柳生隆vsチンピラ
華音は、倒れ込んで動けない巨漢元レスラーに言葉をかける。
「軽い脳震盪だよ、その角度で転ばした」
「回復まで、約1時間」
そこまで言い終えて、柳生隆の顔を見る。
「もう一人のすばしこいおっさんは隆さんにまかせる」
「僕は、刃物相手には加減が出来ない」
柳生隆はニヤッと笑い立ちあがる。
「それはそうだね、そうするかな」
しかし、そんなことを言われた頬に傷のある男は、その顔を厳しくする。
「てめえら、何者だ?」
「可愛い子分を酷い目にあわせやがって・・・」
「ただじゃ、おかねえ」
そして、そのスーツの懐から短刀をスッと抜き、柳生隆に向ける。
柳生隆は、その動きに対応。
空手の構えを取る。
頬に傷のある男は、せせら笑う。
「そんな・・・得物もなく?」
「どうなっても知らねえぞ」
柳生隆は、全く動じない。
「おい!来るのか来ないのか!」
「さっさとかかって来い!このチンピラ野郎!」
次の瞬間、頬に傷のある男は床を蹴り、短刀を振り上げ、柳生隆に突進。
・・・しかし、勝負は一瞬だった。
柳生隆は半身になり、その突進をかわし、頬に傷のある男の喉元に左足で蹴り。
「グェ!」
頬に傷のある男は、そのまま床に頭を突っ込み、倒れ込む。
そして、口から泡を吹いている。
華音はそれを見て一言。
「うん、隆さんで正解」
柳生隆は頷く。
「ああ、華音だったら、蹴りが強すぎて後頭部を床に打ち付ける・・・」
「・・・死んじゃうかもな」
華音は、震えが止まらない赤いドレスの中年女性に声をかけた。
「他に怖い人はいないの?」
中年女性は、途切れ途切れに、わななく。
「あんたたち・・・こんなことして・・・」
柳生隆は冷ややかな顔。
「全て、正当防衛」
「後は、隣の部屋で電話をしている男の闇金情報か?」
中年女性は、ますます震えた。
「どうして、そんなことを?」
柳生隆は、その問いには反応しない。
スタスタと歩いて隣の部屋を開け、派手なヤクザスーツの男のネクタイを掴んで、無理やり引っ張り出す。
華音はそれと同時に、隣の部屋の金庫らしいものを発見。
「金庫明けも大好きさ」とつぶやきながら、ダイヤルをくるくる回し、開けてしまう。
「すごいや・・・万札の束・・・が10?20?」
「申告しているのかな・・・税務署に・・・」
柳生隆は華音の言葉にプッと吹き、「まさか・・・親分の元に行くんだろ?おい!闇金」と言いながら、派手なヤクザスーツの男からスマホを奪い取る。
華音が「隆さんのほうが強引」と驚いていると、店のドアが開き、スーツ姿の男と警察官が数人人、入って来た。
スーツ姿の男は警察手帳を提示、柳生隆と華音に一礼。
「警視庁新宿警察書の刑事、富田です、本当にありがとうございました」
柳生隆も、軽く頭を下げる。
「ここの店だけではないと思うけれど、闇金の男を絞り上げれば、ある程度の情報は取れるはずと思います、それは警察でお願いします」
富田刑事は再び柳生隆と華音に一礼。
「それは当然です、対応いたします」と述べ、警察官に命じ、この店のママらしき中年女性、ホステス2人、巨漢男、頬に傷のある男、闇金男全員に手錠をかけ、店の外に連行させる。




