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文化祭終了後のレセプションにて

「万葉集 笠女郎の恋」のイベントや、文化祭が全て終了し、華音は平服に着替えた。

そして、そのまま帰宅しようとするけれど、なかなか難しいようだ。

シルビア

「勝手に帰らない!」

春香

「私たちは、打ち上げがあるの、ほら、さっさと!」

華音は、二人の従姉に引きずられて、学園のレセプションホールに入った。


そのレセプションホールには、既に古代史研究会と文学研究会の面々、両方の学園長、文部科学省の藤村、文化庁の今西圭子、それからエレーナ、藤原美里、雨宮瞳もすでに入っており、立食パーティーの形式、テーブルの上には軽食や飲み物が置かれている。


華音は河合学園長から、華音はスピーチを求められた。

「華音君、本当にありがとう」

「面白い企画を考えてくれて、私たちも生徒たちも」

「そして、多くの聴衆に感激を与えることが出来ました」

「是非、ここで、一言をお願いしたい」


華音は、レセプションホール全体からの拍手も大きい。

遠慮が出来る状態ではなかった。

その顔を赤らめて、マイクを持ち、話し出す。


「今回の笠女郎の恋の企画」

「実にレアでコアな企画でしたけれど、皆さま、賛同していただいて」

「熱心にお互いが努力して、素晴らしい発表になったと思います」

「何度も申しましたが1300年前の女性の心の底からの思い」

「肉声と言っても間違いではない、それを感じられたことが、とても面白く、うれしかった」


レセプションホールに集まった面々が頷く中、華音は話を続ける。


「普段は、和歌とか万葉集とか、知らない人まで、あれほど熱心に聴いてもらって、まだまだ、和歌も万葉集も、今の人の心を打つのかなと」

「それと、笠女郎を選んだ理由は、どの歌も人を惹きつける魅力に満ちているということ」

「特に、苦しいとか、悲哀の歌にも、甘美な魅力があふれています」

「例えば、ショパンの曲が、どの曲を聴いても、聴く人を甘美な世界に導くように」

「比喩の表現も実に巧み、彼女の比喩表現は、描かれた景色を鮮やかに浮かび上がらせます」

「今になって思うのですが、確かに家持への恋は実らなかった」

「しかし、そのことによって、彼女の恋の歌は、永遠の命を持って、まだ生きていて今を生きる私たちの心を濡らす」

「その意味で、言葉の粋である歌は、実に強い霊を持つのかなと、改めて感動を覚えたのです」


華音は、ここまで語り、「やや長すぎる」と思ったようだ。

少し慌てた口調。

「ごめんなさい、話が長くなって」

「皆様、ご協力、本当にありがとうございました」

と、深くお辞儀、レセプションホールに集まった全員から大きな拍手を受けている。


スピーチを終えた華音を、また両方の女子生徒たちが取り囲む。

「ありがとう!華音君」

「ほんと、ここまで面白いとは思わなかった」

「また、やりたいよね、合同で」

「こんどは誰にする?」

「また、華音君の御屋敷で!」

「万葉ツアーも行きたいなあ、ゆっくりのんびりと、山の辺の道を歩きたい」

「うん、今回のお礼の旅!」

・・・・・


とにかく、ものすごいパワーで華音に迫る女子生徒たちを見て、エレーナ、藤原美里、雨宮瞳は複雑。


エレーナ

「今日は仕方ないね、付け入るスキがない」

藤原美里。

「うん、無理。別の機会で勝負する」

雨宮瞳は、心が揺れ始めた。

「テニス部を辞めて、華音君と同じ文学研究会に移るかな、そうしないと、ますます遠くなる、そのほうが辛い」


さて、女子生徒たちに囲まれる華音は、かなり長い時間、解放されることはなかった。

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