華音とテニス大会(6)
少し気が重い華音は、森祐子と一緒にお屋敷に帰った。
すでに情報が伝わっていたらしく、シルビア、春香、エレーナに加えて、かつてはテニス部だった雨宮瞳もお屋敷で待っていた。
シルビア
「華音、大変だったね、酷い目にあって」
春香
「祐子さんとしては、懐かしさのあまりなんやけど、目立ち過ぎたかな」
エレーナ
「いや、それより都大会が華音君の人権を無視した上に、暴言を吐くなんて、指導者としては失格、人間としても問題がある」
瞳は華音の表情が冴えないことが、何より気がかり。
「華音君は、悪いことしていないんだから、自分を責める必要はないよ」
と、手を握っている。
今西圭子も、屋敷に戻って来た。
「明美も、もうすぐ来る」
「今は、文科省の藤村君と一緒に事情聴取している」
「吉村学園長も同席しているみたい」
シルビア
「吉村学園長は自分の学園の生徒が恥をかかされたんだから、抗議すると思うけど、明美さんは何?」
今西圭子
「都大会だけでなくて、他にも暴言とか、企業に対する接待強要とか、そんな疑惑があったみたい」
「被害にあったテニス選手とか企業から警視庁に通報があったとか」
春香
「つまり、華音に暴言吐いたら、自分にブーメランやな」
「それも特大や」
エレーナも華音の手を握る。
「華音ちゃん、元気出してよ、みんなでそんな悪党を退治しようよ」
そんな話が続く中、吉村学園長が文部科学省の藤村を伴って、華音のお屋敷に到着、リビングに入って来た。
吉村学園長は、いつになく厳しい顔。
「学園としても善意の華音君に、理由のない暴言を吐かれたので、まずは口頭でテニス都大会本部に抗議しました」
「明日、学園の公式文書にて、再度厳しい抗議を行って、謝罪を求めます」
文科省の藤村も厳しい顔。
「文科省としては、この事案についてはマスコミ報道をします」
「華音君の実名はあげないけれど、テニス都大会本部は謝罪会見をするようにと、指示を出しました」
「それと、テニス大会都本部が、学園に出向いて、華音君とテニス部への直接謝罪」
「すでに、各マスコミも騒いでいるので、知らんぷりは出来ません」
「他にも選手や参加高校への暴言や恫喝、企業へのゆすりたかりも情報として入って来ているので」
「それについては、松田明美さんと警視庁、国税も動きそうです」
文科省藤村は、そこまで状況説明を行い、華音に言葉をかける。
「華音君は、下を向く必要はないよ」
「確かに、あれほどの人の前で、人格攻撃をされたのだからショックはあると思うけれど」
「理由のない暴言に気を落とす必要はない」
「華音君は、あくまでも善意でテニス部に協力しただけなので」
華音は、藤村に頭を下げた。
「ありがとうございます、本当にいろいろ動いてくれて」
吉村学園長が、藤村に声をかけた。
「ねえ、藤村君、あのことも」
藤村は、少し笑い、華音に再び声をかけた。
「華音君、全国大会を観戦する場合は、僕と一緒に行こう」
「それとテニス以外でも、必要があれば一緒で」
華音が驚いていると、藤村は言葉を続けた。
「今までも何度もテロを防いでくれて、人命を救ってくれて」
「こんな優秀な華音君を理由のないトラブルに巻き込みたくない」
「だから、政府としても、護りたい」
その言葉で、華音はようやく顔を上にあげている。




