華音の住む洋館にて(1)
華音が立花管理人に説明をする。
「沢田さんと、雨宮さんが、僕の引っ越し荷物の片づけの整理をしてくれるということなので」
沢田文美と雨宮瞳は、神妙な様子で、立花管理人を見ている。
立花管理人は、驚いたような顔。
「いえいえ・・・滅相もございません」
「そのようなことを、お客様にしていただくわけにはまいりません」
「全て、私にお命じになってください」
そして、また深く頭を下げる。
「華音様のお屋敷にて、粗茶でもいかがでしょうか」
華音は、沢田文美と雨宮瞳に声をかける。
「取りあえず、立花さんの言う通り、ここで話をしていても仕方がないので」
「整理もしっかり出来ていませんが」
「僕の住む家まで、いらしてください」
沢田文美と雨宮瞳は、まだ驚いているけれど、
沢田文美
「まあ・・・それなら・・・はい・・・」
雨宮瞳
「わかりました、お邪魔いたします」
と、ここでは素直に応える以外はない。
木立、それもかなりな高木の木立の中にある石畳の道を通って、立花、華音、沢田文美、雨宮瞳は、進んだ。
「こちらでございます」
立花管理人が立ち止まってしめした屋敷は、華音の言う通りの「洋館」。
これを見ても、驚くばかり。
沢田文美
「すっごい・・・白亜の洋館?豪華だーー」
雨宮瞳
「大きい!何部屋あるの?」
華音はスンナリと答えた。
「えーっと、8部屋、じいさんの家系は代々貿易商をしていたから、洋館も欲しかったらしいんです」
立花管理人が洋館の重々しい鉄扉を開けた。
沢田文美
「う・・・フカフカの赤じゅうたん」
「白い壁に、高そうな絵画と彫刻」
雨宮瞳
「廊下の奥は・・・あれは西洋の鎧兜?」
沢田文美
「廊下のランプがレトロ・・・ロマンチックだ」
雨宮瞳
「磨き込まれてる・・・はぁ・・・足が震えてきた」
立花管理人が、ドアを開けると、人が30人から40人は入りそうな大広間。
床は磨き抜かれた板張り、壁も大理石、天井には絢爛たる大シャンデリア。
華音が口を開いた。
「ダンスルームとしても使ったみたい」
「今は使わないけれど」
沢田文美は天井を見て、また驚いた。
「へえ・・・天使画がすごいなあ・・・」
「ミカエル、ガブリエル、ラファェルはわかる」
「彩色もきれい」
雨宮瞳は窓ガラスにも注目。
「ステンドグラスだあ・・・それも、いろんな絵が書いてある」
「ゆっくり見たいなあ」
立花管理人が、驚くばかりの二人に声をかけた。
「粗茶はこの部屋の隣、別室にて、ご案内いたします」
この時点で、沢田文美と雨宮瞳は「引っ越し荷物の片づけお手伝い」どころではなくなっている。




