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華音とテニス大会(4)

「そういうことではないんだ」

都大会運営本部の鈴木の声に、明らかに怒気がこもった。

「それ以前に、何故、テニス部に入らない?」

「それを聞いているんだ」

「それほどの実力があるのに、練習補助?」

「君は、テニスの都大会を馬鹿にしているのか?」


この怒気あふれる声には、温厚な華音も苦慮の様子。

「部活動を選ぶのは、生徒の自由ではないのですか?」

「決してテニスの都大会を馬鹿にしているとか、そこまで言われるような」


不穏な雰囲気となる中、オリンピック選手の森祐子が華音の隣に立った。

「鈴木委員長、どう聞いても、華音君が正解です」

「華音君が、どこの部活を選ぼうと、それは華音君の自由」

「それはテニスの実力の有無とは関係ないはず」

「テニス部に入る意思がない華音君をテニス部に無理やり入れて、試合をさせるほうが、よほど問題なのでは?」

「あなたは華音君の人権を認めないの?」

「華音君は、あなたの召使でも奴隷でもないの」


しかし都大会運営本部の鈴木は、苦々しい顔を替えない。

「森選手、我々には都大会の発展と、有望選手の発掘と指導、育成の目的もあるんです」

「それによって、健全な青少年の育成に寄与するんです」

「それを何の理由か知らないが、オリンピック選手に認められるほどの実力を持ちながら、テニス部に入らない、選手として出場しないにも関わらず、練習補助なんて、高校生として全く不健全極まるではないですか」


この都大会運営本部の鈴木の執拗な反論には、周囲も騒ぎ始めた。


「それは言い過ぎ」

「華音君がテニス部に入らないのが、高校生として不健全って・・・」

「とうとう人格攻撃だよ」

「テニス部の都大会運営本部って、そこまで偉いの?」

「スポンサー関連かなあ、例の」

「うん、有望選手が、そのメーカーのラケットとかシューズを使うと、宣伝になるからね」

「運営本部には広告料として、献金が入るらしいよ」

「そうすると委員長の鈴木さんにもかな」

「お金と接待とか?」

「すごい実力がある華音君が出れば、もっと儲かったのにってことかな」

「そうなると私利私欲って感じだよね」

・・・・・・


膠着状態を続ける華音と、都大会運営本部の鈴木の前に、今度はスーツを着込んだ若い男性が立った。

そして、鈴木に名刺を手渡す。

「文部科学省高等教育企画課の藤村と申します」

「今までの鈴木様と華音君、森祐子さんのお話を全て伺っておりました」


都大会運営本部の鈴木は、いきなりの監督官庁の登場に、驚く。

「あ・・・それは、わざわざ」

「お騒がせして、申し訳ありません」

「たいしたトラブルではありません」

「少々、不健全な学生を見かけましたので、注意と指導を施していたところです」


しかし、その言葉を聞いた文部科学省藤村は、厳しい顔。

「全て録画、録音しています」

「これについては、私の判断としては、貴方の発言は華音君の自由を無視したもの、部活動を選ぶ権利は、あくまでも華音君にあります」

「テニスを選ばないからと言って、不当に非難される理由も華音君にはない」

「少なくとも貴方に、華音君を不健全と罵倒するなどの権限はありません」

「ただ、あくまでも私の判断で、当然、上司にも相談することになりますが」


頭を抱えるばかりの華音に、森祐子が声をかけた。

「いいよ、こんな都大会の鈴木さんなんて」

「私、スポンサーのメーカーさんに聞いて見る」

「いろいろ、悪い噂がありそうだから」

「さっさと、祝勝会に行こうよ」


その言葉と同時に、都大会運営本部の鈴木の顔が蒼くなっている。


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