合同イベント「万葉集 笠女郎の恋」(6)
長谷川直美が司会。
「笠女郎は、家持への思いが通じないことを、より強く悟り、それでも燃え残る思いを六首、詠みます」
春香が詠唱。
「夕されば 物思ひ増さる 見し人の 言問うふ姿 面影にして」
花井芳香が現代語訳。
「夕暮れになると、物思いが、多くなります」
「お逢いした人が語り掛けて来る面影が浮かんで来て」
沢口京子が解説。
「夕暮れの中、家持様は訪れてくれるだろうか、今日もまた来ないのだろうか」
「あの日、契りを結んだ貴方の、声を掛けてくる面影だけが浮かんで来て、物思いに沈むのです」
燃え残る思いの二首目を、志田真由美が詠唱。
「思ひにし 死にするものに あらませば 千度そ我は 死に返らまし」
深沢知花が現代語訳。
「貴方への思いで死ぬのなら、私は千回も繰り返し、死ぬことになるでしょう」
佐藤美紀が解説。
「まだ燃え残る思いは強いのです。その想いで千回も死んでは生き返り、生き返っては死ぬのです」
「こんな強い思いがあるのでしょうか」
燃え残る思いの三首目は、シルビアが詠唱。
「剣大刀 身に取り添ふと 夢に見つ 何の兆そも 君に逢はむため」
花井芳香が現代語訳。
「刀を私の身体に添える夢を見ました。これは何の前兆なのでしょうか」
「きっと貴方に逢えるという兆しなのです」
春香が解説。
「古代、夢は霊魂の働きによるものと考えられていて、剣大刀は男性の象徴」
「つまり家持が夢の中で笠女郎に寄り添う夢、共寝をしてくれる夢を見た」
「だからその夢は現実になる兆しなのですと、逢瀬を強く願うのです」
「しかし、その夢にしか口実を作れないほどに、追い詰められていたとも」
「必死に夢にすがりつくしかないほど、疎遠になっていたのかもしれません」
「こんなに何度も歌を詠んで贈っても、再びの逢瀬は叶わないのですから」
続いて、燃え残る思いの四首目は、鈴村律が詠唱。
「天地の 神の理 なくはこそ 我が思ふ君に 逢はず死にせめ」
現代語訳を佐藤美紀。
「天の神、地の神の正しいご判断が存在しないのなら、私の愛する君に、このまま逢わないで死んでしまうのでしょうけれど」
長谷川直美が解説。
「やや、難しい歌ですが、結局、前の歌の夢の効果は無かった」
「それだから天地の神に頼る、神は間違った判断をしないのだから、貴方には絶対に逢えることが出来ると、絶望の淵にいる自分を必死に抑えて安心させようとするのです」
「そして、私は今、こんな状態であると、家持に贈るのです」
燃え残る思いの五首目の詠唱は、深沢知花。
「我も思ふ 人もな忘れ 浦吹く風の 止む時なかれ」
志田真由美が現代語訳。
「私はあなたのことを思っています」
「ですから、貴方も私のことを、海に吹く風の止む時がないように、これからずっと愛し続けなければなりません」
シルビアが解説。
「笠女郎にとって家持は相思相愛のはず。しかし家持が訪れないから、自信が無い、身分違いの家持に対して効果が無いとわかっていても、永遠に私を愛しなさいと命令しています」
「もはや必死の叫びのようです」
燃え残る思いの第六首目の詠唱は、長谷川直美。
「皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも」
現代語訳をシルビア。
「全ての人に就寝の時を告げる鐘が打たれているけれど、貴方を思う私は眠ることなど、とても無理です」
解説は佐藤美紀。
「おそらく夜の10時から10時半ぐらいの時間」
「当時の官僚は出勤が早いので、夜は早寝。つまり家持も早寝、あるいは別の女の所でしょうか」
「訪れが期待出来ないからとしても、思慕の念が消えずに眠ることが出来ないのです」
この歌の時点で、ステージに映されていた平城京が消えた。
そして、明日香村だけの風景になっている。




