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三田華音君のお昼はお弁当

一年A組の午前中の授業は、通常通り、全く静穏のまま、終了した。

そして、これも当然のことで、昼食の時間となる。


萩原担任から、「当面のお世話」を頼まれた雨宮瞳が、華音に声をかけた。

「ねえ、華音君、お昼は持ってきたの?」

雨宮瞳としては、まず華音がお昼を持って来ていなかったら、学食レストラン、あるいは、校内販売のパン屋などに案内しようと思っている。


そして、その雨宮瞳の声かけに、一緒に反応する生徒も多い。

男子生徒も女子生徒も、次々に声をかける。


「華音君、一緒に学食に行こう」

「学食のカツカレーは絶品だよ、男の味って感じ」

「鉄板焼きナポリタンも美味しい」

「パン屋さんでもいいよ、美味しいパンあるよ」

「フレンチトーストも美味しい、自家製のヨーグルトもある」

最初はメニュー中心のお誘いだった。


「華音君、担任が雨宮さんにお世話お願いしたけれど、私たちにも頼ってね」

「雨宮さん、担任に言われたからって華音君を独占しないで」

よくわからない反応まで出てきて、収まりがつかない。


それでも、少し困った顔をしていた華音が、ようやく恥ずかしそうに口を開いた。


「あの・・・いろいろ、誘ってもらって、ごめんなさい」

「実は、家からお弁当を持ってきたので、それを食べることにします」

「本当に、学食レストランとか、パン屋さんにも興味があるのですが」


雨宮瞳は、華音の答えに、少しホッとした。

実は、雨宮瞳も、自宅から持ってきたお弁当だったから。

そして、少々がっかりしたようなクラスメイトに、

「はい、そういうことだから、今日のところは」

と声をかける。


「うーん・・・仕方ない」

「今日は初日だしね」

「そうか、お弁当か・・・」

「一緒にレストランもいいなあって思っていたけれど」


そんな話をしている中、他にもお弁当を持ってきた生徒たちが集まって来た。

「ねえ、雨宮さんと華音君、せっかくだから机を寄せて、お弁当タイムにしない?」

「うん、その方が楽しいし、華音君と話したいし」

「そうだよね、もっと知りたいよね、奈良のこととか」

・・・・・

ここでも、そうするしか収拾がつかない。


そして、華音を囲んで、「お弁当タイム」となった。


雨宮瞳は、この時点で、全く信じられない。

「どうして、こんなにまとまるの?」

「勉強中心とか、部活中心の人ばっかりで、他人のことは我関せずの人ばかりなのに」

「華音君、人をひきつけるのかなあ・・・うーん・・・」



ただ、いつまでも「信じられない」だけでは、昼食も何もない。


それでも、雨宮瞳が「食べようか」と声をかけ、華音を囲んでお弁当を食べ始めることになる。


さて、華音がその机の上に置いたのは、四角い箱と赤ワイン色の水筒。

そして、華音がその箱を開けると、緑の葉で全て包んである。

かすかに甘酸っぱい香りが漂ってくる。


華音は、注目するクラスメイトに少し恥ずかしそうな顔。

「あの・・・鮭と鯖の柿の葉寿司です」

「奈良の・・・もともとは吉野の郷土料理です」


華音は、次にワインレッドの水筒を開けた。


「水筒の中は、熱いほうじ茶です」

確かに、ほうじ茶独特の、ホッコリとする香りが漂っている。

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