不機嫌な華音に、父からの電話
華音と柳生隆は、ぼったくりバーを出て、柳生事務所の面々が待機するホテルの部屋に向かう。
華音の顔は、あまり浮かない。
柳生隆は、華音の心を察している。
「あそこのバーだけをつぶしても・・・か?」
華音の目はあちこちの店に飛ぶ。
「この歌舞伎町だけだって、似たような悪徳バーはいくらもある」
「あの闇金男を追求すれば、ある程度はわかる・・・かもだけど」
柳生隆は、苦笑い。
「中途半端と言えば、そうなるけど・・・」
「やりきれないよ・・・他にも事件は限りなくあるし」
「事務所に帰れば、依頼の山」
華音も頷く。
「それは・・・そうらしいね」
柳生隆も苦しそうな顔。
「言い方も嫌いかもしれない」
「これが大人の世界の苦い現実」
2人は、そんな話をしながら、柳生事務所が待機するホテルの部屋に入った。
柳生隆が報告。
「ただいま、戻りました」
華音も軽く頭を下げた。
柳生事務所長 柳生清は笑顔。
「うん、全部見ていた、お疲れさん」
「あれで十分さ。後は地元の警察が本来やるべきこと」
今西圭子は、華音の不機嫌顔に気がつく。
「暴れ足りなかった?」
「でもさ・・・本気出せないでしょ?」
「そのレベルの相手ではないし」
華音は、それには頷く。
「わかってはいるんだけどさ」
そして、また不機嫌顔。
「歌舞伎町がドロドロ過ぎて」
「そういう町とは知っていたけれど、直に入ると・・・ね・・・」
柳生清は苦笑い。
「華音君の久しぶりの仕事と思ったけれど・・・軽すぎて物足りないかな」
「でも、依頼内容は完璧に果たしている」
「それ以上は、仕事としてはやり過ぎになるのさ」
華音もつられて苦笑い。
「過ぎたるは、なお、及ばざるが如し・・・家康様ですか」
そんな話をしていると、華音のスマホが鳴った。
華音はスマホを見て、「父さん?」と、驚いた顔。
そのまま、会話になる。
華音
「どうしたの?いきなり・・・」
華音の父
「ああ、今日は柳生の仕事か?」
華音
「ああ、うん」
華音の父
「ところでな、実家の仕事でな、お前に来てもらいたい」
「詳しい内容は、今はは言えないが」
華音
「わかった、ところで母さんは?」
華音の父
「あまり、良くない、それもある」
その会話を聞いていた柳生清は、厳しい顔。
「日本の政財界に計り知れないほどの影響力を持つ三田コンツェルンの総帥 三田雄嶺御大」
「あのプライドの高い御大が、華音君の力を必要とするほどの・・・」
柳生事務所全員に緊張感が走る中、ホテルの部屋に、柳生霧冬が入って来た。
柳生霧冬は苦笑い。
「雄嶺は、華音の顔を見たくなっただけだよ」
「奥様の希望もあるかもしれない」
「華音は、東京に来て・・・3年か・・・何しろ、一度も奈良に帰っていないから」
「仕事は・・・買収するホテルの調査らしい」
しかし、父三田雄嶺との会話を続ける華音は、少しずつ嫌そうな顔になっている。




