華音と柳生隆は歌舞伎町のぼったくりバーに入る。
午後5時、予定通りに柳生事務所は新宿歌舞伎町に到着した。
華音と柳生隆は、サラリーマン風のスーツ姿。
ただし、華音は18歳、いかにも初々しい。
柳生隆は華音を見て、プッと吹く。
「実に新米サラリーマンだね」
華音も笑う。
「世間を知らない、そんな感じが出るかなと思ってね」
柳生隆は頷く。
「騙しやすようなカモに?名案かも」
しかし、不安もあるようだ。
「本気で喧嘩しないように、相手を殺さない程度にね」
華音は苦笑い。
「本気で怖がらせないと・・・それくらいはいいかな」
柳生隆が話に割って入った。
「ぼったくりバーの外で周囲を監視するのは橋本スタッフと井岡スタッフ」
「我々は、至近のホテルの広めの部屋を借りたから、そこで隆と華音君のスーツに付けたカメラからの情報を監視」
全員が頷き、「作戦」が始まった。
柳生隆と華音は、内閣から情報が入った「ぼったくりバー」をすぐに確認。
しかし、すぐには入らず、いわゆる「ポン引き」を探して、ウロウロとする。
柳生隆
「まだ夕方の5時、どんなものかな」
華音
「でも、あそこにも声をかけている人がいるし」
「若い人だね・・・でも、いかにもその筋」
柳生隆
「下っ端の仕事かな」
「でも、年齢はあまり関係ないよ、極道は実力世界でもある」
そんなウロウロする2人に、ついに声がかかった。
「お兄さんたち、遊んで行かない?」
「可愛い女の子付きで、1時間3,000円ポッキリ」
声をかけて来たのは、やつれたスーツの初老の男。
柳生隆は、すこしためらうような顔。
「ほんと?ぼったくりバーでないの?」
華音は、やつれたスーツの初老の男をじっと観察。
「小指が無い・・・やはり極道」
「いろいろな・・・危ないこともあった人か」
やつれたスーツの初老の男はニヤッと笑う。
「そんなことはありません、私を信じて」
「絶対に1時間3,000円ポッキリ」
「女の子も可愛いよ、さあさあ」
柳生隆は華音に目配せ。
華音が頷いたのを見て、含み笑い。
「仕方ない、入るとするよ、この若者の社会勉強として」
やつれたスーツの初老の男はペコペコと頭を下げる。
「ありがとうございます、それではご案内いたします」
「このビルの5階になります」
柳生隆と華音は、実に狭いエレベーターに案内され、5階に到着。
やつれたスーツの初老の男が「こちらになります」と、バーらしき店のドアを開け、
「お二人様、ご来店です」と2人を入れる。
すぐに中年の女性の声がした。
「はぁい、いらっしゃいませ、さあさあ、御席にご案内します」
その声で、やつれたスーツの初老の男は姿を消し、柳生隆と華音は赤いドレスを着た中年の女性に案内され、店の中に入った。
案内された席には、確かに「可愛い女性」が2人座っている。
柳生隆は、ニヤッと笑い、席に着く。
華音は店内をサッと見渡し、席に着く。
可愛い女性は、二人とも20代前半、二人ともピンクの胸が大きく開いたドレスを着て、それぞれミキとユミと名乗った。
柳生隆はミキとユミにウィンク。
「この若者の社会勉強としてね」
ミキは華音をじっと見る。
「へえ・・・いくつ?・・・すごく若く見えるね・・・可愛い!」
ユミは大きめの胸を華音の腕にピッタリとつける。
「そうねえ・・・いろいろと社会勉強を・・・手取り足取り」
華音は、面倒そうな顔。
「押し付けすぎ・・・それより、ここはバーでしょ?」
「メニューは無いの?」
その華音にミキ。
「お任せでいい?社会勉強でしょ?」
華音が柳生隆を見る。
柳生隆は笑う。
「うん、任せるよ、一杯飲んだらすぐに出るかな」
「次の宴会が6時からでね」
少しして、「お任せ」が運ばれて来た。
ハイボールが二つと、ピーナッツだった。
まず、柳生隆がハイボールを口に含む。
「これ・・・コンビニでもスーパーでも打っているハイボールだよね」
「ピーナッツも、どこでも売っている廉価品」
華音は、少し離れた席にいる中年の女性の顔色が変わったのを見逃さない。




