんも心配だ」

「確かに顔も見せず、電話一本かけなかった」

「でも、僕は後ろを振り返りたくなかった」

「甘えが出ると思って」


そんなことを思っていると、スマホにメッセージが入った。

実家の運転手の今西達夫だった。

警察庁の刑事今西圭子の実兄で、華音が子供の頃は武術の練習相手でもあった。

「近鉄奈良駅にてお待ちしております」

華音は、「そこまでするのか?」と驚いたけれど、「ありがとうございます、了解しました」と返信、ため息をつく。


近鉄奈良駅に着いた。

階段を昇るのも気が重い。

「何か面倒な気がする」

しかし、「久々の故郷で不機嫌な顔を見せるのも、穏便ではない」と思い直す。


階段を昇り終えると、懐かしい今西達夫が改札口で満面の笑顔、手を振っている。

華音はその笑顔に負けて笑う。

「全く・・・達夫さんの笑顔には・・・昔からかなわない」

改札口を出る時には、華音の表情も明るい。

「達夫さん、ありがとう、わざわざ」

今西達夫は笑顔のまま。

「若が寄り道しないように、との御大の気持ちですよ」

華音は、苦笑。

「そうだね、つい阿修羅を見に行くかも」

「それか、四月堂の十一面観音か」

今西達夫は慌てた。

「いけません、若!すぐにお車に」

華音は静かに頷く。

「うん、我がままは言わない」

「達夫さんの顔見たら気が変わった」

今西達夫は笑顔。

「ありがとうございます」


迎えの車に乗り込み、華音は運転手の今西達夫に質問。

「母さんはともかく、みんなは元気?」

今西達夫は、朗らかな声。

「はい、みんな、若をお待ちしております」

「奥様も、若を見れば、元気になりますって」

華音は話題を変えた。

「ところで、ホテルの調査とは?」

今西達夫の声が低くなった。

「御大から、若に直接あります」

華音は今西達夫の言葉に裏があると察した。

「何かあるのかな」

今西達夫は、さらに低い声。

「柳生の関西事務所が既に動いています」

「それ以上は、御大からお聞き願います」

華音は、顔を引き締めている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ